モナコF1レーシングチームが新規参入に名乗り「200億円障壁」免除の可能性を受け
シャルル・ルクレールの母国モナコ公国を拠点とするレーシングチームが新たにFIA-F1世界選手権に参戦する可能性が浮上した。11グリッド目に付く事を目指しているのはモナコF1レーシングチーム(Monaco F1 Racing Team)だ。
これはプロのレーシングドライバーをキャリア初期からサポートする事業を営むモナコ・インクリース・マネジメント社(Monaco Increase Management)によるプロジェクトで、同社はフォーミュラEに参戦中の元F1ドライバー、パスカル・ウェーレインや、昨季インディカーを席巻したルーキー、アレックス・パロウらを支援している。
モナコ・インクリース・マネジメントはF1世界選手権に参戦すべく、先月27日に亡くなったエイドリアン・カンポス設立のカンポス・レーシングと提携して2019年頃よりリバティメディアを始めとするF1側と積極的な議論を重ねてきた。
チームは当初、2021年の発効が予定されていた新たなテクニカル・レギュレーションに合わせて準備を進め体制を整えてきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響で導入は2022年に後ろ倒しとなり、追い打ちをかけるように新たな参入障壁が設けられる事となった。
2021年~2025年を対象とした新たなコンコルド協定には、F1への新規参戦チームに対して2億ドル、日本円にして約210億円の支払いを義務付ける規定が設けられた。これは実質的にF1のエントリー権が最低2億ドルである事を意味するに等しく、既存チームがこの金額よりも安く売却される事を防ぐ効果がある。
ただし新規参入を目指すチームにとっては疑いなき障壁だ。F1チームの場合、年間経費が180億円として、分配金によるリターンで140億円、スポンサーシップで40億円を稼いだとしてもトントンといった具合であり、これに加えて立ち上げにかかる費用と200億円もの資金が必要となれば計画の白紙撤回も止むなしと言える。実際、先述のカンポスやパンテーラといった候補者は再検討を強いられた。
ところがこの程、この”200億円障壁”が一定の条件のもとで免除される可能性が明らかとなった。フェラーリのチーム代表を退いた後、ランボルギーニで最高経営責任者を務め、チェイス・ケアリーの後任として今年からF1のトップに就いたステファノ・ドメニカリが直々にその可能性に言及したのだ。
これを受けて2月8日(月)にモナコ・インクリース・マネジメントの創業者兼CEOのサルヴァトーレ・ガンドルフォは「新規チームへの2億ドルのエントリーフィーを免除することを示唆したステファノの発言は、F1が正しい方向への一歩を踏み出した証だと考えている。ステファノとFIAのオープンな姿勢を評価したい。我々は参入申請を仕上げるための準備を整えている」との談話を発表した。
ガンドルフォCEOはイタリア出身のビジネスマンで、カンポス・レーシングの共同オーナーでもある。彼の部下にはスーパーアグリF1チームのマネージングディレクターを務めていたダニエル・オーデットや、F3マシンや耐久レーシングカーの製造を手掛けるアルバテックの設立者であるジョルジオ・スティラーノらが控えている。
変革期を迎えるF1は今季より1億4500万ドル(約152億円)の予算上限を導入する。参入を検討中のチームにとっては200億円障壁の免除と合わせて追い風だが、パンデミック収束の見通しは立っておらず、それ故に当面の間は分配金やスポンサーマネーも縮小状態が続くであろう事から、モナコF1レーシングチームを含めて数年内に新チームが誕生する可能性は決して高くはないものと考えられる。
そのため、2025年か2026年に予定されている次世代レギュレーションが導入されるタイミングでの参戦が現実的なシナリオと言って良いだろう。