メルセデスのジョージ・ラッセル、2020年F1サクヒールGP決勝レース後
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胸がえぐられる思いだ…一度ならず二度も勝利のチャンスを奪われたジョージ・ラッセルは勝者への賛辞を忘れない

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一体何というレースだろう。シンデレラボーイの誕生は約束されたかに思われた。だが、チーム側のミスでタイヤを履き違えた事で不要なピットストップを強いられ、そんな逆境を自らの腕でカバーして再び勝利を手中に捉えかけたものの、目の前に広がったのは誰もが心を痛めるような衝撃のシーンだったのだ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したルイス・ハミルトンに代わり、F1第16戦サクヒールGPでメルセデスW11のステアリングを握ったジョージ・ラッセルは、予選で2番グリッドを手にすると、決勝ではスタート直後にチームメイトでポールシッターのバルテリ・ボッタスをオーバーテイク。ファンの度肝を抜いた。

その後はレギュラー契約を持つ後続の先輩ドライバーに対して概ね2秒程度のギャップを維持して近寄らせず、また驚くべき事に一切ミスのないベテランのような走りで隊列を率いて、勝利に向かって着実に前進していた。

だが63周目、最終コーナーで1台のマシンがバリアに激突。セーフティカーが導入された事で、流れが一変した。事故を起こしたのは皮肉にも、ラッセルの代わりにウィリアムズでステアリングを握ったジャック・エイトケンだった。

特にタイヤを交換しなければならない差し迫った事情はなかったが、ポジションを落とさずに済む状況であった事から、メルセデスのピットウォールはラッセルはピットインを指示。この際、無線の技術的トラブルが発生し、チームは誤ってボッタス用のフロントタイヤを取り付けてしまった

これは競技規約違反となるため、1周後に再びピットイン。コツコツと積み上げてきた大量ギャップは消え去り、ラッセルは5番手にまで後退した。

それでもラッセルは決して諦めたりはせず、セルジオ・ペレスを先頭として69周目にリスタートを迎えると、ボッタス、ランス・ストロール、そしてエステバン・オコンをあっという間に料理してペレスを強襲。しかしながら残り10周というところでスローパンクチャーに見舞われ、再びピットインを余儀なくされてしまい15番手にまで転落。結局10位でフィニッシュした。

チェッカーを受けてピットへと戻るラッセルはクルマの中で「何って言って良いのか分からないよ。2度も(優勝のチャンスを)奪われてしまったんだから…。正直言って、完全に打ちのめされたよ…胸をえぐられたような気分だ…」と言葉にならない怒りと悲しみの混ざりあった気持ちをぶつけた。

クルマを降りてなおラッセルは立ち直る事ができず「正直、言葉がないよ。クルマから降りた時は本当に気分が悪かった。これまでにも何度か優勝を奪われたレースはあったけど、今回は2度もだよ? ただただ信じられなかった」と語った。

「持てる全てを出し尽くした。何とか上手くスタートを切って、その後は自信を持ってバルテリとのギャップをコントロールできていた。で、例の全てが台無しになったピットストップだ。あれによって僕らは後退を強いられた。僕はオーバーテイクしていくしかなかった」

仮に”タイヤ履き違え事件”だけで済んでいれば、レースの結末は全く異なるものになっていただろう。ピットストップでの悲劇ドラマを経てなお、ラッセルはペレスを交わして自力で優勝を掴む自信を持っていたのだ。

ラッセルは「それでもなお、セルジオ(ペレス)を捕まえられると考えていた。タイヤ的なアドバンテージがあったし、クルマには速さがあったからね。打ちのめされた気分さ。でも、自分たちが成し遂げた事については心の底から誇りに思っているし、こうしてチャンスを与えてもらった事を嬉しく思っている」と続ける。

「これもレースなんだ。チームスポーツだからね。僕らは全員で戦っているんだ」

「(今回はチーム側の過失だが)ドライバーが台無しにしてしまう事もある。実際僕は今年、ウィリアムズで1度か2度やってるしね。だからこそ僕らはこういう事から学ぶんだ。今回のピットコールは明らかに遅すぎた。その結果、こうしたタイヤのゴタゴタが起きてしまった」

「”楽あれば苦あり”だ。F1で初めてのポイントを獲得できたんだから」

誰より傷つきながらも、若干22歳のイギリス人ドライバーは勝者への賛辞を忘れなかった。

「セルジオによくやったと言いたい。彼はF1という世界で本当に長い間に渡って戦い続けてきた勝利を得るに値する偉大なドライバーだ。彼がチャンスをモノにした事を僕も嬉しく思ってる」

タイヤの不正交換に関してはレース後に審議が行われ、諸事情を汲み取ってドライバー側への処分は行われず、チームへの2万ユーロの罰金という形で決着をみた。

この結果ラッセルは、ファステストラップのボーナスポイントと合わせて計3ポイントを獲得。ドライバー・オブ・ザ・デイに選出されると共に、ドライバーズランキング18位に浮上した。


現地12月7日(日)にバーレーン・インターナショナル・サーキットのアウタートラックで行われた2020年F1第16戦サクヒール・グランプリ決勝レースでは、5番グリッドからスタートしたセルジオ・ペレス(レーシングポイント)が190戦目にして初優勝を飾り、2位にエステバン・オコン(ルノー)、3位表彰台にペレスの僚友ランス・ストロールが滑り込む結果となった。

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