サングラスをかけて笑顔を見せるスクーデリア・フェラーリのセバスチャン・ベッテル、2019年F1アブダビGP
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お世辞ではなくベッテルは来季ドライバー候補の一人、とメルセデス

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メルセデスAMGのトト・ウォルフ代表は、今季末でフェラーリを去るセバスチャン・ベッテルは2021年以降のドライバー候補の1人だと公言しているが、それは決してお世辞といった類のものではないと主張する。

48歳のオーストリア人指揮官は、チームとしての最優先事項はルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスの維持だとする一方で、いずれかがシートを去った場合、ベッテルがシルバーアローの一員となる可能性を改めて認めた。

メルセデスのモータースポーツ責任者を務めるトト・ウォルフ
© Mercedes / メルセデスのモータースポーツ責任者を務めるトト・ウォルフ

4度のF1ワールドチャンピオンが突如としてドライバーマーケットに放り出されたため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりレース中断を強いられ暇を持て余すF1界隈では様々な憶測が飛び交っており、マクラーレンのザク・ブラウンCEOのように引退を予想する者も珍しくはない。

ハミルトンもボッタスも今季末を以てメルセデスとの契約が満了を迎えるため、ベッテルがV6ハイブリッド時代のチャンピオンチームに加わる可能性はゼロではないものの、突飛な事をせずに地に足つけた実直なオペレーションを徹底するあのメルセデスが、世界選手権で合計10度のタイトルを持つ2人の特A級ドライバーを隣り合わせに置くような”リスク”を冒すとは考えにくい。

だがウォルフは3日(水)のカンファレンスの中で「これはリップサービスではない。4度のF1ワールドチャンピオンに対して、すぐに”ノー”だなんて言うべきではない。きちんと検討する必要がある」と語り、ベッテルが候補者リストに記されている事を明かした上で、次のように続けた。

「その一方で、我々には既に素晴らしいラインナップがある。私は2人のドライバーにもジョージ(ラッセル)にも本当に満足している。とは言え、最終的に何が起こるかは誰にも分からない」

「2人の内の1人が辞めたいと言い出すかもしれない。すると突然空席が出てしまう。それもあって私は6月の段階で”セバスチャン、ノーチャンスだ”等と言いたくないのだ。それに、彼に対してそんな無遠慮な物言いをしたくもない」

「加えて私は、誰もが予想だにしない大どんでん返しを目の当たりにした事がある。(タイトルを獲得した末に2016年を以て電撃引退した)ニコ・ロズベルグを思い出して欲しい。そういった意味もあって我々は選択肢をオープンにしている」

ボッタスの残留は理に叶っていると言える。2017年にウィリアムズから移籍して以降、本人は快く思っていないフシがあるが、フィンランド人ドライバーは毎シーズンに渡ってチームプレイヤーとしてコンストラクタータイトルの獲得に貢献してきた。

ハミルトンと激しい火花を散らし合い、度々同士討ちを喫したロズベルグとは異なり、ボッタスはチームメイトとの関係を良好に保っている。どちらかと言えば従順なタイプでありながらも速さも兼ね備えたボッタスは、失礼ながらもチーム上層部にしてみれば理想的なNo.2ドライバーと言える。

互いの健闘を称えるメルセデスのルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタス、2019年F1イタリアGP予選を終えて
© Daimler AG / 互いの健闘を称えるハミルトンとボッタス、2019年F1イタリアGP予選を終えて

フェラーリを震源地とするドライバーマーケットの激震に対し、ウォルフはマラネロの決断に驚きを隠そうとしない。跳馬は昨年12月にシャルル・ルクレールとの契約を一気に2024年まで延長し、先月はシーズン開幕を待たずにカルロス・サインツとの早期契約を発表した。

「すべてが異常だった」ウォルフは同じ日に行われた独メディアとのカンファレンスの中で、スクーデリアの決断について辛口にコメントした。

「何となく、セバスチャンとチームとの雰囲気が良くない事は感じていたが、シャルルが例外的なドライバーの一人であるとは言え、5年の契約延長は普通のこととは言えない」

メルセデスのシートはいつ発表されるのか? ウォルフはレース再開後に2人のドライバー達との契約交渉をスタートさせ、夏の間に来季ラインナップを確定したいとの意向を明らかにした。F1は現時点で7月5日・12日のレッドブル・リンクでのオーストリアGPで開幕を迎える予定となっている。