メルセデス、2020年末でのF1撤退の可能性を検討との報道…来季は”アストンマーチン”の看板掲げる?
RacefansとAutocarは29日、メルセデスAMGフォーミュラ1チームが2020年シーズン末でのF1撤退を検討中だと報じた。2月12日のダイムラーの取締役会で、撤退か残留かの最終決断が下される見通しだと言う。英国ノーサンプトンシャー州ブラックリーのチームとF1商業権利者との契約は、今季末で満了を迎える。
メルセデスは、ホンダの資産を引き続いだブラウンGPを買収する形で2010年にF1復帰を果たし、これまでに数十億ドル規模の巨額の資金を投入。2014年から2019年まで6シーズン連続でドライバー及びコンストラクタータイトルを独占し、1.6リッターV6ハイブリッド・ターボ時代の絶対王者として君臨している。
報道では「コンストラクターとしてのF1参戦を取り止めるかどうかについて、親会社ダイムラーの次回取締役会で議論される見込み」としており、参戦の是非が問われているのは「ワークスチーム」としてのあり方のようだ。メルセデスは現在、自チーム以外にもパワーユニット一式を供給しており、レーシングポイント、ウィリアムズ・レーシングを自陣営に抱える「PUサプライヤー」でもある。
2つの英国メディアは「この情報は有力な情報筋によるものであり、メルセデスはF1からの撤退を”真剣に検討”している」と報じた。一方のメルセデスAMGの広報担当者は、本件に関するコメントを拒否しているようだ。
スリーポインテッドスターのエンブレムが象徴的なドイツの自動車メーカーは昨年中旬に、ディーター・ツェッチェが最高経営責任者の座から退き、その後任としてオラ・ケレニウスが新たにCEOに昇格。年末に、管理職の人件費削減を主体としたコスト削減プランを発表した。
ダイムラーの経営陣は、二酸化炭素削減のためのEVシフトに伴う研究開発及び設備投資が膨らんでいる事を挙げ、今後数年は利益率が低下すると見積もっており、発表されたコスト削減計画では2022年までに15億ドル、日本円にして約1,640億円規模のコストカットを達成するとの目標が掲げられている。メルセデスF1とて、この影響は避けられない。
取締役会の2日後には、英国シルバーストン・サーキットでメルセデスの2020年型F1マシン「W11」のシェイクダウンが行われ、その姿が公開される予定となっているが、F1と各コンストラクターは現在、2021年以降のコンコルド協定について議論しており、撤退を匂わすことで有利な条件を引き出す狙いがあるとも考えられる。実際に撤退するかどうかはさて置き、経営会議で参戦継続の是非が議論される事自体は驚きではない。
仮にメルセデスが撤退を決断した場合、ブラックリーを本拠とするチームの資産は誰の手に渡るのだろうか? 報道では、メルセデスF1のチーム代表であり株主のトト・ウォルフが、レーシングポイントF1チームの共同オーナーである投資家のローレンス・ストロールと手を組む可能性があると伝えている。
ストロールは目下、英国の高級スポーツカーメーカー「アストンマーチン」の買収を検討しているとみられている。そのためAutocarは、ブラックリーのチームは来シーズン以降「アストンマーチン」の看板を掲げる可能性があり、この場合レーシングポイントは、ロシアの実業家であるドミトリー・マゼピンの手に渡るかもしれないと伝えた。
ドミトリー・マゼピンはロシア・ベレズニキに本拠地を置く多国籍企業「ウラルカリ」の取締役会副会長を務めており、昨年春にはウィリアムズ・レーシングの買収を検討していると囁かれた事もあった。ドミトリーの息子ニキータはF1デビューを目指すレーシングドライバーで、昨年はARTグランプリからFIA-F2選手権に参戦する傍ら、大金を投じてメルセデスの2017年型F1マシン「W08」を使った12日間のプライベートテストを実施している。