
ファクトリー・シャットダウン期間
F1では、各チームやパワーユニット(PU)メーカーが年間を通じて無制限に開発競争を行うことを防ぐため、「ファクトリー・シャットダウン期間(Factory Shutdown Period)」がレギュレーションで定められている。
これは単なる休みではなく、統括団体である国際自動車連盟(FIA)が定めた「強制的な操業停止期間」であり、コスト抑制、人的リソースの保護、そして競争上の公平性を確保することを目的とした仕組みだ。
F1が技術競争であると同時に、人間の競技でもあることを示す、象徴的なルールの一つとも言える。
F1チームのシャットダウン期間
F1オペレーショナル・レギュレーションでは、すべてのF1チームに対し、以下の2つのシャットダウン期間を義務付けている。
夏季シャットダウン(7月または8月)
- 連続14日間(カレンダー日)
- ただし、該当期間中の2大会の間隔が17日しかない場合は13日間に短縮される
- 各チームは、選手権開幕から30日以内に、FIAへ実施日程を申告する必要がある
年末シャットダウン(12月)
- 12月24日から連続9日間
これらは努力目標ではなく義務であり、違反すればペナルティの対象となる。
禁止される主な活動
シャットダウン期間中、F1チームおよび関連組織は、以下の行為を一切行ってはならないと定められている。
- 風洞設備の使用
- CFD(数値流体解析)のための計算機使用
- マシン部品、テストパーツ、治具の製造や開発
- 車両や部品の組み立て
- 設計・開発・製造に関わるスタッフの業務全般
つまり、マシンを速くするための行為は全面的に禁止される。「外注すれば問題ない」といった抜け道も想定済みで、サプライヤーを含む第三者に作業を指示することも認められていない。
例外として認められる活動
さすがに「完全停止」は現実的でないため、FIAは限定的な例外も認めている。許可される主な例外は以下の通り。
- 直前のレースで大破した車両の修理(FIA承認が必要)
- 現行F1マシンの部品を使わないショーカーの整備
- F1と無関係なプロジェクトのための風洞・CFD使用
- ファクトリーの設備やITネットワークの保守
- 海上輸送(車両部品を除く)の準備
- スタッフの福利厚生やレクリエーション
- 年末シャットダウン期間中に限った棚卸し作業
要するに、開発競争に影響せず、安全や運営上不可欠な作業のみが認められる。
PUメーカーのシャットダウン
PUメーカー(ホンダ、メルセデス、フェラーリ、レッドブル・フォード、アウディ等)にも、チームとほぼ同様のシャットダウン義務が課されている。
- 夏季:14日間(条件次第で13日)
- 年末:12月24日開始で9日間
加えて、PUメーカーの場合は以下の行為が明確に禁止される。
- エンジンおよびERS関連の設計・開発・製造作業
- ダイナモ(テストベンチ)の稼働
- PU関連のシミュレーション作業
- PU部品の組み立てや製造
なお、国ごとの祝日や労働慣行により休暇週が異なる場合、一部期間を現地の休暇週に置き換えることは可能とされている。ただし、その期間中に別の国へスタッフを移動させて作業を行わせることは禁止されている。