2021年のレッドブル・ホンダRB16Bがメルセデスに勝る高い競争力を手に入れた理由
アレックス・アルボンやピエール・ガスリーの苦戦が象徴するように2020年型以前のレッドブル・ホンダのF1マシンはリアがナーバスで安定性を欠いていたものの、2021年型RB16Bはあらゆる種類のコースで一貫して高いパフォーマンスを発揮する「優等生」へと変貌した。
ホンダF1渾身のパワーユニット「RA621H」を搭載するRB16Bは前半戦11レースの内、6つのグランプリでメルセデスを退け優勝を飾る強さを発揮した。コンストラクター選手権では12ポイント差、ドライバーズ選手権ではマックス・フェルスタッペンがルイス・ハミルトンを8ポイント差で追いかける展開だが、イギリス及びハンガリーでの不運なクラッシュがなければ大量リードで前半戦を折り返していた可能性が極めて高い。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに対するコスト削減策の一貫として、2021年マシンにはトークン制による開発制限が設けられた。メカニカルコンポーネントの多くが開発凍結下に置かれる中、ミルトンキーンズの今季型マシンは何故、これほど多くのパフォーマンス向上を果たす事ができたのだろうか?
チーフテクニカル・オフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイによると、開発トークンをギアボックス・ケーシングに投じてリアサスペンションを変えた事が2021年の成功の鍵になったという。
プルロッドなどのアウトボードサスペンションはホモロゲーションの対象外であったが、ダンパーなどのインボート側のパーツ、そしてケーシングは開発が制限されていた。
空力の鬼才はチームのポッドキャストの中で、2枚のトークンをケーシングに投じた事を明かした上で、それによって「昨季型のRB16で課題を抱えていたリアサスペンションの構成を変更する事ができた」と説明した。
「バーレーンテストでクルマを走らせるとマックスが即座にマシンを褒めてくれて、昨季型から上手くステップアップできた事を感じた。競争力あるパッケージに仕上がっているという手応えを得る事ができた」
「バーレーンのレースでは優勝こそできなかったものの、間違いなく我々に競争力があることを示せたと思うし、それ以降はずっと(メルセデスとの)一進一退の攻防が続いている」
レッドブルはケーシングの変更を経てウィッシュボーンをリア側に後退させ、空力学的なアドバンテージを生み出した。その結果、フロア形状やディフューザーの変更といったレギュレーション変更にも関わらず、RB16Bはその損失量を上回るリアのダウンフォースを稼ぎ出したものと見られる。
ニューウェイによると今季RB16Bの大躍進は、前季型マシンでの”失敗”があったからこそ生まれたものだという。
「昨年のシーズン開始の時点で我々は、2019年型のRB15と20年型のRB16との違いについて、完全に理解できていない領域があった」
「これは風洞プログラムやあらゆるシミュレーションなどを駆使しても、まだ完全に理解する事のできないエリアがあり、それが原因で失敗する可能性があるという事を示している」
「そのため、問題を理解して対処するのに少し時間が掛かってしまった。だが、こうした状況は学びという点で有益だ。得てして失敗から学ぶ事の方が多いものだからね」
「だからこそ、ウィンターブレイクを通して行った事によって現在の状況に良い影響を与える事ができたのだと思う」