“ハの字型”ウイングの好調フェラーリ…レッドブル・ホンダは設計の方向性を見誤ったのか?
空力に関するレギュレーションが変更された事で、2019シーズンのF1で最大の注目ポイントの一つとなっているのがフロントウイングだ。翼端板(ウイング端)周りの複雑奇怪なパーツは姿を消し、幅が広がったシンプルな形状のウイングがお目見えした。
この新しい規約を各チームはどう読み解いたのか? 発表された新車には各チームのエアロダイナミスト達の様々な考え方が表れているが、中でも興味をそそられるのがアルファロメオとフェラーリに代表される”ハの字型フロントウイング”だ。
メルセデスやレッドブルが昨年型のコンセプトを継承したような従来タイプのウイングを持ち込んだのに対して、フィアット傘下のイタリアチーム達は、マシン中心部からエンドプレートに向かってフラップが低く傾斜する形状のフロントウイングを開発した。その狙いはフロントタイヤ周りの気流制御にある。
© Pirelli & C. S.p.A. / カタロニア・サーキットを走行するアルファロメオ・レーシングC38
“革新的”か”急進的”か、それとも”変則的”と呼ぶべきかは開幕オーストラリアGPまで待つ必要があるものの、18日に行われたバルセロナテスト初日セッションでは、SF90をドライブしたセバスチャン・ベッテルが後続を大きく引き離してトップタイム。アルファロメオC38のステアリングを握ったキミ・ライコネンも5番手タイムを記録し、好スタートを切ってみせた。
走行を振り返ったベッテルは「これ以上の望めない文字通り最高の出だしだ」とコメント。ライコネンの方も同様に、ザウバー・エンジニアリングが手がけた今季マシンは「既にかなりポジティブだが、今後に向けて高いポテンシャルを秘めている」と語り、継続的にパフォーマンスを向上していけるはずだとの認識を示した。
彼らの活躍の原動力がハの字型ウイングにあるかどうかはさておき、この状況をレッドブル・ホンダはどのように見ているのだろうか? 空力の鬼才エイドリアン・ニューウェイが全面関与したRB15は、昨シーズンのRB14の正常進化版といった趣き。初日のタイムは決して悪くはないものの、”今のところは”特に特筆すべき目立った部分はないように思われる。
チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、RB15に装着されているフロントウィングはマシン全体のコンセプトと合致しており、フェラーリ勢が採用しているハの字型ウイングについては特に気にしていないと明かした。
「今からそれを心配するのはちょっと極端だと思うが、様々なアイデアを見ることが出来て興味深い。テスト初日はそういったものが投入されているけど、1ヶ月後のメルボルンでは一体どうなっているだろうね。楽しみだよ」
「パーツはそれ単体で機能するわけではなく、他のあらゆる部分と連動して初めて意味を持つものだ。フラップだけを取り出して、その形状云々について語ってもしょうがない」
「我々は自分たちが選んだコンセプトに自信を持っているし、それがシーズン中にどのように発展し進化するかを楽しみにしている。我々は様々なシナリオを検討して、その上で自分たちのコンセプトにもっとも合致するウイングを設計したのだ」
フロントウイングは車体最前方にあるが故に、マシンのエアロダイナミクス全体を左右する”起点”となる。そのため、ウイング変更はマシン全体の設計方針の変更を意味する。単純にウイングだけ変えれば良い、という話ではない。
ハの字型ウイングは今季主流のソリューションとなるのだろうか?それとも開幕オーストラリアGPまでに姿を消してしまうのだろうか?注目したい。