マクラーレン、MCL60の弱点の「70%」は未解決…F1イギリスで突如ポールに迫った理由
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マクラーレンは2008年にポールシッターとなったヘイキ・コバライネン以来、15年ぶりにシルバーストン・サーキットで最前列を獲得した。トップ3に2台を並べたのは2021年イタリアGP以来の事だった。
F1第11戦イギリスGPの2日目。直前のプラクティスでは2台揃ってトップ10圏外に沈みながらも、予選ではランド・ノリスが2番手をマーク。キャリア2回目のフロントロウを手にし、新人オスカー・ピアストリがチームメイトからコンマ1秒落ちの3番手を刻んだ。
ノリスは最終ラップを経てタイムシートのトップに立ったが、背後で計測ラップを開始したフェルスタッペンが0.241秒上回ったためポール獲得とはならなかった。
「いつもマックスが台無しにするんだ!」グリッドインタビューを受けたノリスは母国ファンを前に冗談を飛ばして笑った。
「金曜の出来がそれほど良くなかったし、FP3はコンディション的に微妙だったから、週末を通して自信満々だったわけじゃないんだ。でも肝心な時にパフォーマンスを引き出せた。満足だよ」
初のイギリスGPでトップ3を手にしたピアストリは予選後のプレスカンファレンスで「この手の記者会見に参加するのは数年ぶりだから、こうして戻ってこれて嬉しい。素晴らしい1日になったよ」と振り返った。
「何かを成し遂げられるだろうとは密かに思っていたけど、こうしてやり抜く事が出来て嬉しい。自分のラップには満足してる。これ以上は殆ど縮められなかった」
前戦オーストリアでの大規模アップグレード第一弾に続き、シルバーストンでは全面的に見直されたノーズや翼端板を含むフロントウイング一式に加え、リアにより大きな荷重が掛かるよう改良されたブレーキダクトのウィングレットを投入した。
この日の結果はアップグレードが狙い通りの成果を上げた事の表れなのだろうか?
ノリスは「幾らか改善した事は確かだと思う。間違いない」「高速域での空力効率がもう少しばかり改善したと思う」「全体的なスピードとパフォーマンスはかなり前進した」と認めた。
ただその一方で、MCL60とコース特性とのマッチングに依るところも大きいとの考えを示し、このパフォーマンスが今後すべてのサーキットで発揮できるわけではないだろうと指摘した。
「高速域でのパフォーマンスは僕らの強みの1つだ。ここにはそれが多い」とノリスは語る。
「ネガティブな事を言うのであれば、僕らがもっと苦労する幾つかのコースがある事は間違いない。弱点がなくなったわけじゃない。かなり弱い。だから一貫して今日のようなパフォーマンスを発揮したいのであれば、本気でそれに取り組まなきゃならないと思う」
ピアストリもノリスの見解に同意する。
「クルマが良くなったのは確かだけど、同じようなコンディションのバルセロナで僕らは、旧スペックのクルマでも上位争いができる事を示したと思う」
「全体としてはよりコンスタントに上位を走れるようになったとは思うけど、ランドが言ったようにクルマはあまり変わっていないように感じるし、依然として解決したい弱点が残ってる」
ノリス曰く、マクラーレンが抱える弱点の「70%」はまだ直っていないという。
「30%は直った。荷重を増やして、より良いパフォーマンスを得ることで修正された。ただ、荷重を増やすだけですべてが解決するわけじゃない」
「この5年に渡って、僕らが抱えてきた特性やハンドリングに関する本質的な問題は依然として残っていて、今でも間違いなく苦労している」
スペインGPではノリスが予選3番手と好位置を確保したが、決勝では1ラップダウンの17位と転落した。同じ轍を踏む恐れはないのだろうか?
「バルセロナの話はもうどうでもいいんだよ!いいね?」とノリスは語る。
「全く違うコースだとは思うけど、オーストリアでは予選でかなり良いパフォーマンスを発揮して、決勝でもそれなりにそれを裏付ける事ができたから希望を持ちたいと思ってる」
「今年の流れや展開、コースとの相性といった観点から、通常はレースに希望を持つことはないんだけど、今は信じるに足る理由と希望があるんだ」
ノリスは隣に座っていたフェルスタッペンの方を振り向き「多分、この男と争うほどの競争力はないだろうけど、トップ5を賭けて戦えればと思ってる」と付け加えた。
決勝の目標についてピアストリは「後ろに速いクルマが何台もいるからトップ3に留まるのは難しいと思う」として、「まずはポイント圏内に留まる事」と慎重だった。