
メルセデスは何故、2022年の「W13」で3年ぶりに”シルバーアロー”を復活させたのだろうか?
メルセデスは何故、このタイミングで”シルバーアロー”を復活させたのだろうか? 2月18日(金)に発表された2022年型F1マシン「W13」は、過去2年の”ブラック・アロー”ではなく伝統の銀色を身にまとっていた。
規定重量オーバーという課題に対し、塗装を剥がしてアルミの地肌で検査をパスした1934年の出来事を機に、メルセデスのレースカーは以降「シルバーアロー」として親しまれてきた。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
2019年のメルセデスF1マシン「W10」、F1ブラジルGPにて
Courtesy Of Daimler AG
2021年のメルセデスF1マシン「W12」を囲むキングスパン・グループのジーン・マーターグCEOとトト・ウォルフCEO兼チーム代表
2010年のF1復帰以降も変わらずチームは伝統的なシルバー色を使い続けてきたが、人種差別に対する2020年の世界的機運の高まりをきっかけに、これを支持する姿勢の一環としてマシンやレーシングスーツを漆黒に染め上げてきた。
だが最新型「Mercedes-AMG F1 W13 E Performance」は3年ぶりにシルバー基調へと変更された。
Courtesy Of Daimler AG
メルセデスの2022年型F1マシン「W13」のレンダリングイメージ正面全体像
2022年のブラック・アロー誕生と同時にメルセデスは、チーム内やスポーツ界隈においてダイバーシティとインクルージョン(多様性と包括性)を推進していく方針を示し、研究、調査、作業を経て同年末には向こう5年間の具体的なアクションプラン「Accelerate 25」を発表した。
Accelerate 25は、2025年末までにチームに新たに加わるメンバーのうちの少なくとも25%をマイノリティに属するグループから採用するとするもので、1年目には既に38%を達成。昨年は女性従業員の割合が12%から14%に、少数民族出身のスタッフの割合が3%から6%に増加した。
トト・ウォルフ代表はシルバーアローへの回帰について、クルマのカラーリングが変更されてもこれまで通り多様性の確保に向けて努力を続けると約束し、今後は伝統のシルバーに黒を加えた2色のカラースキームを採用していく方針を示した。W13はシルバーながらも、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルが着用するレーシングスーツは過去2年と同じ様にブラックカラーが継続される。
「黒のカラーリングは多様性を志向するという我々の使命を明確に示したものだが、シルバーアローの銀色は我々のDNAであり、歴史でもある」とトト・ウォルフ。
「チームとして我々は、シルバーアローから成長し、徐々により多様で包括的なチームへと変わってきた。それ故、今後はシルバーとブラックのカラーリングを使う予定だ」
ブラック・アローはあくまで暫定的な存在であり、いつかは姿を消す運命にあった。
要はタイミングの問題であったわけだが、メルセデスの親会社がダイムラーからメルセデス・ベンツ・グループへと改称され、F1新時代の始まりとなる2022年以上に、これに適した時期を探すのは難しいだろう。
メルセデスが多様な人材をリクルーティングするのはパフォーマンス向上のためだ。
トト・ウォルフは「なぜチームの多様性を高めるのか。それはノルマ達成のためではなく、民族、性別、宗教、性的指向にかかわらず、最高の人材を採用するためだ」と説明する。
「エンジニアやテクノロジー、モータースポーツの分野でキャリアを積むのが自分には向いていないと考えている人たちに刺激を与える事で人材のプールを広げる事ができる。多様な人材がパフォーマンスを向上させるのだ」