ルノーの2020年F1マシン「R.S.20」のレンダリングイメージを囲むチームメンバー
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ルノーF1、新車R.S.20の発表なく…何故漠然としたレンダリング? 開発の遅れ? 撤退の兆候?

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ルノーF1チームは2月12日のローンチイベントで、実車ではなくレンダリングCGを、しかもかなり漠然としたイメージ画像のみを全世界のファンに向けてリリースした。実車の発表を行わないと明らかにしたのはイベント開催の前日の事だった。

不可解だと思われれても致し方ない。コストを投じてイベントを開催し、ファンの注目を集めておきながらニーズに応える内容がなかったのだから。マシン開発が遅れているのでは? そういった憶測も飛び交った。だが、チーム代表を務めるシリル・アビテブールは、それは事実ではないと否定した。

ルノーの2020年型F1マシン「R.S.20」のレンダリングイメージ写真
© RENAULT SPORT、公開されたR.S.20のレンダリングイメージ

シリル・アビテブール代表は、レンダリングで新車発表を行う手法への嫌悪感を示した後、そんな「偽物」に対するメディアやファンの憶測や洞察といった反応に「苛立ちを覚えている」と述べ、更には、マシン開発という観点から言えば「実車をこの場に持ち込み、数日近くに渡って作業が出来ない状況を作り出す」事は望ましくないとの考えを示し、今回のプレゼンテーション手法を正当化した。

であればなおのこと、ヘタにレンダリングイメージなど公開せずに体制発表イベントに徹すれば良かったのでは? シリル・アビテブール代表は「確かに費用の無駄だし、率直に言えば最適な方法ではなかったかもしれない」とも述べた。

肩を組むルノーF1チームの面々、2020年体制発表イベントにて
© RENAULT SPORT、イベントには技術チームのシニアマネジメントやアラン・プロストも参加した

ルノーを含めた全チームは今、F1の商業権利を持つリバティ・メディア及び、統括団体の国際自動車連盟(FIA)を相手に、2021年以降の新しい商業協定についての交渉を進めている。F1上層部は「現時点で撤退の兆候のあるチームはいない」としているが、ルノーの参戦継続を懸念する声は絶えない。

昨年のルノーはカスタマーチームのマクラーレンにすら先行を許し、コンストラクター5位に終わった。目標とするタイトル争いに復帰出来ない理由としてシリル・アビテブール代表は、トップチームと比較して低予算でチームを運営しているからだと述べ、親会社のルノーがF1活動を軽視しているわけではないと主張。更に、ロイター通信とのインタビューの中で次のように語った。

「私としては、準備が整い次第、ルノーは新しい契約にサインすると信じているし、それを信じるに足るだけのあらゆる材料が揃っている」

ルノーの経営陣は変化の時を迎えている。金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたカルロス・ゴーンの辞任後、ティエリー・ボロレが最高経営責任者の座に就いたものの解任され、今はクロチルド・デルボスが暫定CEOに就いているが、フォルクスワーゲン参加のセアトを率いるルカ・デメオが先月辞任を発表。ルノーの次期CEOに就任するとみられている。

「(残留を確信する)最も重要な情報の1つは、クロチルド・デルボスが副社長という立場でルノーに留まるという事実だ」とシリル・アビテブールは説明する。「これはすなわち、ガバナンスと決定事項が引き継がれる見通しだという事を意味する」

エステバン・オコンとダニエル・リカルド、パリ・シャンゼリゼ通りの自社ショールーム「ラトリエ・ルノー」の前にて
© RENAULT SPORT、「ラトリエ・ルノー」の前に立つエステバン・オコンとダニエル・リカルド