ウェットタイヤでは”水しぶき問題”は解決せず…主因はグランドエフェクトカーにあり、とピレリ

水しぶきを巻き上げるマクラーレンMCL36、2022年F1日本GPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

レースの遅延・中断の原因となる水しぶきについて、ヘッド・オブ・カーレーシングとしてピレリF1の現場を統括するマリオ・イゾラは、ベンチュリー効果を活用するマシン側に依るところが大きいとして、タイヤのみで解決する事は難しいとの認識を示した。

鈴鹿サーキットで行われた2022年のF1日本GPは、雨の影響で2時間もの中断を余儀なくされた。シャルル・ルクレール(フェラーリ)は水しぶきによる視界不良の改善が必要だと訴えた。

日本GPを経て国際自動車連盟(FIA)は、コースの排水性能の改善について鈴鹿サーキットと議論を進めており、FIA技術部門とピレリとの間では現行フルウェット・タイヤの性能分析が進められている。

問題視されている水しぶきは一見、タイヤによる巻き上げが主な原因かとも思われるが、イゾラによるとその大部分は、ベンチュリー効果により加速されたフロア下の気流が車体後方から排出される事で生じていると言う。

「水しぶきを減らすためにウェットタイヤでできることは殆どない」とイゾラは説明する。

「大部分はフロアやディフューザーからも発生していると思う。原因はタイヤ側だけではない」

「2017年にタイヤの幅を拡大する必要があったが、これが水しぶきの量という点で助けになっていない事は確かだ」

「空気中に撒き散らされる水量を変化させる事は可能だし、量を低減させるためのクリエイティブな解決策を見つけ出そうとはしているが、それにより解決できるのは、視界の問題を引き起こしている水の総量から見れば極わずかだと考えている」

Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

水しぶきを巻き上げるアルファロメオC42、2022年F1日本GP

タイヤ側で解決しきれないのであれば、技術規定を変更してシャシー側で対策を施す必要があるが、イゾラによるとこれまでにフロアを変更するといった話は出ていないという。

中断・遅延のもう一つの原因は深溝のフルウェット・タイヤの性能の低さだ。

あまりにもラップタイムが遅いため、路面の水量的に時期尚早な段階であっても、誰もが排水性能の低いインターミディエイトを履きたがる。結果、事故による中断は発生しやすくなる。

イゾラは、従来とは異なる新たなウェットタイヤの設計・開発に意欲を示した上で、まずはどのようなタイヤが理想かを具体的に描くことが必要だと指摘する。

「アクアプレーニング現象の改善を進めれば、おそらくはより多くの水しぶきが上がる事になる。もしこの点での性能を下げれば水の排出量は減り、水しぶきを抑えることができるが、そうなれば今度はクルマがアクアプレーニングを起こす可能性が上がる」とイゾラは語る。

「では、どういった解決策が適切なのだろうか? 私見だが、現在のウェットタイヤと比較して、ウォームアップに必要な時間を若干短縮させた上で、エクストリームウェットのパフォーマンスをもう少し上げるべきだと思う」

「一部のドライバーから、両コンパウンド間のタイム差を近づけて、エクストリームウェットからインターミディエイトへの切り替えが早くなり過ぎないようにすべきだとの意見が出ている」

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水しぶきを巻き上げるレッドブルRB18、2022年F1エミリア・ロマーニャGP

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