ヘルメットを被りガレージ内でモニターを見つめるメルセデスのバルテリ・ボッタス、2021年6月25日F1シュタイアーマルクGPにて
Courtesy Of Daimler AG

メルセデス、ピット改善図った結果 ボッタスがスピン「危険走行」裁定でグリッド降格ペナルティ

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レッドブル・ホンダに対するピットストップの遅れを解消しようと、メルセデスがレッドブル・リンクで取り組んだ新たな試みはバルテリ・ボッタスの3グリッド降格ペナルティに繋がる事態となった。

F1第8戦シュタイアーマルクGPの2回目のフリー走行の終盤、ボッタスは新品のハードタイヤを履いてピットを出ると、ファストレーンに足を踏み入れた直後にリアを滑らせた。

77号車W12はマクラーレンのガレージ前にスタック。車体がピットレーンを垂直に塞ぐ格好となり、ボッタスはウォーキングのメカニック達の助けを借りてコースへと出て行った。この非常に珍しいドタバタ劇で怪我人が出なかったのは幸いだった。

マクラーレンのチームマネージャーを務めるポール・ジェームズはFIAレースディレクターのマイケル・マシに対して「全く馬鹿げた話だ。彼は我々の仲間に怪我をさせるところだった」と無線で不満をぶちまけた。マシはこれに対して「同意する」と答えた。

一件は審議の対象となり、スチュワードはセッション終了後にボッタスとメルセデスの代表者を招集。映像証拠と照らし合わせて状況を検証した結果、「危険走行」と判断してF1競技規約第27条4項への違反を認め、ボッタスに3グリッド降格と2点のペナルティポイントを科す容赦のない裁定を下した。1戦の出場停止まで10点となった。

ボッタスはアクシデントの直後にタイヤのウォームアップ状況についてチームに問いただしていたが、この思わぬアクシデントの背景には、ピットストップタイムを改善しようとするメルセデスの”とある取り組み”があったようだ。スチュワードはアクシデントが発生した際の詳細と罰則裁定の理由を次のように説明した。

「ボッタスは指定されたピットストップ・ポジションから離れた後、ファストレーンに向かうところでオーバーステアに見舞われスピンを喫し、マクラーレンのピット付近のファストレーンを横切るように停止した」

「聴取の中でボッタスは、これまでピットから離れる際にタイムをロスしていたため、メルセデスは2速発進するという新しい試みにトライしたのだと説明した」

「その結果、予想以上のホイールスピンが発生してマシンをコントロールできず、予期せぬ結果に繋がった」

「特にピットレーン周辺には関係者がいる状態であり、一件は潜在的に危険なドライビングであったと判断されるべきだ」

メルセデスは前戦フランスGPでルイス・ハミルトンがトップを走りながらも、マックス・フェルスタッペンの驚異的なアンダーカットによって首位を奪われており、ピットストップの早期改善が求められていた。

なお第8戦の週末を前にFIAは、安全性の向上を理由にピットストップの手順に関する新たな技術指令書「TD22A」を発行。最も大きな打撃を負うものとみられるレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、突然の規制改定は安全性の向上を目ざしたものではなく、自分達の競争力を削ごうとするライバルチームの策略だと不満と失望をあらわにし、メルセデスを牽制している。

セッション後に「ピットから出る際にこれまでとは違う事に挑戦してみた結果、ホイールスピンが発生してしまい、それでスピンしてしまった。スチュワードから処分が下されるような事になればビックリだよ。あれはただのミスで、よくある事だからね」と語っていただけに、過去2勝、3ポールと得意とするサーキットでの予期せぬ降格は思いの外、ボッタスに精神的ダメージを与える事になるかもしれない。


初日をトップで締め括ったのはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。2番手ダニエル・リカルド(マクラーレン)を0.336秒差で退けた。3番手には0.378秒遅れでエステバン・オコン(アルピーヌ)が続く結果となった。

F1シュタイアーマルクグランプリ3回目のフリー走行は日本時間6月26日(土)19時から、公式予選は同22時から1時間に渡ってレッドブル・リンクで開催される。

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