2019年F1シンガポールGP決勝レースで1-2フィニッシュを達成し、記念撮影を行うスクーデリア・フェラーリの面々
Courtesy Of Ferrari S.p.A.

セバスチャン・ベッテル、392日ぶりの勝利…苦難の中 ファンから受け取ったメッセージとは?

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392日ぶりの表彰台の頂点だった。困難なシーズンを過ごし続けていたセバスチャン・ベッテルは、F1第15戦シンガポールGPで2019年シーズン初勝利を獲得。フェラーリのピットウォールが下した戦略によって、1年以上ぶりに勝利の美酒を味わった。

特にこの夏休み明けの2連戦は、4度のF1ワールドチャンピオンにとって苦難だった。ベルギーではフェラーリとしての今季初優勝をチームメイトに獲られただけでなく、そのお膳立て役を命じられ、チームの母国イタリアでは、自身のミスによってスピンを喫した挙げ句、コース復帰の際に他車を危険に陥れた。

シャンパンを顔に浴びるフェラーリのセバスチャン・ベッテル、2019年F1シンガポールGP決勝レースにて
© Pirelli & C. S.p.A / シャンパンファイトに興じるベッテル

そして迎えたマリーナベイ市街地コース。土曜の公式予選ではまたしてもシャルル・ルクレールにポールを奪われたが、3番手からスタートした決勝レースでは、早めのピットストップが功を奏し、チームメイトとルイス・ハミルトン(Mercedes)のアンダーカットに成功。3度に渡るセーフティーカーの混乱をくぐり抜け、今シーズン初勝利を手にした。

「ファンのみんなに心からの感謝を伝えたい」とベッテル。ピットレーン上でのインタビューに答え、信じて支え続けてくれる世界中のファンに自身の想いを伝えた。

「ここ数週間は最高とは言えないものだった。でも、そういった状況の中、たくさんの手紙と数々の心励まされるメッセージをもらった。本当に多くの人達に支えられている。みんな、物事が上手くいかない時の自分の話を聞かせてくれるんだ。それは僕を強く奮い立たせてくれた。今日はそんな想い全てを背負ってレースに挑んだ。そしてそれは報われた。本当に嬉しい」

ベッテルは極端とも言えるほどにプライベートを尊重するドライバーであり、TwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアのアカウントを一切開設していないことで有名だ。一体、どのような手段でどのような内容のメッセージを受け取ったのだろうか? ベッテルは、先のインタビューの後にカンファレンスルームで行われた会見の場でその一端を明かした。

「ほら、色んな方法があるでしょ? だってソーシャルメディアが登場する前だって、ファンはメッセージを送れたんだから。メモみたいなものだったり、手書きの手紙だったりさ。何かを書くって事は、そのための時間を割くわけだよね。夜中とかさ。それって本当に励みになるんだ」

「確かに数年前から(SNSが流行りだした事で)そういった事を想像するのが難しくなったのは分かるけどね。でも近年、特にここアジアでは、たくさんのサポートをもらうんだ。多くのファンが何度も会いに来てくれるんだよ。さっきも言ったけど、僕はここ数週間でみんなから多くのエネルギーをもらった。身近な人や、昔から知ってる人、モータースポーツ界のみんなからのメッセージはもちろんだけど、何よりもファンからのメッセージが一番多かった」

「モンツァでのレースの後にここに来て、みんなが僕に色んな身の上話を話すんだ。その人の人生における浮き沈みの経験話をね。僕らの人生ってモータースポーツを中心に回ってるじゃない? でも、他の人の凄く個人的な人生の話、例えばそれは困難な状況や苦悩に関することだったりするんだけど、そういったものに触れると、それって(レースにおける成績不振)大した事じゃないなって思うんだ。ほら、そういうのって分かるでしょ?」

「それは僕に大いなる信念と自信を与えてくれた。ただただ努力を続けていこうって思えたんだ。ここ数週間、何も悪い問題はなかった。ブレイクスルーの時がそう遠くはないって分かっていたからね。確かにシャルルは凄く手強いし、過去2レースで勝利してみせた。でもね、僕に必要なのは自分の仕事をやり続けるって事だけで、遅かれ早かれ、状況が好転する事は分かってた。その時が”遅く”ではなく”早く”きてくれたからホント嬉しいよ」

ベッテルはファクトリーで開発にいそしむエンジニア達への敬意も忘れなかった。シンガポールで投入されたフロアとフロントウィングのアップグレードによって、SF90は苦手としていた低速コーナーを攻略。高速のスパとモンツァに続く3連勝を達成した。跳馬が最後に3連勝したのは2008年までさかのぼる。

「チームにも心からのおめでとうを言うよ」とベッテル。「シーズン序盤は困難な状況が続いていたけど、ここ数週間で僕らはようやく息を吹き返してきたように思う。母国で頑張ってくれている全ての人達が本当に誇らしい」

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