次世代Sダクトか、それとも…フェラーリF1「SF-23」搭載の怪しげなインテークの狙い。模倣は困難か
スクーデリア・フェラーリの2023年型F1マシン「SF-23」には幾つかの怪しげな開口部がある。冷却のためのものなのか、それとも次世代Sダクトと呼ぶべき斬新なエアロダイナミクス・トリックなのか。
新車発表の段階から新シーズンは既にスタートしている。それは何もライバルに対してのというだけでなく、自らの画期的アイデアをベールに包んでおきたいエンジニアリング部門と、より多くの露出を確保したいマーケティング部門のチーム内戦争という側面もある。
レッドブルがいつものように単なるリバリーのみをローンチとした一方、フェラーリは今年も変わらず実車をワールドプレミアした。それだけでなく、発表の最中にフィオラノでシェイクダウンすら行って見せた。ファンにとってはまさに神対応と呼ぶに相応しいものだった。
それでもなお、2008年以来、15年ぶりのコンストラクターズ選手権制覇を目標とする新車の全てを白日の下に晒したわけではない。
公開されたSF-23の画像そのものを見ているだけでは分からないが、画像補正してみると隠された要素が見えてくる。真っ暗なサイドポッドの下部には長方形のエアインテークのようなエレメントが隠されていた。
通常、マシンにこの手の開口部を設けるのは冷却のためだ。カウルの下に配置されたラジエーターや電子機器、バッテリーを冷却するためには外部の空気が必要だ。だが、この謎めいたエアインテークは空力性能を引き上げる事を目的としたもののようだ。
SF-23のサイドポッド上部にはこれと同じような奇妙な開口部がある。サイドポッド・インレットから流入した冷却用の空気の排出口とも考えられるが、スクーデリアの本国、イタリアの複数メディアは、純粋に空力学的な目的を持つSダクトのようなアイデアだと伝えている。
この排出口はサイドポッド下部の吸気口とダクトで連結されており、リアウイングの下部やビームウイングへと向かう空気の流れを加速させ、リアのダウンフォースを高める狙いがある考えられている。
この手の発想は近年のF1において特に珍しいものではなく、エアロダイナミスト達はフロントに同じような仕掛けを施してきた。いわゆるSダクトというやつだ。
ノーズの上面は傾斜がついているため前方から流れてくる空気を弾いてしまうが、下部に開口部を設けて上部の排出口に繋ぐ事で、上面に沿う強い空気の流れを作り出し、弾かれそうになる空気をノーズ表面に引き込む事が可能になる。
ただオーバーテイクの阻害要因となる後方乱気流抑制のため、グランドエフェクトカーが導入された2022年の新たな技術レギュレーションを以てノーズに開口部を設けることは禁止され、Sダクトは姿を消した。
唯一の例外は鼻先部分で、多くのチームはこれを利用してコックピット内の冷却を行っている。
バーレーンでのプレシーズンテストが開幕し、カウル内部の姿が明らかになれば、この怪しげなインテークの目的はすぐにでも判明するだろう。
だが伊「formu1a.uno」によるとスクーデリアは、フレームや冷却系の再設計が必要であるため、予算上限と相まってライバルがこのアイデアをシーズン中にコピーするのはかなり難しいと見ているようだと伝えている。