ロダン・カーズ、アルファタウリF1買収を協議…FIA入札失敗「頭にきた」野心一層のディッカー
ロダン・カーズの創設者にしてオーストラリアの億万長者であるデビッド・ディッカーは今もF1への参戦を諦めておらず、角田裕毅擁するスクーデリア・アルファタウリの買収を含めた別の道を模索している。
アンドレッティ・キャデラックがフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)との最終商談に進む事を許された一方、ハイテックおよびLKY SUNZとみられる他の応募者2社と並びロダンは、国際自動車連盟(FIA)による新規F1参戦入札に失敗した。
米「RACER」とのインタビューの中でディッカーは「F1に参加できなかった事については、かなり頭にきている。このまま拗ねて去ったりはしない」と述べ、尻尾を巻いて諦めるつもりは毛頭なく、別の方法でFIA-F1世界選手権への参戦を模索していると明かした。
「現在、取り組んでいるプロジェクトがある。興味深くエキサイティングなものだが、具体化していないため、まだ話すことはできない」
「やりたいことをやるのが人生というものだ。兎に角、やってみる。あるやり方でできないなら、別のやり方、他の方法を探すだけだ」
現在「取り組んでいるプロジェクト」とは別にディッカーは、アルファタウリの買収についても検討を進めているが、10億ドル(約1,500億円)規模の金額では商業的に成り立たないと考えている。
「アルファタウリの買収について幾つか話をしているが、私の理解で言えば、その価格は商業的に実行不可能だ」とディッカーは語る。
「こういった事は商業的な観点で見なければならない。F1の関係者はモータースポーツの面では専門家だが、ビジネスの面ではどうだろう。私にはよく分からない」
「何人かの人からあれこれと話を聞いたが、途方もなく具体化しているわけではない」
「実行可能なルートがあるなら買うだろうが、8・9億ドルという金額ではおそらく、商業的に難しい。ただそれでも可能性があるかどうかを見てみる必要がある」
ディッカーはまた「来週か再来週には、幾つかの可能性についてもう少し情報が得られるかもしれない」と述べ、進展する可能性を認めたが「バリュー・プロポジションは弱い」とも付け加え、この水準の金額でアルファタウリを買収しても得られる利益は限定的との見方を示した。
F1のステファノ・ドメニカリCEOによれば、今やF1チームは日本円にして少なくとも1,500億円以上のプライスが付く程に高騰しているが、この金額でもチーム側が首を縦に振る事はないという。
3年ほど前は、現在の5分の1程度で価格で手に入れる事ができた。ウィリアムズ・グランプリ・エンジニアリング・リミテッド(WGPE)がドリルトン・キャピタル傘下のファンド、BCEリミテッドに売却された際の金額は1億5,200万ユーロ、約241億円に過ぎなかった。
F1に対するディッカーの情熱は、今年2月のFIAによる関心表明プロセスの開始によって誘発されたわけではない。ディッカーは過去にザウバーやハース、ウィリアムズの買収を巡って話し合いを行っている。
ディッカーは「ウィリアムズが売りに出された時、楽に買えたというのに私はミスを犯した。入札において戦略的展望を見誤ったんだ。今思えばあれは明らかに間違いだった」と振り返る。
「ウィリアムズとは何度も話し合った。あらゆる数字を評価し、プレゼンテーションに出席し、そしてオファーを出すなどした」
「私はしばしば、何人かとの間で他のチームについて話をしていた。そのほとんどはザウバーとハースだった。これらのチームはマーケットに出たり入ったりを繰り返している。おそらくは商業的に遥かに理に適った低い価格で買えた事だろうが、私はそれを台無しにしてしまった」
ディッカーは1978年に元妻フィオナ・ブラウンと共に、パソコンやプリンター等のハードウェア及びソフトウェアを販売するディッカー・データ社を創業。2023年現在の1日の平均売上は1,200万ドルに及ぶ。
1970年代からF1を追いかけるほどのレース好きで、本業とは別に、1999年にロダン・カーズを創業。2016年に事業を本格化させ、今年始めには欧州の有力ジュニアチーム、カーリンを買収した。