”最強ホンダF1”はどこへ? アストン、提携後に「経験者3割」の現実に直面。明らかにされた現在地

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2026年、新時代の幕開けとともにF1の表舞台に復帰したホンダだが、その内情はかつての黄金時代とは大きく異なる可能性がある。アストンマーティンのチーム代表エイドリアン・ニューウェイがホンダの現状を明かした。

ホンダは2021年末にワークスとしてのF1参戦を終了した。その後もレッドブルへのパワーユニット技術支援は継続され、2026年規則に関する基礎研究も小規模ながら続けられていた。だが組織としては文字どおり撤退状態にあり、英国拠点は売却され、中核メンバーの多くは社内のカーボンニュートラル関連プロジェクトへ異動していた。

技術ノウハウや人材の継承が途切れているのではないか――そんな懸念は以前からささやかれてきた。実際、撤退から復帰発表までは約18ヶ月間の空白があった。今回、ニューウェイの口から語られた内容は、その不安が現実に近い可能性を示すものだった。

開幕戦オーストラリアGPの初日、ニューウェイはホンダの現状について説明した。2021年末の撤退後、多くの熟練エンジニアが太陽光パネル部門などへ移ったという。

その結果、「再結成されたチームメンバーの大部分はF1での経験がなかった。つまり、以前の経験がほとんどない状態だ」と明かした。

決勝後にピットレーンで勝利を祝うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とHRC(株式会社ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

決勝後にピットレーンで勝利を祝うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とHRC(株式会社ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長、2025年4月6日(日) F1日本GP(鈴鹿サーキット)

「経験者は3割」――失われた知見とコストキャップ

2021年シーズンにレッドブルと共に頂点に登り詰めた当時の開発スタッフは、現在のホンダF1プロジェクトに「30%程度しか残っていないのではないか」とニューウェイは見ている。

さらにホンダを苦しめているのが、パワーユニットメーカーにも適用される適用される予算制限、いわゆるコストキャップだ。

マクラーレンとの提携を解消した後、ホンダが選手権制覇への巻き返しを果たした当時のF1には存在しなかった制度だ。ニューウェイは、この制約も開発の足かせになっていると指摘する。

「ライバルメーカーは2021年、2022年と開発を続けてきた。一方でホンダは一度ブランクを挟み、組織を再編する必要があった。しかも今はコストキャップの時代だ」

「つまり、後手に回った状態で再スタートしたわけだ。残念ながら、その遅れを取り戻すのに苦労している」

肩にバッグを掛けパドックを歩くエイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティン)、2026年3月6日(金) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

肩にバッグを掛けパドックを歩くエイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティン)、2026年3月6日(金) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)

東京訪問で判明した「目標未達」の可能性

両者の関係という点で気がかりなのは、アストン側がこの経験不足を把握した時期だ。ニューウェイによれば衝撃的なことに、それは提携発表から2年半近くが過ぎた昨年11月だったという。

オーナーのローレンス・ストロール、最高戦略責任者のアンディ・カウエル、そしてニューウェイは東京のホンダ本社を訪問した。議題は、開幕戦までに目標のエンジン出力に届かない可能性があるという噂だった。

その議論の過程で、パワー目標が未達となる可能性に加え、開発チームの顔ぶれが以前とは大きく入れ替わっている事実が判明したという。

「話し合いの中で、プロジェクト再始動の際、元の開発メンバーの多くが戻っていなかったことが明らかになった」とニューウェイは振り返る。

社内異動ばかりでなく、首脳陣が抜けたことも影響があるかもしれない。ホンダF1のPU開発を率いていた浅木泰昭氏は2023年に定年退職し、F1担当マネージングディレクターを務めてきた山本雅史氏は、2022年にホンダを退社している。

完成途上のパワーユニット、開幕戦にも暗雲

縁石際を走行するフェルナンド・アロンソのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年3月6日(金) F1オーストラリアGP FP2(アルバート・パーク・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

縁石際を走行するフェルナンド・アロンソのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年3月6日(金) F1オーストラリアGP FP2(アルバート・パーク・サーキット)

問題は人員構成だけではない。深刻な振動、バッテリーとその管理システム(BMS)の間で起きた新たな技術トラブル、これらに伴うスペアパーツ不足、そしてパフォーマンス不足。課題は広範にわたる。

メルボルンの週末、アストンは2台のマシンを無事にスタートラインへ並べられるかどうかさえ確信が持てない状況だ。

かつて世界を席巻したホンダ。そして空力の鬼才と呼ばれる天才デザイナー、ニューウェイ。その組み合わせには大きな期待が集まった。

だが、世界最高峰の競争において、技術と人材の連続性がどれほど重要かということを、このプロジェクトは容赦なく突きつけている。

ニューウェイは「ホンダを信頼している」と強調する。一方で同時に、2027年に向けて抜本的な再構築が必要との認識も示した。

組織の急拡大と揺らぐリーダーシップ

アストンマーティン・ホンダが直面する本当の戦いはコース上だけではない。不和へ発展する事態を避け、ワンチームとしてこの難局を乗り越えられるか。両者の真価が問われる局面だ。

両者の間に、すでにかなり強い緊張が走っているのは明らかだ。ニューウェイは一貫して、責任の大部分をホンダ側に求める発言を口にしている。彼が、日々のように続く失態の原因をどこに見ているのかは疑いようがない。

一方で企業文化を踏まえると、ホンダ側から詳細な経緯が語られる可能性は低い。その結果、アストン側の主張が紙面を大きく占める構図になる。だが、それがどこまで真実なのかは分からない。そもそも現在のアストンが、初のフルワークス化という重大な局面に十分対応できる組織なのかという疑問も残る。

野心的なオーナー、ローレンス・ストロールの指揮の下、アストンは急速に組織を拡大してきた。フォースインディア時代には約400名規模と見られていた組織は、今や1000名を優に超える大所帯となった。

急速な拡大も、安定したリーダーシップがあればまだ管理できた可能性はある。だがストロールの衝動的な人事は、結果としてトップ層に空白を生んできた。アンディ・カウエルの加入でマーティン・ウィットマーシュはグループCEOの座を退き、さらにニューウェイの加入でカウエルの立場は揺らいだ。そしてダン・ファローズはレーシング・ブルズへ移籍した。

ニューウェイ自身のリーダーシップにも課題があるのかもしれない。小松礼雄やローラン・メキーズ、アンドレア・ステラなど、最近のグリッドには技術畑出身のリーダーが増えている。とはいえ、クリスチャン・ホーナーのようにメディアの前に立ち、組織を守る姿勢を示す強いリーダーもまた必要であり、危機的状況にある際は尚更だ。

実際、バーレーンテストでニューウェイは表に姿を見せず、ストロールもほとんど公の場に現れなかった。代わりに対応したのは、現場チームを率いるマイク・クラックと、アンバサダーでチーム代表者のペドロ・デ・ラ・ロサだった。

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