メルセデスの2021年型F1マシン「Mercedes-AMG F1 W12 E Performance」の発表イベントにて (5)
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

遂に明かされた秘密…メルセデスF1、開発トークンを使わず2021年コンストラクターズ選手権を制覇

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秘密主義のメルセデスはシーズン閉幕の12月になってようやく、開発トークンの使用エリアを明かした。驚くべき事にシルバーアローはトークンなしに2021年シーズンのコンストラクターズ選手権を制した。

パンデミックへの財政対策の一環としてF1は、空力を除き原則として今季のマシン開発を禁止した。ただしダウンフォース低減のために車両後方エリアの変更が義務付けられ、チームには2つの開発トークンが与えられた。

一部のチームは新車発表に合わせて、何処にトークンを投じたのかを明かした。例えばアルファロメオはノーズに、レッドブル・ホンダはギアボックスのケーシングに、マクラーレンはメルセデス製パワーユニットに載せ替えるためにトークンを費やしたと公表した。

だが、今季型W12の開発を主導したジェームズ・アリソンは新車発表に際して「我々はトークンを使い切ったが、今はまだ、その使い道を明らかにするつもりはない」と述べ、詳細を明かす事を拒んだ。

一部では、メルセデスは新しいノーズの開発を進めていたものの、規約で定められたクラッシュテストで不合格になったと囁かれていた。チームは2017年以降、同じノーズコンセプトを貫いてきた。変更はクルマ全体の空力性能に大きな影響を与えうる。

結局、メルセデスは計613.5点を稼ぎ出し、レッドブル・ホンダを28点差で抑えてコンストラクターズ選手権8連覇を達成したが、アリソンの後任としてテクニカル・ディレクターに就任したマイク・エリオットはF1 TVの中で「結局、我々はトークンを使わなかった」と説明した。コンストラクター8連覇を達成した今季のシルバーアローは、他チーム以上に先代型と類似したマシンだった。

「ノーズを開発するという計画もあったが、最終的には使わなかった。実際のところ、我々はパンデミックの最中にあった」とエリオット。

「来年のレギュレーション変更は特に、エアロダイナミクスの面で非常に大きい。そのため今シーズンに向けての開発においては、今年と来年の開発のバランスをどう取るのかが課題だった」

「トークンを使わないという決断を下した時点で、我々にはかなりのアドバンテージがあった。2020年のクルマは非常に力強かった。弱点は何処にあったのか? より前進させるためには何をすべきなのか? それは大きなものではなかった」

「それは空力コンセプトに見られる些細なものだった。我々はエアフローに目をつけた。新旧マシンの違いは全てが細部にある」

「パワーユニットのドライバビリティという点では、シーズンを通じて様々な問題に直面した。性能の劣化も問題になった。だがシャシーに関しても思うように開発が進まなかった」

「しかしながらチームが一丸となって小さな改善点を見つけ出し、それをクルマに反映させていった。これが功を奏したのだと思う」

今シーズンは、当時マクラーレンに所属していたルイス・ハミルトンとスクーデリア・フェラーリがタイトルを分け合った2008年以来、13年ぶりに両チャンピオンシップの勝者が分かれた。

ハミルトンの8冠目の野望を打ち砕いて今季ドライバーズチャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペンは「コンストラクターズ選手権が獲れなかったのは当然」だと述べ、シーズンを通してRB16BよりもW12の方が勝っていたとの考えを示した。

メルセデス以外にも開発トークンを使わなかったチームがもう一つある。ミック・シューマッハとニキータ・マゼピンの新人コンビを擁したハースは、ノーポイントのランキング10位でシーズンを終えた。