角田裕毅(アルファタウリ)と周冠宇(アルファロメオ)、2023年F1スペインGP
Courtesy Of Red Bull Content Pool / Alfa Romeo

角田裕毅への懲罰は妥当、不当? 元F1ドライバーが詳細解説する周冠宇とのF1スペイン事件

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角田裕毅(アルファタウリ)に対するペナルティは妥当だったのか? それとも不当だったのだろうか? スーパーアグリF1チーム時代の佐藤琢磨の元チームメイトで、Sky Sportsでアナリストを務めるアンソニー・デビッドソンの解説を中心に、日本以外での見解を幾つか紹介したい。

カタロニア・サーキットで行われた2023年のF1スペインGPはグランドスラムという歴史的完全試合を達成したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の異次元のパフォーマンスと合わせて、角田裕毅と周冠宇(アルファロメオ)のインシデントに注目が集まった。

最終盤のターン1で発生した本件について、元F1ドライバーのデレック・ワーウィックを含む4名のスチュワードはレース映像およびオンボード映像を確認の上、ポジショニングの観点からコーナーの優先権は周冠宇にあり、また、コース外に追いやったとして角田裕毅に5秒ペナルティを科した。

結果、角田裕毅は9位でフィニッシュしたものの12位に降格となった。チェッカー後に無線を通してその事実と、クルマに速さがあったのは前向きで、素晴らしいレースだったと伝えられた角田裕毅は「クルマの事なんかどうでもいいよ!」とフラストレーションを爆発させた。

デビッドソンの見解

デビッドソンは番組の中で、両車のオンボード映像をコマ送りにしながら一件を振り返り、ターン1へのブレーキングの時点で既に、角田裕毅にインシデントを避ける術はなかったとの見方を示し、同時に周冠宇に関してもコース外に逃れる他に接触を避ける事はできず、またルールに照らし合わせれば「反論の余地はない」としてスチュワードの決定は妥当との考えを示した。

周冠宇についてデビッドソンは「DRSの助けを借りてターン1のアウト側で素晴らしい走りを見せた」とした上で、アルファロメオC43の右フロントと、アルファタウリAT04の左翼端板が如何に接近していたか(下記画像参照)を指摘し、次のように意見を述べた。

角田裕毅(アルファタウリ)と接近した際の周冠宇(アルファロメオ)のオンボード映像、2023年6月4日F1スペインGPcopyright FORMULA 1

角田裕毅(アルファタウリ)と接近した際の周冠宇(アルファロメオ)のオンボード映像、2023年6月4日F1スペインGP

「ジョーが回避行動を取るために他にできることは何もなかった」「もしジョーが回避行動を取らなければ間違いなく接触していただろうし、物理的にコース外に押し出されていただろう」

ルールではターン1・2で4輪全てが白線を越えた場合、ランオフに設置された2つのボラードを左側を通過してターン3手前でコースに戻らなければならない。無理にコースに留まろうとしてこれに違反すればペナルティが科される恐れがあった。

角田裕毅に関しては、レイトブレーキングを経てミッドコーナーでアンダーステアになっていた点を指摘した上で、周冠宇にスペースを与えようと試み、「決して左に曲がることはなく、ステアリングを元に戻す事はなかった」と解説した。

そして、アンダーによってクルマが流される状況で、かつステアリングを最大限に切っていた事に改めて触れて「これ以上何が出来ただろうか?」と問いかけた。

また、角田裕毅のオンボード映像(以下の画像を参照)に触れて「残念ながら、このあたりでジョーが一瞬だけ前に出た瞬間があった。これがオーバーテイクを試みるアウト側のクルマにスペースを与え、コース外に押し出してはならないとするルールに当てはまったのだと思う」とも指摘した。

周冠宇(アルファロメオ)と接近した際の角田裕毅(アルファタウリ)のオンボード映像、2023年6月4日F1スペインGPcopyright FORMULA 1

周冠宇(アルファロメオ)と接近した際の角田裕毅(アルファタウリ)のオンボード映像、2023年6月4日F1スペインGP

そして「僕は彼(角田裕毅)が今日、本当に力強く素晴らしい気骨のあるレースをしたと思っていた。5秒ペナルティで終わってしまって残念だ」と語り、「可哀想なユーキ」と付け加えた。

更に、オープニングラップで発生した一件、つまりニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)との接触を避けるべくジョージ・ラッセル(メルセデス)がシケインのエスケープに逃れたインシデントに触れて、スチュワードはこれを考慮に入れて角田裕毅にペナルティを与えたのだろうとも指摘した。

隊列をリードするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、コース外を走行するジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年6月4日F1スペインGP決勝レース1周目のターン1・2Courtesy Of Red Bull Content Pool

隊列をリードするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、コース外を走行するジョージ・ラッセル(メルセデス)、2023年6月4日F1スペインGP決勝レース1周目のターン1・2

悔しがるのは理解できる

カタロニア・サーキットのターン1で発生した角田裕毅(アルファタウリ)と周冠宇(アルファロメオ)のインシデント、2023年6月4日F1スペインGPcopyright FORMULA 1

カタロニア・サーキットのターン1で発生した角田裕毅(アルファタウリ)と周冠宇(アルファロメオ)のインシデント、2023年6月4日F1スペインGP

英「The Race」のスコット・ミッチェル・マルムは「如何なる順位でフィニッシュしたとしても、両ドライバーは共にポイントに値する本当に素晴らしい走りだった」とした上で、最終的に1つではなく3つのポジションを失ったという状況を踏まえると、ペナルティは角田裕毅にとって「少し厳しいように感じる」と記した。

コース内に留まれるだけのスペースが周冠宇にあったか否かという点については、角田裕毅は「ミッドコーナーでジョーのスペースを空けようとしていた」としながらも、結局のところ、1台のマシンが収まる十分なスペースはなかったと指摘した。

また周冠宇がコース外に追い出された演技をしたとする角田裕毅の主張については「分からない」とした。

そして「ツノダが悔しがるのは理解できる。酷い違反ではなかったのに、大きな代償を支払ったのだから。レース後、彼に心境を詳しく聞くのは楽しいことではなかった」と締め括った。

米「FOX Sports」は「ツノダは目に見えるような幅寄せはせず、スペースを空けようとしたが、十分なスペースがあったかどうかについては議論の余地がある」と記した。

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