インディ賞金=2億7千万円の使い道「全部はもらえない」と佐藤琢磨

indy500-takuma-interview-2017copyright HondaJP

「インディアナポリス500マイルレース」通称インディ500で、日本人として初優勝を果たし、日本円にして3億円近い賞金を手にした佐藤琢磨。高額な賞金の使い道に注目が集まる中、凱旋帰国を果たした佐藤琢磨は、6月13日(火)に東京の青山にあるホンダ本社ビルで優勝の記者会見を行った。

世界三大レースという歴史と名誉もさることながら、優勝賞金が高額なことでも知られるインディ500。2017年の賞金総額は1317万ドル8359ドル(約14億5035万円)、優勝を飾った佐藤琢磨が手にした金額は、なんと245万8129ドル。日本円にして約2億7280万円という大金であった。

琢磨は会見の中で「契約上賞金は全部はもらえない」とこぼした上で、賞金への意識はあったものの、賞金のためにレースをしているわけではなく、あくまでの勝利のためにレースをしていると述べた。

賞金は意識、でも賞金に魅力はない

自身は賞金に対するモチベーションが凄かった、と語る元インディカードライバーの松田秀士が、”下世話な話になりますが…”との前置きをした上で、高額な賞金に対しての琢磨のモチベーションについて質問した。これに対して琢磨は「(当然)ありましたね」とコメント、会場の笑いを誘ったが、賞金のためにレースをしているのではないと主張する。

「お金の為にやってるだけではない。しかし僕たちも生活をしなくてはいけないし、それ以上に自分のリスクを追う、それだけの対価というのを頂かないととプロとしては…っていうのがあって…」

100年以上の歴史を持つインディ500で命を落としたトップドライバーは数知れない。これまでに58人のドライバーがインディ500での事故によってこの世を去っている。命の対価と考えれば、3億円という額も霞んで見える。

「賞金のためだけだったら、2012年も2位に入れば1億円近くの賞金が手に入ったわけで、僕としてはそこに魅力はなかった

琢磨は、5年前のインディ500の最終ラップを2番手で走行していた。無理せず走り続ければ2位は確実な状況であった。だが琢磨が目指したのはあくまでも勝利、1コーナーでの僅かなチャンスに懸けた琢磨はバランスを崩してスピン、ウォールの餌食となりリタイヤした。勝利こそが全て、賞金よりも勝つ事にこだわる、それが佐藤琢磨の生き様なのだ。

とは言え、賞金そのものの存在については否定しない。琢磨は、自身は賞金よりも勝つ事にこだわっていたとしながらも、結果に対する正当な評価として賞金を提供する、というアメリカ型の明快なシステムを評価する。

「多くのプロスポーツの中でも、モータースポーツは非常に不透明な部分が多い。でもそこは流石アメリカ。非常にわかりやすい。バンケットも全米で中継され、信じられないような大金の賞金を手に入れる。それが一つのステータスになっている」

加えて琢磨は、賞金の額は多ければ多いほど良いと語り、それが子供達の夢につながるから、と賞金システムに対する持論を展開した。

賞金全部はもらえない

高額な賞金の使い道に多くの注目が集まっていたが、琢磨は、契約上2億7280万円の全額は貰えない事を明かした。実際に手にできるのはその一部だと言う。

「細かい話をすると、契約でパーセンテージが決まっていて、実は全て僕のものではないんですね。しっかり頂くものは頂いて、納税をして、チームの皆にもボーナスとして、もちろんキャッシュではなく何か思い出に残るものにして返したい。そしてちょっと残ったら貯金したい」

琢磨自身が貯金できる金額はそう多くはないのかもしれない。だが、彼が得た「勝利」という称号は、2億7280万円では決して買う事など出来ないのだ。

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