アルファタウリ、角田裕毅とリカルドのスプリット戦略について説明…2台で明暗分かれたF1ハンガリーGP
スクーデリア・アルファタウリは7月23日(日)のF1第12戦ハンガリーGP決勝で角田裕毅とダニエル・リカルドの戦略を分けるアプローチを採った。その結果、リカルドはレース4合目の時点で最下位だったものの13位フィニッシュを飾り、角田裕毅は11番手を走行する場面がありながらも15位に終わった。
瞬発力のあるソフトを履いた角田裕毅は1周目に6ポジションアップの11番手に浮上し、一気に入賞圏内を射程に捉えた。対するリカルドはオープニングラップのターン1で周冠宇(アルファロメオ)に衝突され最後尾に転落した。
2台のスタートタイヤについて車両パフォーマンス部門のチーフエンジニアを務めるクラウディオ・バレストリは「レースに向けて2台でタイヤを分ける事にした。アグレッシブに行くべくユーキには最も柔らかいコンパウンドを、ダニエルにはミディアムタイヤを選んだ」と説明する。
「スタートでは、ユーキが大きくポジションを上げてトップ10に近づいた一方、ダニエルは周に当てられてしまい、2台のアルピーヌのリタイヤを経て1周目の終わりに18番手にまで下がってしまった」
急浮上した角田裕毅はその後、好ペースを刻んでランス・ストロール(アストンマーチン)のDRS圏内を走行していたが、後方のアレックス・アルボン(ウィリアムズ)が8周目にピットストップに動くとアルファタウリは、アンダーカットを防ぐべくその翌周に角田裕毅をピットインさせた。
だがこの際、左フロントタイヤの取り外し作業に手間取り7.3秒もの時間を要した結果、アルボンの後方2.3秒の位置でコースに戻っただけでなく、同じタイミングでピットストップを行った後続のバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)に対してもポジションを失った。
「最初の10周を経て、ソフトタイヤでスタートした何台かのマシンがピットに入ったためユーキをピットに呼び、第2スティントを引っ張るためにハードタイヤを履かせた」とバレストリは語る。
「ただ残念な事に、ピットストップは通常より長くかかる事となり幾つかポジションを失い、同じコンパウンドを履いていたアルボンの後方でコースに戻る事になってしまった」
「ダニエルは別の戦略を採った。最初のスティントを引っ張った後、18周目にハードタイヤに交換した。これは残りのレースを踏まえた上で柔軟性という点で最適なコンパウンドだ」
「第2スティントでは両方のドライバーがハードを履いていたため、我々はユーキのスティントを延長する一方、ミディアムでの最終スティントでフリーエアーを得るためにダニエルのスティントを短くした」
ハードタイヤを履いたリカルドの第2スティントは誰よりも短い僅か11周に過ぎなかったが、これはローガン・サージェント(ウィリアムズ)に前を塞がれる状況下で走るより、クリーンエアーの中で走行した方が賢明との判断によるものだった。
この判断が逆転13位フィニッシュを決定的に演出した。リカルドは40周に渡る最終スティントの大半をクリーンエアーで走行し、大きくポジションを上げた。実際、最後のピットストップを終えた時、リカルドは最後尾18番手だった。
バレストリは「ダニエルに速さと一貫性があったため、この戦略は功を奏した。1周目に失ったポジションを取り戻して13位でレースを終えた」と語った。
リカルドが29周目であったのに対し、角田裕毅が最終ピットストップを行ったのは44周目であったが、直近のライバル達はこれに先行して最後のタイヤ交換を実施。ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は角田裕毅からポジションを失い、元々前を走行していたアルボンとボッタスは角田裕毅との差を更に拡大させた。
「ユーキは最終スティントでミディアムを装着したが、順位を上げるに十分ではなく、ヒュルケンベルグから0.2秒遅れの15位でフィニッシュした」とバレストリは語った。
2台で戦略を分けるのは、戦略決定に伴うリスクを低減させチーム全体として好結果を目指すためであり、これは同時にどちらか一方のみが利益を享受する事を意味する。
今回はポイントを持ち帰る事ができなかったが、バレストリは「次のレースではポイント争いができる立場にあると信じている」と述べ、スパ・フランコルシャンを舞台とする次戦ベルギーGPで8戦ぶりの入賞を目指していくと誓った。