ハースF1チームの小松礼雄代表、2024年2月11日にシルバーストン・サーキットで行われたVF-24のシェイクダウンにて
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ヒュルケンベルグとマグヌッセンが小松礼雄と2024年のハースF1に期待するもの、その理由

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ニコ・ヒュルケンベルグとケビン・マグヌッセンは、2024年シーズンに向けてギュンター・シュタイナーに代わり新たなチーム代表に就任した小松礼雄の手腕、取り分け彼が持つエンジニアリング的バックグラウンドがチームに新風をもたらす事を期待している。

シュタイナーはメカニックとしてキャリアをスタートさせ、F1を含めて幾つかのチームでテクニカル・ディレクターを務めた経験を持つ技術畑の出身だが、マネージャーとしてのキャリアが豊富で、どちらかと言えばマネジメント力に対する評価が高い。

ハースF1チームのケビン・マグヌッセンとギュンター・シュタイナー代表、2023年7月9日F1イギリスGP決勝レース前のグリッドにてCourtesy Of Haas

ハースF1チームのケビン・マグヌッセンとギュンター・シュタイナー代表、2023年7月9日F1イギリスGP決勝レース前のグリッドにて

一方の小松礼雄は2003年にBARでF1キャリアを始めて以降、ルノー時代を含めて一貫して技術職を担当。エンジニアリング・ディレクターを経て、今年、チーム代表に抜擢された。

マグヌッセンは、技術的なバックグラウンドを持つ小松礼雄がチームのリーダーシップを担うことで、組織内のコミュニケーションや意思決定のプロセスに新たな視点がもたらされることを期待している。

「アヤオとは良い関係だ。彼は2016年の開幕から8年に渡ってこのチームに在籍していて、2017年にハースに来て以来、僕は彼と一緒に本当に緊密に仕事に取り組んできた。彼がチーム代表になったのは当然、チームにとって大きな変化だった」とマグヌッセンは語る。

「アヤオはエンジニアで、F1チームにおけるエンジニアリングの経験も豊富だし、そんな彼がチームの舵を取る上でのマインドセットを身につけていくのは本当に興味深い。組織全体のダイナミズムやコミュニケーションが変わると思う」

ハースVF-24のシェイクダウンに向けてガレージ内で準備するニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月11日シルバーストン・サーキットCourtesy Of Haas

ハースVF-24のシェイクダウンに向けてガレージ内で準備するニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月11日シルバーストン・サーキット

現行グリッドにおいて、ビザ・キャッシュアップRBのローラン・メキーズとマクラーレンのアンドレア・ステラは小松礼雄と同じく技術畑の出身だ。ヒュルケンベルグは、小松礼雄が持つ技術的な知識やノウハウはチームのマネジメントに直接活かせると考えている。

「アヤオとの関係はすごく良い。昨年はシーズンを通して彼と緊密に仕事に取り組んだ。(チーム代表への就任は)チームにとって大きな変化だと思うし興味深い」とヒュルケンベルグは語る。

「他のチームでも技術畑の人間がチーム代表の役割に就いたりしていて、かなり上手くいっている。アヤオは彼のやり方で仕事に取り組んで、豊富な技術的知識とノウハウをもたらしてくれるはずだ」

とは言え、組織再編の効果はクルマのアップグレードほど早々に表れるようなものではなく、また昨年のオースティンでのアップグレードの準備のためにVF-24の開発が2ヶ月中断したため、小松礼雄はシーズン序盤の成績に全く期待していない。

しかしながらそれはシーズン全体の先行きが明るくないという事を意味するわけではない。

「確かにアヤオは僕らがまだ昨年のポジションから抜け出していないとの考えをハッキリと示しているけど、同時にマシン開発において遥かに力強くやっていけるとも考えていて、実際には僕らが今シーズンを通して前進できると楽観視しているんだ」とマグヌッセンは語る。

「去年はフィールド全体がすごく接近していたし、開発の面で完全に壁にぶつかってしまった。でもコンセプトを変える事でその壁を破ることができるし、その意味で今年は遥かに良いように思う。序盤に対する期待は低いけどシーズン全体としては高い」

シルバーストン・サーキットでハース「VF-24」のシェイクダウンを行うニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月11日Courtesy Of Haas

シルバーストン・サーキットでハース「VF-24」のシェイクダウンを行うニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月11日

新車発表ラッシュも終わり、来週にはバーレーンでのプレシーズンテストが幕を開ける。

多くは新しいクルマが意図した通りに機能しているかどうかを確認し、風洞やシミュレーションとの相関を調べ、クルマに対する理解を深めると共にドライバーを新しいクルマに慣れさせ、それらを通して初戦や序盤のグランプリでより良い結果を目指すための準備の場として活用する事になるだろうが、ハースは3日間のテストをまるごと全て、クルマとタイヤの関連を探るためのデータ収集に充てる計画だ。

「昨年、我々が抱えていた問題は日曜の300kmのレースでタイヤをマネジメントできなかった事にあります。我々はそれに焦点を当てています」と小松礼雄は語る。

「バーレーンのテストプログラムは、クルマに何が起きているのか、タイヤに何が起きているのかをエンジニアたちが理解できるように、それに関連するデータの収集に完全に焦点を当てたものとなります」

「質の高いデータがあれば、それを改善するための方法を導く事ができるので、その上でこれまでとは異なる方向性を決めていきます」

課題をひとつずつ解決し、その積み重ねによって目的を達成する。プレシーズンテストに対するアプローチには早くも小松礼雄が持つエンジニアリング的な思考が見え隠れする。

シルバーストン・サーキットでハースVF-24のシェイクダウンを行うニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月11日Courtesy Of Haas

シルバーストン・サーキットでハースVF-24のシェイクダウンを行うニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月11日