ホンダF1の田辺豊治テクニカル・ディレクター、2018年F1ロシアGPにて
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ホンダF1 田辺TD、新生アルファタウリを語る「去年以上に前進できるはず」

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「スクーデリア・トロロッソ」というF1チームにホンダがパワーユニットを供給する事は今後2度と起こり得ない。多くの日本人にも親しまれたその名は、昨シーズンのF1を以て歩みを止めた。確かに愛すべきトロロッソはもういないが、ホンダF1の現場を統括する田辺豊治テクニカル・ディレクターにしてみれば、共にF1を戦う人々が変わったわけではない。

「このチームとの関係は2020年で3シーズン連続ですし、本当に楽しみにしています」と田辺豊治TD。アルファタウリ・ホンダ初のF1マシン「AT01」が14日にザルツブルクで発表され、遂に新しい歴史の1ページが開かれた。目の前に広がる新たな旅路を前に、田辺TDは昨年までの2年間を次のように総括した。

「一緒に仕事を始めたのは2017年の冬の事でしたが、彼らが全てを共有しあって仕事を進めていく事を熱望し、さらには日本人の働き方を理解したいとまで思ってくれている組織である事をすぐ理解しました。まさに真のパートナーシップです」

「2018年シーズンからすぐに成果を上げ始めました。昨年はトロ・ロッソとしての最期のシーズンとなりましたが、ドイツGPとブラジルGPではそれぞれ3位と2位を獲得し、過去10年における最高の成績を収める事が出来ました」

ホンダ製エンジンを搭載して挑んだ2年目の2019年シーズン。トロロッソは2度の表彰台という快挙と共に、コンストラクターズ選手権でチーム史上最高得点となる85点を稼ぎ出し、史上最高位タイとなる6位を獲得した。成功要因はなんだったのか?

「これは、シャシー、エアロ、パワーユニットの改善によるものですがそれだけではありません」と田辺TDは説明する。

「問題にぶち当たれば共に学び、上手く行けばそれを分かち合う。そんな最高の仕事関係がもたらした成果でもあるのです。昨年は2つのチームにパワーユニットを供給しましたが、どちらもレッドブル・テクノロジーの関連チームでしたので、我々として開発のスピードを上げることができましたし、それは今シーズンにも引き継がれています」

ホンダは昨年のブラジルGPで、1991年の日本GP以来、28年ぶりとなる1-2フィニッシュを果たした。トロロッソの活躍なくして、なし得ない結果だった。アルファタウリとレッドブル・レーシングは今年、一体どれだけのパフォーマンスを見せてくれるのだろうか? ホンダの最新型PU「RA620H」に大きな期待がかかる。

田辺TDは現在の開発状況について「日本のSakuraと英国のミルトン・キーンズにある我々ホンダのファクトリーでは、パワーユニットの出力を更に引き出すために、誰もが懸命に努力しています」と説明する。

「もちろん、信頼性をおざなりにパワーを追求しても意味がありません。今シーズンは22戦が予定されており、F1史上最も多くの戦いが待ち構えていますので、信頼性に関する課題はこれまで以上に大きいです」

レッドブルの首脳陣やマックス・フェルスタッペンは口を揃えて「目標はF1ワールドチャンピオン」と述べているが、ホンダ的に勝算は如何ほどなのだろうか?

田辺TDは「どのようなスポーツであれ、パフォーマンスというものは競争相手との比較によってのみ判断されるものです。従って実際にレースをしてみるまでは、我々がどれだけ成功できるのかを予測することは不可能です」と慎重な姿勢を見せる一方で、ホンダとしての目標を次のように語った。

「パワーユニットに関するテクニカルレギュレーションは昨年からほとんど変わっていませんので、2019年に4台のマシンによってもたらされた経験を出発点として更に前進出来ると考えています。目標は昨年以上の成果を上げることです」

チームはピエール・ガスリーとダニール・クビアトを従えて、2月15日にイタリアのミサノ・サーキットでAT01のシェイクダウンを行う。それが終わると2月19日にバルセロナで公式プレシーズンテストが開始され、3月15日にメルボルンでシーズンが開幕する。