
ホンダF1の挽回に「待った」か。中東2戦中止の思わぬ余波、ADUO評価プロセスを直撃
深刻化する中東情勢を受け、2026年F1第4戦バーレーンGPと第5戦サウジアラビアGPの開催中止が決定した。ただ、この決定は単にカレンダーの縮小にとどまらず、アストンマーティン・ホンダの巻き返しにも影響を及ぼす可能性がある。
PU救済制度「ADUO」に影響する評価タイミング
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
決勝前のグリッド上で整列しスタートを待つアストンマーティン・ホンダのチームクルーとHRCのメンバー、2026年3月15日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)
開催中止により、レース開催数や日付に紐づくレギュレーション上の複数の規定にも影響が及ぶ。その中でも、早期の巻き返しを狙うパワーユニット(PU)メーカーにとって重要になるのが、2026年から導入されたPU性能格差救済制度、通称ADUOだ。
この制度は、各メーカーのICE(内燃エンジン)のパフォーマンス指標をレース中のデータから測定し、最も性能が高いメーカーとの差に応じて、遅れを取っているメーカーに特例を認める仕組みだ。
該当メーカーにはアップグレード投入の許可に加え、テストベンチの稼働時間追加やコストキャップ控除など、挽回のための機会が与えられる。
中東2戦の中止によって問題となるのは、統括団体である国際自動車連盟(FIA)が行う性能評価のタイミングだ。簡略化して言うと、レギュレーションでは第6戦、第12戦、第18戦終了後に各メーカーの性能差を評価し、ADUOの適用可否を判断すると定められている。
当初の予定では、5月4日のマイアミGP終了後に最初の評価が行われ、該当メーカーは速やかに改良型PUを投入できるはずだった。
だがカレンダーから2戦が消滅したことで、当初の第6戦であるマイアミGPは今季4レース目へと繰り上がった。これにより、最初の評価は6月7日のモナコGP終了後までずれ込む事となり、ADUOの適用を見込んでいたメーカーは開発・投入計画の見直しを迫られる可能性がある。
「Competition」の定義が示す規則上の結論
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
決勝前のグリッドでアストンマーティン・ホンダAMR26を見つめるHRC(株式会社ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長、2026年3月15日(日) F1中国GP決勝レース(上海インターナショナル・サーキット)
規則では最初の評価期間について「Competition rounds」の「1 to 6」と記されている。一見すると、この表現がカレンダー上のラウンド番号を指すのか、それとも実際の開催回数を指すのか明確ではないようにも見える。
だが「Competition」は「リザルトを伴う、チャンピオンシップを構成するレース」と別の規定で明記されており、FIA国際競技規則(ISC)では「一度カレンダーが公開された後にキャンセルされたCompetitionは、その年の国際的ステータスを失う」と定められている。
この解釈に従えば、中止が決定したバーレーンGPとサウジアラビアGPは、レギュレーション上の「Competition」には該当しなくなる。結果として、当初第8戦として予定されていたモナコGPが、新たな「Competition round 6」に位置づけられることになる。
一方でパドックでは、FIAがADUOの評価プロセスについて協議を行っているとの見方もあり、場合によっては規則が変更され、モナコGP以前に最初の評価期間の末日が設けられる可能性もゼロではない。
もっとも、ホンダのICEがトップメーカーと遜色ない性能を備えているのであれば、この議論はアストンマーティン・ホンダにとって大きな意味を持たない可能性もある。
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
決勝前のグリッド上で整列しスタートを待つアストンマーティン・ホンダのチームクルーとHRCのメンバー、2026年3月15日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)