
メルセデス俊足の秘密は「2026年版パーティーモード」か、既視感を感じるハミルトン
12シーズンにわたって所属し、誰よりもその組織の内部を知り尽くすルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、古巣メルセデスの新世代パワーユニット(PU)が予選の特定の局面で見せる爆発的なパフォーマンスに、かつての「パーティーモード」を見ている。
2026年F1第2戦中国GP公式予選は、アンドレア・キミ・アントネッリがF1史上最年少でポールポジションを獲得し、チームメイトのジョージ・ラッセルが2番手に続いたことで、メルセデスがフロントロウを独占する形で幕を閉じた。
フェラーリは2列目を独占したが、メルセデスとの差は大きく開いた。Q1ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)がトップタイムで通過したが、Q2以降はメルセデスが主役となり、最終Q3では両チームの差が0.351秒に達した。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
観客に手を振る2番手ジョージ・ラッセル(メルセデス)、史上最年少ポールのアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、3番手ルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年3月14日(土) F1中国GP予選(上海インターナショナル・サーキット)
「Q2に入るとスイッチが入る」ハミルトンが気づいた変化
3番手に終わった予選を経て、ハミルトンは古巣の予選パフォーマンスについて次のように語った。
「僕は長い間メルセデスにいたから、あそこの仕組みについてはよく分かっている」
「彼らには別のモードがあって、予選ではそれに切り替えることができる。かつての“パーティーモード”みたいなものだね。Q2に入るとそれをオンにする。まあ、それが何であれ、僕らにはそれがない」
パーティーモードとは、ハミルトンが王座を連覇していた時代にメルセデスが持っていた予選専用の強力なエンジンモードの通称だ。予選と決勝で同じエンジンモードを使用するよう規則が改められたことで、2020年以降は姿を消した。
だが電動エネルギーへの依存度が高まった2026年の新たなレギュレーション下では、バッテリーのデプロイメント(放出)のプログラム次第で、かつての予選モードに似た出力を得る余地が残されている可能性もある。
ハミルトンが注目するのは、Q1とQ2以降での差の広がり方だ。
「Q1ではそこまで差はない。でも突然、大きく差が開く。Q1では確かコンマ1秒差くらいだったのに、突然コンマ7秒とか、さらにコンマ5秒くらいの差になる。大きなステップだ」と語り、セッションが進むにつれてメルセデスが「何かをさらに引き出している」との見方を示した。
加えて、メルセデス製PUのエネルギー効率が高いのか、それともエンジンのクランク出力そのものが高いのかについては「知るよしもない」と断りつつも、「全体としてはやっぱり彼らが有利だ。あれが何なのか突き止めなきゃならない」と続けた。
あくまでハミルトンの見解であり、メルセデスが実際にそのようなモードを使用しているかどうかは確認されていない。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
3番手に終わった予選を経てパルクフェルメでクルマを降りるルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年3月14日(土) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)
スプリントでの5度の首位交代――それでも「届かなかった」
土曜午前のスプリントレースでハミルトンは、5周にわたってラッセルと5度の首位交代を演じる激しいバトルを繰り広げた。だが最終的にはメルセデスが一枚上手だった。
「彼らの後ろにいるとパワー不足を強く感じる。追いつくのは本当に難しい。明らかに彼らの方がパワーがある。より長く加速していくんだ。だから今朝のスプリントでは力尽きてしまった」とハミルトンは振り返る。
「コーナーで差を取り戻そうとしたけど、全然意味がなくて、ただタイヤを消耗させるだけだった」
コーナーで稼いだコンマ数秒をストレートでいとも簡単に奪い返される――ハミルトンが言葉にしたこの構図は、現在のフェラーリとメルセデスの力関係を端的に示している。
ルクレールの上海苦手意識、フェラーリの2台に異なる課題
ハミルトンのチームメイトであるルクレールも難しい状況に置かれている。だが、直面している課題の性格は少し異なる。4番手に終わった予選を経て、ルクレールは次のように語った。
「今回、上海でかなり苦戦しているけど、毎年そうなんだ。加えて今年のマシンでは、予選でドライビングの仕方を少し変えなきゃならない」
デビューイヤーである2018年から今年までの間に上海で開催された計8回の予選セッション(スプリント予選を含む)において、ルクレールがチームメイトを上回ったのは2回にとどまる。
上海特有のロングコーナーはアンダーステアを誘発しやすく、アンダーステアを好まないルクレールにとってセットアップ調整が難しいサーキットだ。過度な変更は、かえって自滅を招くリスクもある。
「正直、このコースでルイスから0.01秒差だから、ある意味では満足している。こう言うのは悔しいけどね。いつだって一番速くありたいから。でも彼の方がいい仕事をしたし、それに値する」とルクレールは語った。
「レースでは差が縮まる」決勝への手応え
予選ではメルセデスに大きく離されたフェラーリだが、決勝に向けては少なからず希望もある。ハミルトンはレースペースについて次のように語った。
「なぜか分からないけれど、レースでは少し差が縮まるんだ。それでもまだ十分ではないけれどね」
ハミルトンがコーナーで築く優位をメルセデスがストレートで帳消しにするという構図は決勝でも続くのだろうか。7度の王者の知略が、どこまでその差を埋められるのか注目される。