ポーパシング及びフロア技術指令で利を得たのはレッドブル、悪影響を被ったのはフェラーリ?
スパ・フランコルシャンを舞台とするF1ベルギーGPで施行された新たな技術指令、TD39/22によって利を得たのは誰なのか? 足枷をはめられパフォーマンス低下を強いられたのはどのチームなのか?
国際自動車連盟(FIA)はバウンシング及びポーパシング=空力的上下動によるドライバーへの健康侵害を防ぐべく、テクニカル・ディレクティブ(TD)を通してチームのマシン開発に介入した。
ただベルギーで導入された新たなTDは、選手権を独走するレッドブル及びフェラーリのパフォーマンスの秘密の一つとされていたフレキシブルフロアを制限するものでもあった。
しかしながら蓋を開けてみれば、チャンピオンシップ争いをリードするレッドブルとマックス・フェルスタッペンはベルギーGPとその翌周末のオランダGPで2戦連続のポール・トゥ・ウインを飾り、ダブルタイトルに向けて更に大きく前進した。
空力効率並びにダウンフォース/ドラッグという点でスパとザントフォールトは対照的なサーキットであり、マシン特性になぞらえれば前者はレッドブル、後者はフェラーリ向きと言えるが、両レースを支配したのはレッドブルだった。
F1ジャーナリストのピーター・ウィンザーはベルギーGPを振り返り「新しい技術指令はレッドブルに全く傷を与えていない。むしろライバル達の方が遥かに損害を受けている」と指摘した。
TD39に関してはメルセデスが導入を主導したとされている。レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はベルギーGPでの圧勝劇を経て「TDの件についてはトトに感謝しなきゃならないね!」と述べ、犬猿の仲であるライバルチームの指揮官を皮肉った。
RacingNews365によると当のトト・ウォルフ代表は「新しい技術指針は間違いなくレッドブルのパフォーマンスを向上させた」と冗談を飛ばしつつも、ルールの微調整によって突如、コンマ5秒もパフォーマンスが変動する事は「あり得ない」と主張し、TDによる影響が目に見える程の違いを生む事はないとの考えを示した。
ウォルフはまた「ルールの明確化がフェラーリに影響を与えたかどうかは分からないが、それが重要な役割を果たしたとは思えない」とも述べた。だが、TD39以降の跳ね馬はそれまでとは別物のようだった。
ピットストップや戦略など、オペレーション面での失態がリザルトに大きく影響しているとは言え、低速域でのパフォーマンスは低下しトラクションが悪化するなど、今季ベストのオールラウンダーと評価されていたF1-75はセットアップのウィンドウが狭まったようであり、過去2戦では実質的に3番目のチームに成り下がった。
これについてフェラーリのマッティア・ビノット代表は「ごく僅か」にTDの影響を受けたと認めつつも「無視できる」レベルだと主張。本来のポテンシャルを発揮できていないだけだと説明した。
「指令のせいなのか?という疑問はもっともだが、我々の側からの答えはNOだ。我々を悩ませているのはTD39そのものではない」とビノットは語った。
サンプル数が2戦しかないためTDの影響はまだまだ見通せない。イエローの特別カラーが施されるF1-75を含め、各車はスパと特性が似通ったモンツァで一体どのようなパフォーマンスを見せるのだろうか?
なおフェラーリは軽量化された新しいハイブリッドシステムをカルロス・サインツに投入する事を計画しているようで、少なくとも1台のF1-75はティフォシが見守る母国レースでグリッド降格による後方スタートとなる可能性がある。