Netflix効果で潮目が変わった? F1、COTAで記録的数値…遂にアメリカでブレイクか
F1は過去何十年にも渡ってアメリカ市場を開拓しようとして失敗してきたが、Netflix(ネットフリックス)効果だろうか。その流れは着実に、そして劇的に変わりつつある。
2年ぶりにサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で復活を遂げた今年のグランプリには週末を通して延べ40万人が来場し、決勝レース当日には14万人もの記録的な大観衆が駆け付けた。
土曜日の夜には78年の名曲「Honesty」等で知られるビリー・ジョエルがヘッドライナーを務め、日曜日にはNBAの元スーパースター、シャキール・オニールが「DJ Diesel」の名でDJを務めるなど、ファンは週末を通して行われた充実のイベントを楽しんだ。
そして日曜のオースティンではマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンが熾烈なバトルが繰り広げ、1時間34分36秒に及んだ56周のレースは僅か1.333秒という差でフェルスタッペンが制する白熱の結果を迎えた。グランドスタンドは湧き上がった。
ハミルトンはレース後「F1がアメリカに受け入れられたような気がする。何という素晴らしい場所なんだ。ここでレースができるのは本当に光栄な事だ」と語り、欧州ベースのオープン・ホイールが米国市場に浸透してきたとの考えを示した。
ABCネットワークで放送された決勝レースの視聴者数は122万5000人に達した。これは86万1,000人を記録した2019年の前回大会の1.42倍で、同じ時間帯に米国で最も高い人気を誇るNFLの番組が放送されていた事を踏まえてもかなり印象的と言える。
劇的とも言えるF1人気の高まりの背景には、Netflixで大成功を収めるF1ドキュメンタリー番組「Drive to Survive(邦題:Formula 1: 栄光のグランプリ)」の存在が度々指摘されている。
Netflix側は公表していないが、マクラーレンのザク・ブラウンCEOによると、この番組の視聴者数は今年既に、5,000万人を超えていると言うから驚きだ。
レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は「アメリカのファンがF1を支持してくれるのは素晴らしい事だ。Netflixに感謝したい。とは言え素晴らしいコンテンツがなければ良い番組にはならない。今日のレースは本当に素晴らしかったし、ファンはF1に魅了されていると思う」と語った。
「何という観客の数だ。ひょっとするとF1グランプリとしての世界記録を更新したかもしれない」
2016年9月に新たなオーナーとなった米メディア企業「リバティ・メディア」の下、F1は着実に米国市場を開拓してきた。2022年5月にはハード・ロック・スタジアム周辺に特設の市街地コースを作り、初のマイアミGPが開催される。米国で1シーズンに2回のグランプリが開催されるのは1984年以来、38年ぶりの事となる。
だが、将来的にはアメリカで年3回のレースが行われる可能性がある。候補として取り沙汰されているのはラスベガスだ。
これまでに1シーズンに3回のレースをホストした事があるのは2020年のイタリアと1982年のアメリカのみだが、米国での急激な成長を背景にラスベガスGPがカレンダーにカムバックするシーンを想像するのは難しくない。
グリッド唯一のF1チームであるハースが低迷し、米国出身のドライバーがいない状況にてこの有り様なのだから、可能性は潰えたとも見られているが、例えばアンドレッティがザウバーを買収してグリッドに加わり、米国モータスポーツ界のホープ、コルトン・ハータがステアリングを握るような状況になれば、熱は更に活気帯びることになるだろう。