
F1次世代パワーユニットは「V8回帰」へ。FIA会長、前倒し導入を推進
国際自動車連盟(FIA)の会長を務めるモハメド・ベン・スレイエムが、F1の次世代パワーユニット(PU)について、V8エンジンへの回帰は「時間の問題」だと主張した。導入時期は早ければ2030年、遅くとも2031年には実現するとしている。
2014年から続くV6ターボとエネルギー回生システムを組み合わせたパワーユニットを見直し、よりシンプルな構造への回帰を目指すという。標準コンポーネントの拡大と持続可能燃料の活用を、メーカーへのアピールポイントとする構えとみられる。
波紋を広げる’26年の新規則
2026年からF1では新たなPUレギュレーションが導入され、エンジンと電動モーターの出力がほぼ均等となった。だが、その複雑さとレーススタイルへの影響から、この変更は大きな物議を醸している。
予選からは限界ギリギリまで攻める全開アタックが姿を消し、レース中のマシン同士の著しい速度差などが問題視されている。
ドライバーや識者からの批判は根強い。特に、4度のF1王者マックス・フェルスタッペンは、繰り返し現行規則を批判しており、今季限りでF1を去る可能性があるとも認めている。
こうした事情から、開幕3戦終了後という段階で、すでに規則には変更が加えられており、2027年以降に向けた大規模な調整についても議論されている。
今回のV8回帰宣言の背景には、現行の規則へのこうした反発を踏まえ、次世代PUのコンセンサスを形成する狙いがあるものとみられる。
承認不要で実行可能なV8回帰
ベン・スレイエムは2026年第4戦マイアミGPの週末に、通信社『ロイター通信』とのインタビューの中で、V8エンジンへの回帰について「いずれにせよ2031年には実現する。V8は戻ってくる」と明言した。
もっとも、引き続きハイブリッドシステムを組み合わせたものではあるが、「電動要素はごくわずか」だという。
ホンダを含むPUメーカー各社の多額の投資を背景に、現行世代のPUは数年間にわたり維持される見通しだ。これを2030年に前倒しして導入するには、PUメーカー6社のうち、少なくとも4社の賛成が必要とされる。
だが次世代規則の初年度となる2031年からの導入であれば、FIAはPUメーカーの投票を経ずにレギュレーションを変更する権限を持つ。それでもベン・スレイエムは、2030年からの導入を推進する意向だ。
「我々はそれを1年前倒ししたいと考えている。今や誰もがそれを求めている」とベン・スレイエムは語った。
ベン・スレイエムが、持続可能燃料の使用を前提に、V8またはV10への移行を提唱したのは今回が初めてではない。ただ、自動車業界の電動化トレンドが数年前とは変化していることで、現在は以前よりメーカー側の抵抗が少なくなっているようだ。
V8回帰はF1に何をもたらすのか
2025年までの前世代PUの電動割合は20%に満たなかった。次世代PUでは電動割合がこれより増える可能性は高いものの、現行PUよりは低く、前世代の比率に近づく見込みだ。
V10ではなく、2006年から2013年までF1で使用されていたV8を選択肢とした理由について、ベン・スレイエムは「サウンドが良く、構造はシンプルで、さらに軽量だ」と説明した。
なお、F1の商業権を持つフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)のステファノ・ドメニカリCEOも、次世代レギュレーションの導入が前倒しされる可能性を示唆している。