FIA、マイケル・マシのF1レースディレクター退任の可能性認める…役割”分散”へ
国際自動車連盟(FIA)の新たなシングルシーター・ディレクターを務めるピーター・バイエルは、昨年末のF1最終戦、アブダビGPを巡る問題を受け、マイケル・マシのF1レースディレクター退任の可能性を認めた。
ヤス・マリーナ・サーキットでのレース最終盤、マシはタイトル争いを演じていたマックス・フェルスタッペン(Red Bull Honda)とルイス・ハミルトン(Mercedes)の間にいた周回遅れにのみラップバックを許可。残り1周でレースを再開させた。
レギュレーションはセーフティーカーの導入・解除に関する最終的な判断をレースディレクターに一任しており、スチュワードはこの判断を支持した。ただ同時に過去の慣例とは異る判断で、メルセデスとその母国、イギリスを中心に批判の声が上がり、現在も燻り続けている。
一件についてFIAはモハメド・ベン・スレイエム新会長の指揮の下、1月中旬に調査並びに分析作業を開始した。2月に開催が予定されているF1コミッションで暫定的な調査報告をまとめた後、3月18日にバーレーンで開催されるWMSCで最終報告が予定されているが、場合によってはマシに代わる新たなレースディレクターが誕生する可能性がある。
バイエルはオーストリア紙「Vorarlberger Nachrichten」とのインタビューの中でマシについて「多くの点で素晴らしい仕事をした」と評価し、FIAは続投を望んでいるとする一方で「新しいレースディレクターが誕生する可能性もある」と語った。
マシがレース再開を優先したのは、可能な限りグリーンフラッグ下でレースを終わらせるべきとのチーム側との合意に基づくものであった。バイエルはアブダビGPを経てなお、全てのチームがその合意の妥当性を認め、今後も同様の方針を貫くべきだとの考えを有している事を明かした。
また「レースディレクターは単にスポーツディレクターというだけでなく、セーフティー・デリゲートでもあり、トラック・デレゲートでもある。単純に多すぎだ」とも述べ、様々な職務を兼任するレースディレクターの役割を分割して複数の人間に分散させる等、現行のレースコントロール体制を見直す可能性に言及した。
「これらの役割を複数人で分担すれば、レースディレクターの負担を減らすことができる」
そして、レースディレクターの規約判断に関する遠隔支援を目的に、FIAのジュネーブ本部に「ミッション・コントロール」を設置してはどうかと提案した。
更にバイエルはレース中の無線コミュニケーションについて、「バッファ」を設ける事でチーム代表者からの”直接”の交信を禁止し、レースディレクターが仕事に集中できる環境を作り上げる方針を確認した。
アブダビGPを含む昨シーズンは、メルセデスのF1チーム代表を務めるトト・ウォルフとレッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーがマシに直接コンタクトを取り、各々にとって有利な判断がなされるよう幾度となく働きかけを行った。ウォルフはこの点について、自分が行き過ぎたと感じている事を認めた。
マシは急逝した前任のチャーリー・ホワイティングに代わって2019年のF1第1戦オーストラリアGPで同職代理を務め、2019年4月より正式にF1レースディレクターに就任した。