フェラーリF1、米国1-2の裏に”非公開”のアップグレード版フロントウイング
2024年10月20日のF1アメリカGPで、過去10年間において3度目の1-2フィニッシュを飾ったスクーデリア・フェラーリの力強いパフォーマンスの裏には、国際自動車連盟(FIA)に申告されていない非公開のアップグレードがあったようだ。
スクーデリアは新型フロアを含む改良パーツを導入したイタリアGP以降、明らかに競争力を増している。
モンツァで逆転勝利したシャルル・ルクレールは、バクーではオスカー・ピアストリに僅差で敗れて2位に甘んじた。続くシンガポールでは予選でのトラックリミットにより9番手スタートと後手に回るも、それでもレースでは5位にまで挽回した。
一方で、これらのサーキットはいずれも、フェラーリSF-24が持つ低速コーナーでのストロングポイントが活かせる場所だった。
そのため、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)でもフェラーリが再び、競争力を発揮できるかどうかが注目されていた。確かにオースティンにも低速区間はあるが、中高速コーナーも数多くあるバランスの取れたコースであり、そこでは通常、ライバルに対して遅れを取る傾向があった。
しかしながら、2列目を独占したスクーデリアは、タイトル争いを繰り広げるランキングトップの2台より優れたレースペースを発揮し、ミハエル・シューマッハとフェリペ・マッサが組んだ2006年のインディアナポリスGP以来、米国での初の1-2を飾った。
レッドブルとマクラーレンがともに、フロアを含むアップグレードをアメリカに持ち込んだ一方、フェラーリはFIAに何も変更を申告していない。しかしながら、伊FORMULA.UNOによると、SF-24には新しいフロントウイングが搭載されていた。
基本形状がシンガポールGPで既に持ち込まれていたものと変わらなかったため、申告は不要であったものの、C/Cコンポジット材による製造方法を見直すことで柔軟性を進化させたこのウイングは、高速域での空力効率を向上させた。
実際、56周のレースを通して、高速のS字区間を擁するセクター1で誰よりも速いラップを刻んだのはルクレールだった。予選ではこれを得意とするレッドブルが最速をマークしたが、2番手はカルロス・サインツだった。
シンガポールでの新型ウイングの導入を経てフェラーリは、10月の上旬にムジェロで行われたピレリのタイヤテストを使って2つの仕様のウイングを比較。最適化を進めたようだ。
チームに近い関係者によれば、この米国仕様のウィングは「非常に大きな効果」をもたらし、サインツはすぐに好感触を得たが、ルクレールは新しいバランスに適応するのに少し時間を要したという。
しかしながら、スプリントレースを経て行われたセットアップ調整が功を奏し、SF-24は少なくともCOTAの高速コーナーで性能を大幅に向上させつつ、依然として低速セクションでも安定したパフォーマンスを見せた。
フレキシブルウイングで先行すると見られているのはマクラーレンとメルセデスだ。現行のグランドエフェクトカーは低速域でアンダーステア、高速域でオーバーステアに見舞われる特徴があり、柔軟性を持つフロントウイングはこの問題を解決し得るソリューションと見なされている。
フェラーリはレッドブルと並び当初、両チームのフロントウイングの合法性について明確な指針と対応を求めたが、FIAが許容するスタンスを示したため、これを追従したものと見られる。
米国での1-2を経てルクレールとサインツは、コンストラクターズタイトル獲得に向けた意欲を示した。全チーム最多となる43ポイントを稼ぎ出したことでフェラーリは、2位レッドブルとの差を僅か8ポイントにまで詰めた。
一方で首位マクラーレンとは依然として48ポイント差があり、逆転は決して簡単ではないものの、フェラーリがそれを可能だと信じること自体は理解できる。