フェラーリ、”半減”したレッドブルF1との差とベアマンの初陣入賞が意味するもの
F1第2戦サウジアラビアGPの表彰台に上がったチームは、その並びを含めて開幕戦と変わらなかった。マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスはレッドブルに再び1-2をもたらし、3位にはフェラーリが続いた。
しかしながらレッドブルとフェラーリのギャップは半減した。バーレーンGPではカルロス・サインツが39.669秒遅れで3位フィニッシュしたが、サウジアラビアではシャルル・ルクレールが18.639秒遅れで表彰台に上がった。
「この6、7ヶ月間で最も改善したチームは僕らだ」とルクレールは語った。
「そして徐々にギャップを縮めている。差はまだかなり大きいけど、この調子で仕事を続けていけば、レッドブルにもう少しプレッシャーをかけられるのは時間の問題だと確信してる」
フェラーリが2番目に速いチームである事はオリバー・ベアマンの活躍からもうかがえる。
虫垂炎と診断されたカルロス・サインツの代役として急遽、FP3以降のセッションでSF-24をドライブしたイギリス人ドライバーは、予選でルイス・ハミルトン(メルセデス)をQ2敗退寸前にまで追い込んだ。
ハミルトンはベアマンのパフォーマンスに感銘を受けたとする一方、「クルマがかなり良いという事も明らかになった」と述べ、SF-24のポテンシャルの高さを指摘した。
レースでもパドックの称賛を呼ぶ走りを披露した。角田裕毅(RB)や周冠宇(ザウバー)を含む先輩ドライバーを次々と抜き去り、7位フィニッシュを果たして6ポイントを獲得した。
これによりベアマンは、1970年のイニャツィオ・ジュンティとクレイ・レガツォーニ、1972年のアルトゥーロ・メルツァリオに次いで、フェラーリでF1デビュー入賞を果たした4人目のドライバーとなり、F1ドライバーズ選手権10位に浮上した。18歳305日でのデビューは跳馬史上最年少となった。
一方で、代役参戦により欠場を強いられたFIA-F2選手権の開幕戦はむろん、ノーポイントとなりランキング最下位に沈んだ。
ベアマンを褒め称える言葉は尽きないが、当然のことながらフェラーリのポテンシャルを全て引き出せたわけではない。特に、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の攻略には多大な時間を費やした。サインツであれば軽く交わしていた事だろう。
ベアマンは「ヒュルケンベルグをオーバーテイクするのにかなりの時間を使ってしまった。彼はその経験を生かして必要以上に僕を抑え込み続けた」と振り返る。
「彼はERS(回生エネルギー)を適切な場所で使っているように見えたし、僕は間違った場所で使っているように思えた」
それでもベアマンはレース終盤、ランド・ノリスとルイス・ハミルトンという2人の強者を寄せ付けない走りを見せた。一度でもミスをすれば追い抜かれる恐れがあったが、それは杞憂だった。
この活躍についてチーム代表を務めるフレデリック・バスールは「熟練ドライバーのようだった」と評し、ルクレールは、レギュラー契約は「時間の問題」と語った。
フェラーリがレッドブルに40秒遅れたバーレーンは、コース特性的にリアタイヤのデグラデーションがボトルネックとなる。サウジアラビアはこの限りではない。レッドブルのグランドエフェクトカーの優位性の1つはタイヤに優しい事だが、サウジアラビアではこれがアドバンテージとはならない。
ジェッダでレッドブル勢に対してフェラーリが劣っていたのは何処なのか? そう問われたルクレールは「デグラデーションは問題なかった」と語った。
「それよりもタイヤのウォームアップの方が問題で、プッシュのために適切な温度まで持っていくのに少し苦労したんだ。彼ら(レッドブル)の方が早くウォームアップできたようで、それによってギャップを広げられてしまった。そしてその差は最後まで変わらなかった」
次戦オーストラリアGPでは更なる前進が期待できるのだろうか?
メルボルンでのクルマのアップグレードは、あったとしてもかなり限定的になるとの見通しを示したうえでルクレールは、今はパッケージから最大限のパフォーマンスを引き出す事が重要で、その点において「良い仕事ができていると思う」と述べ、次の改良によって更にレッドブルに接近できる事を期待していると語った。