経験した事がない…フェラーリF1エンジンの飛躍ぶりに驚くV6王者メルセデス
メルセデスのトト・ウォルフ代表はスクーデリア・フェラーリのパワーユニット(PU)が昨年から今季にかけて「飛躍的」な改善を果たしたとして、そのゲインはV6ハイブリッド・ターボ時代を支配してきたメルセデス自身が「これまでに達成した事がない」水準にあると指摘した。
イタリアの名門チームは昨年までタイトル争いの蚊帳の外に置かれていたが、E10燃料やグランドエフェクトカーの導入を含む新たな技術規定において最速・最強マシンを作り上げた。
開幕3戦を終えてフェラーリとシャルル・ルクレールは両チャンピオンシップで支配的なリードを築き上げ、エンジン供給先のハースとアルファロメオもコース上でのパフォーマンスレベルを大幅に引き上げた。
メルセデスの指揮官はSky Sportsとのインタビューの中で「昨年から今年にかけてフェラーリは飛躍したように思う」と述べ、マラネッロ製のPUが今季のベンチマークだと指摘した。
「10kw(約13.6馬力)ダウンだったものが10kwアップしたように思う。これは我々がこれまでに達成した事がないレベルだ。もしそうであるならば、これは彼らの功績だ」
前年比での改善幅としてウォルフは、ブリックスワースのメルセデスF1エンジン部門が過去に成し遂げた事がない水準にあると指摘したが、第5戦マイアミ、あるいは第6戦スペインGP以降、そのゲインは更に拡大する可能性がある。
フェラーリは依然として信頼性に関するデータ収集のためにPUをフル稼働させておらず、2基目のICE投入とともに追加で10馬力を開放する意向だと伝えられており、合わせての導入が予定されている新型ハイブリッドによってライバルとの差は更に広がる可能性がある。
なお車体側としては、地元イモラにマイナーアップデートとして最新スペックのフロアを持ち込む見通しで、レッドブルの成功を受けてポーパシングの解決のために新型リアサスペンションを開発中とも噂されている。バーレーンで導入されたアップグレードによって英国ミルトンキーンズのチームは約コンマ5秒を稼ぎ出したとの見方がある。
フェラーリが新時代のF1で力強い一歩を踏み出したのとは対照的に、V6ハイブリッド・ターボ時代の絶対王者として君臨していたメルセデスはレギュレーションの刷新によって大きく競争力を落とした。
ウィリアムズやアストンマーチンを含めたカスタマーチームが同じ様に軒並み後退した事から、メルセデスがE10燃料への対応に失敗したのではとも囁かれているが、ウォルフはこの点について問われると、マシンのドラッグ(空気抵抗)がPUの真の実力を覆い隠しているのだと強調した。
メルセデスが抱えている主な問題がポーパシングである事は広く知られており、同時にレッドブル並みとも取り沙汰されている車体重量も解決すべき課題の一つだが、次戦エミリア・ロマーニャはスプリントフォーマットが適用されるためフリー走行の時間が少なく、フェラーリやレッドブル同様に、メルセデスにメジャーアップグレードを持ち込む計画はない。
メルセデスは開幕3戦を終えて65点をかき集めランキング2位につけているものの、首位を走るフェラーリとの差は39ポイントと大きく開いている。カルロス・サインツがオーストラリアで完走していれば、その差はこの程度では収まらず、レッドブル勢の3度に渡るリタイヤがなければ2位もあり得なかった。
ウォルフはシーズン序盤にして早くも、前人未到のコンストラクターズ選手権9連覇の望みが潰えかけていると認めている。