角田裕毅とピアストリの接触事故、若手と熟練ドライバーの目にはどう映った?
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角田裕毅(アルファタウリ)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)との接触事故についてF1メキシコGPのスチュワードは「完全に、または圧倒的に責任があるドライバーはいない」としてお咎めなしの裁定を下した。ではドライバー目線にはどのように映ったのだろうか?
両者はレース中盤に向け、1秒以内の抜きつ抜かれつの肉弾戦を12周に渡って繰り広げた。接触は少なくとも3度に渡ったが、問題視され、調査が行われたのは2件だった。
Contact with Piastri leaves Tsunoda's car and head in a spin 😵💫#F1 #MexicoGP pic.twitter.com/GsGTON5qb5
— Formula 1 (@F1) October 31, 2023
中でも、残り23周を迎えたターン1でのインシデントは、接触により角田裕毅がハーフスピンを喫してフィールド後方に転落した事から、より注目される事となったが、ジャック・ドゥーハンはその1周前の小競り合いに注目した。
FIA-F2選手権に参戦するアルピーヌのリザーブ・ドライバーはF1 TVの中で、好結果が望める状況であっただけに残念だと繰り返した上で、ターン1での一件の1ラップ前に間接的な要因があったのではと指摘した。
「本当に残念だ。7位か8位になれただろうに」とドゥーハンは語る。
「昨日のユーキはダニエル(リカルド)と遜色ないペースを見せていた。速さでは及ばなかったかもしれないけど、Q3進出に足るものだった。だから今日は力強いレースをするだろうと思っていた」
「彼は本当に上手くコントロールして、焦ることなく、かなりの速さをみせていた。そしてピアストリに対するあの動きがあった」
「その前の周で(ピアストリと)接触した事で、少し感情が高ぶっていたのかもしれないね。残念だよ」
スピンを喫してコース外に飛び出す前のラップのターン1で角田裕毅は、同じ様にアウト側から大外刈りを狙ってターンインするも、ターン2に向けて半車身分のスペースしかなく、ピアストリの左リアと接触する場面があった。
2016年のインディ500ポールシッターで6度のインディカー優勝経験を誇るジェームズ・ヒンチクリフはドゥーハンの見解に同意し、スピンへと至った事故については角田裕毅に「紛れもなく」落ち度があったとの見方を示した。
「ジャックが指摘したような部分があったんだと思う。前のラップでオスカーが彼を少し追いやって、その後、2人はターン2で接触した」と36歳のカナダ人ドライバーは語る。
「それでも最終コーナーを抜けたら、それに関してはすぐに忘れなきゃならない。でもユーキは明らかに、その感情を少し残したままだった」
「そしてあの接触が起きた。あれは紛れもなくユーキの過失だ」
「最終的には、ここのターン1が彼をレースから除外したわけだが、彼はブレーキを踏んだ後、ターンインのポイントを前に曲がり始めた。オスカーに行き場はなかった」
ピアストリは角田裕毅を非難することはなかったが、「ブレーキングゾーンであんな風に右に寄ってくるとは思ってもみなかった」と述べ、コーナーへのアプローチに疑問を呈した。
ヒンチクリフはまた、コースアウトした後に角田裕毅がステアリングから両手を離して身振り手振りでフラストレーションをあらわにしたシーンに注目した。
「彼の手を見てほしい。彼の手はステアリングの上になかった。レースに戻る時間だというのに。激怒していたんだ。無線での内容は当然、予想されたものだった。チームは彼に落ち着けと声をかけていた」
「彼はメンタルコーチと共に(感情のコントロールに)取り組んできたと言っていた。その成果を我々は目にしてきた。それでも僕は、彼がこの点に関してもっと取り組まなきゃならないという事を分かっていると思う」
メキシコでの結果は角田裕毅にとってはもちろんだが、600名近い従業員達にとっても大きな失望となった事だろう。ピアストリを追い抜かずとも、ポジションを守り切るだけでアルファタウリは、アルファロメオに4点差をつけ引き離し、7位ウィリアムズとの点差を8点に縮める事ができた。
シーズン全体を見渡す俯瞰的な視点を持ち、個人的な願望や感情に囚われることなくレースに集中しなければ、チームの欲求不満をまねくとヒンチクリフは考えている。
「彼が今日ポイントを得ていれば、アルファタウリをアルファロメオから遠ざける事ができたはずだ。だが実際には、あの一件によってアルファロメオと同ポイントに留まった」とヒンチクリフは指摘する。
「確かに選手権争いのテーブルで最下位から脱出はしたが、(角田裕毅がポイントを持ち帰っていれば)遥かに良かっただろう。そしてそれは最終的に、今日のアルファタウリにとってのフラストレーションになると思う」
赤旗からのリスタートに際しては、角田裕毅が全20台の中で唯一、新品のハードタイヤに履き替えた一方、ピアストリは中古のミディアムを履いた。タイヤ的なアドバンテージは角田裕毅にあった。
スプリントを含め、アメリカGPの週末が特に顕著であったように、ルーキーのピアストリは僚友ランド・ノリスとは異なり、レースペースとタイヤマネジメントに課題を抱えている。
終盤のペースダウンを待ち、リスクを抑えてオーバーテイクする方法もあったはずだが、角田裕毅はタイヤの感触が悪くなってきたため「できるだけ早く追い抜きたかった」と説明した。
ヒンチクリフの予想通り、チーフ・レースエンジニアを務めるジョナサン・エドルズは「彼が少しばかり、しきりにピアストリを追い抜こうとしていた事は残念だった」と述べ、少なからず不満を漏らした。