カメラのフラッシュを浴びる小林可夢偉
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一番速いのは誰?歴代日本人F1レーサー最速ランキングTop9

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これまでにF1を走った日本人レーサーは全部で19名。その内F1フル参戦を果たしたのは中嶋悟、鈴木亜久里、片山右京、井上隆智穂、中野信治、高木虎之介、佐藤琢磨、中嶋一貴、小林可夢偉の9名で、2021年には角田裕毅がこの顔ぶれに加わる。

世界三大レースの1つに数えられる世界最高峰レースの1つ、2017年第101回インディ500で佐藤琢磨がアジア人初優勝の快挙を飾ったが、残念ながら未だF1で勝利した日本人ドライバーはいない。歴代の日本人F1ドライバーの中で、最もF1で速かったのは誰なのだろうか?

一言で「速い」と言ってもその基準は様々。1発の速さを比べるなら予選順位、安定した速さを比べるなら入賞率等を参照することになるだろう。

ただし技術開発競争をDNAとする非ワンメイクのF1では、乗っているマシンの戦闘力がなんぼ。如何に優れた腕があろうが、後方チームのマシンではチャンピオンシップはおろか、優勝争いすら厳しい。そういう意味では本当の”速さ”を測るのは不可能とも、ナンセンスとも言える。

事実、英シェフィールド大学の研究によれば、F1においてはドライバーの実力よりもチームの実力が結果を大きく左右する事がデータ上で証明されており、チームの影響力はドライバーの影響力の6倍と試算されている。誰が速いかを決するのは中々に難しい。

しかしながらそんな事を言い始めてるとキリがないので、ここでは以下の観点で順位を決め打ちしてみる事にした。

  1. 決勝での最高順位
  2. 予選での最高順位
  3. 入賞率

決勝順位で決まらない場合は予選順位で、予選順位でも決しない場合には入賞率で順位を決定した。評価はF1での成績のみを対象とし、他カテゴリでのそれは除外している。

なお、入賞の定義は時代によって異なるため、2010年以降の入賞定義に従って10位以内を入賞としデータを補正した。あくまでも参考程度にご覧頂きたい。

1位:小林可夢偉

2012年F1日本GPで表彰台に上がった小林可夢偉とザウバーチームの面々
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最も速い日本人F1レーサーに選出されたのは小林可夢偉(こばやしかむい、1986年9月13日-)。決勝最高順位は3位、予選最高位は2位と、佐藤琢磨と並んだため、入賞率の高い可夢偉が1位に輝いた。

可夢偉は日本の自動車メーカーの後ろ盾なくF1を戦ったドライバーであり、日本人として初めて持参金なしにレースドライバーの座を射止めたと言われる。あのミハエル・シューマッハですら、持参金を持ち込んでF1デビューを果たしている。

入賞率が30%を超えたのは、可夢偉と後述する中嶋悟の2人のみ。

決勝最高位 3位…2012年日本GP
予選最高位 2位…2012年ベルギーGP
入賞率 36.0%
入賞回数 27回
ランキング最高位 12位…2010~12年(ザウバー)
GP出走回数 75回
総獲得ポイント 125

2位:佐藤琢磨

佐藤琢磨
©FollowAndretti

入賞率の差で惜しくも2位になったのは佐藤琢磨(さとうたくま、1977年1月28日-)。”No attack No chance”のモットーが裏目に出たか、25.0%の入賞率は中嶋悟、小林可夢偉、中野信治に次ぐ4位の記録。

世界のトップドライバーは幼少期からレースキャリアを歩み始めるのが一般的だが、琢磨は20歳を超えてからレースの世界に足を踏み入れ、40歳にして世界最高峰のインディ500を制した。この快挙によって、琢磨はレーサーとして初めて内閣総理大臣顕著を授与された。

決勝最高順位 3位…2004年アメリカGP
予選最高順位 2位…2004年ヨーロッパGP
入賞率 25.0%
入賞回数 23回
ランキング最高位 8位…2004年(B・A・R)
GP出走回数 92回
総獲得ポイント 44

3位:鈴木亜久里

鈴木亜久里
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日本人としてのみならず、アジア人として初めてF1の表彰台に上がった鈴木亜久里(すずきあぐり、1960年9月8日-)が第3位。亜久里は、F1絶頂期の日本GPで3位表彰台を獲得。ファンが再び日本GPで日本人の表彰台を見ることができたのは、22年も後の事だった。

決勝最高位 3位…1990年日本GP
予選最高位 6位…1993年ベルギーGP
入賞率 23.6%
入賞回数 17回
ランキング最高位 12位…1990年(ローラ)
GP出走回数 72回
総獲得ポイント 8

4位:中嶋悟

中嶋悟
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第4位に輝いたのは、日本人で初めてフルタイムのF1ドライバーとなった中嶋悟(なかじまさとる、1953年2月23日-)。アイルトン・セナやネルソン・ピケと言ったF1ワールドチャンピオンをチームメイトに迎えF1を戦った強者。

自身決勝最高位を記録した89年のオーストラリアGPでは、豪雨の中で予選23番手から見事なドライビング・テクニックを披露し4位を獲得、「雨の中嶋」は世界中から高い評価を受けた。

決勝最高位 4位…1987年イギリス/89年オーストラリア
予選最高位 6位…1988年メキシコ/日本
入賞率 36.5%
入賞回数 27回
ランキング最高位 12位…1987年(ロータス)
GP出走回数 74回
総獲得ポイント 16

5位:片山右京

片山右京
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日本人の中でF1最多出場記録を持つ片山右京(かたやまうきょう、1963年5月29日-)が5位にランクイン。そのアグレッシブなドライビング・スタイルから「カミカゼ・ウキョウ」と呼ばれることもあった。入賞率は16%とさほど高くないのも、攻撃的なドライブあってこそ。

当ランキングでは5位となったものの、ファンの中には、片山右京を最速のF1ドライバーに挙げる者も少なくないだろう。

決勝最高位 5位…94年ブラジル/サンマリノ
予選最高位 5位…94年ドイツ/ハンガリー
入賞率 16.0%
入賞回数 15回
ランキング最高位 17位…1994年、96年(ティレル)
GP出走回数 94回
総獲得ポイント 8

6位:中嶋一貴

中嶋一貴
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6位に名を連ねたのは中嶋一貴(なかじまかずき、1985年1月11日-)。父の中嶋悟には一歩及ばなかった。F1での成績はあまりパッとしなかったが、F1引退後のスーパーフォーミュラやWEC(世界耐久選手権)での一貴の走りには、ずば抜けた安定感と速さがあり、世界トップレベルと言っても過言ではない程の成長ぶりを見せている。

決勝最高位 6位…2008年オーストラリアGP
予選最高位 5位…2009年イギリスGP
入賞率 13.8%
入賞回数 5回
ランキング最高位 15位…2008年(ウィリアムズ)
GP出走回数 36回
総獲得ポイント 9

6位:中野信治

中野信治
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決勝最高順位は5位の中嶋一貴と並んだものの、予選順位の差で6位に甘んじた中野信治(なかのしんじ、1971年4月1日-)。日本人5人目のF1レギュラードライバーである中野信治は、世界三大レース(F1モナコGP、インディ500、ル・マン24時間)の全てに出場した初めての日本人ドライバーとしても知られている。

入賞率27.2%は中嶋悟、小林可夢偉に次ぐ3位の記録。F1での中野信治は、チーム事情に翻弄され、その実力を存分に発揮出来たとは言い難い状況にあった。歯車さえ噛み合っていれば、もっと好成績を残していたのではないだろうか。

決勝最高位 6位…1997年カナダ/ハンガリー
予選最高位 12位…1997年フランス
入賞率 27.2%
入賞回数 9回
ランキング最高位 18位…1997年(プロスト)
GP出走回数 33回
総獲得ポイント 2

7位:高木虎之介

高木虎之介
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7位にランクインしたのは高木虎之介(たかぎとらのすけ、1974年2月12日-)。1998年にティレルからF1デビューを果たすも、同年末でティレルは解散、アロウズに移籍した99年のオーストラリアGPで決勝最高順位7位をマークした。

決勝最高位 7位…99年オーストラリア
予選最高位 13位…98年オーストラリア/アルゼンチン
入賞率 9.3%
入賞回数 3回
ランキング最高位 20位…1999年(アロウズ)
GP出走回数 32回
総獲得ポイント 0

8位:井上隆智穂

井上隆智穂
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日本の自動車メーカーからの支援を受けずに初めてF1を走った井上隆智穂(いのうえたかちほ、1963年9月5日-)が8位となった。井上は、95年に日本人4人目となるF1フル参戦を果たし、同年のイタリアGPで8位を記録した。

決勝最高位 8位…95年イタリア
予選最高位 18位…95年スペイン/フランス/ハンガリー/ベルギー
入賞率 10.1%
入賞回数 2回
ランキング最高位 24位…1995年(フットワーク)
GP出走回数 18回
総獲得ポイント 0

無理矢理にでもランキングを作成してみて分かったのは、持参金やメーカーサポートの有無とは関係なしに、どのドライバーも世界トップレベルの実力を持っていた、という当たり前の事実だ。フル参戦した9人全員が10位以内の入賞記録を持ち合わせている。世界と渡り合えるだけの力がなければこんな事は成し得ない。

「一体誰が一番速いのか?」という論争は、これからも永遠に続いていくことだろう。 あなたは誰を、F1最速日本人レーサーに選びますか?