
F1トルコGPが2027年より復帰、5年契約で蘇る伝説のターン8。再契約の理由とは
F1は2026年4月24日、2027年から2031年までの5年間にわたり、トルコGPがカレンダーに復帰すると発表した。舞台は、F1ファンの間で屈指のテクニカルコースとして語り継がれるイスタンブール・パーク・サーキットだ。
トルコ青年・スポーツ省との間で新たな契約が結ばれ、トルコ自動車スポーツ連盟(TOSFED)がF1の現地デリバリーパートナーを務める。
トルコGPが最後に開催されたのは2021年。新型コロナウイルス感染症の影響によるカレンダー変更に伴うスポット開催だった。2005年の初開催から数えれば、同地は計9回のF1開催実績を持つ。5年契約での本格復帰は、一時的な代替開催とは性格を異にする。
「ターン8」だけじゃない、伝説のコース
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夕焼けの中のイスタンブール・パーク・サーキットを走行するスクーデリア・フェラーリSF1000、2020年F1トルコGP フリー走行2にて
イスタンブール・パークというコースの魅力を語るうえで、必ず名前が挙がるのが「ターン8」だ。
下り勾配で加速しながら抜けていく、マルチ・エイペックスの超高速左コーナー。長く緩やかに曲線を描くその形状は、ドライバーにスピードとバランスを維持する卓越した精密さとコミットメントを要求する。
F1マシンがここを駆け抜ける姿は、モータースポーツの中でも特別な光景として刻まれてきた。
ただし、ターン8だけがスポットライトを独占するわけではない。全長5.33kmのレイアウトには劇的な高低差が随所に織り込まれ、ドライバーの技量とマシン性能の双方を試す。
左コーナーのターン1は、米ラグナ・セカの著名コーナー「コークスクリュー」を彷彿とさせるほど鋭く落ち込んでいく。
その後には長いバックストレートが続き、ターン12への進入は有数のオーバーテイクポイントとして知られる。中速・低速コーナーも適度に配置され、セットアップとドライビングの両面でテクニカルな挑戦を突きつけるコースだ。
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イスタンブール・パーク・サーキットのホームストレートとグランドスタンド、2020年F1トルコGP
F1ファンの間では、イスタンブール・パークはしばしばブラジルのインテルラゴス・サーキットや、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットと並び称される。この2コースと肩を並べるという事実が、イスタンブール・パークの格を物語る。
過去のレースも、劇的な記憶を残してきた。2006年大会では、当時の世界王者ミハエル・シューマッハとフェルナンド・アロンソが激しいバトルを繰り広げ、わずか0.081秒差でアロンソが王者を下した。
2010年大会では、当時レッドブルのチームメイトだったセバスチャン・ベッテルとマーク・ウェバーが、ターン12への進入で派手な接触を演じて話題をさらった。
ハミルトン7冠の地、現役の優勝経験者
イスタンブール・パークは、近年のF1史においても重要な舞台となってきた。
2020年のトルコGPで優勝したのは、ルイス・ハミルトンだ。このレース制覇によって、ハミルトンは自身7度目のドライバーズ選手権を確定させ、歴代最多タイ記録を持つミハエル・シューマッハに並んだ。
最後に開催された2021年大会を制したのはバルテリ・ボッタスだ。偶然にもイスタンブール・パーク復活のタイミングは、同コース最後の勝者がフルタイムドライバーとしてF1パドックに戻った直後と重なる格好となった。
現役ドライバーの中でトルコGPでの優勝経験を持つのは、ボッタスとハミルトンのみだ。
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イスタンブール・パーク・サーキットの表彰台で優勝トロフィーを掲げるメルセデスのバルテリ・ボッタス、2021年10月10日F1トルコGP決勝レースにて
歴代最多勝利は、2006年から2008年にかけてフェラーリで3連勝を飾ったフェリペ・マッサが保持する。他に同コースで優勝経験を持つのは、キミ・ライコネン、セバスチャン・ベッテル、ジェンソン・バトンと、いずれも歴代世界王者だ。
そして、ランス・ストロールにとっては、現時点で唯一のF1ポールポジションを獲得した地でもある。
ファン1,900万人、成長続くトルコ市場
F1はなぜこのタイミングでトルコ復帰を決断したのか。その答えは、単にオランダGPが今季限りでカレンダーから姿を消し、バルセロナがスパとの交互開催へ移行することで空き枠が生まれたから、というだけではない。それは、同国におけるこのスポーツの成長ぶりにも明確に表れている。
トルコには、F1ファンが1,900万人以上存在すると発表されている。SNSのフォロワー数は750万人を超え、インスタグラムのフォロワーは前年同期比で25%増加、YouTubeの視聴回数は107%増という成長を見せている。
F1にとって、トルコは”過去の開催地”ではなく、今なお急速に拡大し続ける市場という位置づけだ。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
オープニングラップのターン1でスピンを喫してコース外に飛び出たフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)を抜き去る角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)、2021年10月10日F1トルコGP決勝レースにて
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、発表にあたり次のように述べた。
「F1は、そのスペクタクル、若いファン層、そして自動車技術におけるリーダーシップによって特徴づけられる世界有数のスポーツイベントの1つだ。我が国でもF1は全世代、特に若者の間で広い支持を集め、真に熱狂的なファン層を持つ」
F1の最高経営責任者を務めるステファノ・ドメニカリは、イスタンブールの地政学的価値に言及した。
「都市としてのイスタンブールは、ヨーロッパとアジアの文化的な玄関口であり、歴史と伝統を、スポーツ、ビジネス、エンターテインメントへの前向きなアプローチと独自に融合させる場所だ」
さらに、エルドアン大統領、青年・スポーツ省、文化観光省、そしてトルコ自動車スポーツ連盟の支援に謝意を表した上で、次のように述べた。
「イスタンブール・パークでは、F1史において多くの記憶に残る瞬間が生まれてきた。我々のパートナーシップの次章を始められることを楽しみにしている」
FIA会長を務めるモハメド・ベン・スレイエムは、「トルコの復帰は、我々のスポーツが世界的に成長し続け、魅力を広げ続けていることを力強く反映するものだ」とコメントし、イスタンブール・パークがF1史に特別な地位を占めるコースだと強調した。
TOSFED会長のエレン・ユチェルトプラー氏によれば、2027年のレースに向けた準備はすでに着々と進められている。