1億6千万円への罰金増額、ドライバーに混乱と驚きと批判…中には”夜逃げ”宣言のベテランも
F1スチュワードが科す事ができる罰金の上限額が25万ユーロから100万ユーロ(約1億5,830万)に引き上げられた事を受け、F1アメリカGPの開幕を前にドライバーの間で困惑と驚きが広がっており、一部には批判の声も上がっている。
これはアメリカGP開幕前日にジュネーブで行われた世界モータースポーツ評議会(WMSC)にて承認されたルールで、規定違反または各競技会のスチュワードの命令に従わないチーム、協議関係者、オーガナイザー等を対象としている。
当然、ドライバーもこれに含まれるが、100万ユーロもの大金を支払う事ができる高給取りはルイス・ハミルトン(メルセデス)を含むF1ワールドチャンピオン経験者など、かなり限られるだろう。
2019年のデビューから数えて4年目のアレックス・アルボンは、キャリア4年目までのF1ドライバーの給料は「みんなが思っているほどの額じゃないと思う」として、罰金が科された場合は「借金を背負う」事になりかねないと警告した。
GPDA(F1ドライバー組合)ディレクターのジョージ・ラッセル(メルセデス)は「F1での最初の年に僕は5桁の給料を貰っていたけど、トレーナー代や飛行機代、アシスタント代の費用がかさんで、実際には1年目で6桁以上の損失があった。多分、グリッドの25%はこれに当てはまると思う」として「かなり馬鹿げている」と付け加えた。
「僕らは好きなことをやっているわけで、文句を言うつもりはないけど、1年目のドライバーを例にすれば、おそらく年末までに10万ユーロ以上の損失が出ているはずで、こんな状態で100万ユーロの罰金を科されたら、どうなるか分かったものじゃない」
ラッセルはまた、罰金の使徒や用途について以前、国際自動車連盟(FIA)に問い合わせたものの未だ返答がないとして、統括団体に「透明性」を要求した。
日本円にして90億円とも推定される高額年俸者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、2021年にハミルトンのマシンのリアウイングに触れて罰金が科された事に触れて「リアウイングに触れて5万なら、何をしたら100万が科されるのか知りたいところだね」と語った。
年に30億円以上を稼ぐと見られているシャルル・ルクレール(フェラーリ)も「一体、何が100万ユーロのペナルティになるのかサッパリだけど、それ以下の収入のドライバーもいるわけだし…」と困惑した様子を見せた。
F1における罰金の最たる例はピットレーンでの速度違反だが、レギュレーションで最高1000ユーロに制限されているため100万ユーロには程遠い。
2014年のデビューから数えて9シーズン目を迎えるベテランのケビン・マグヌッセン(ハース)は「馬鹿馬鹿しい話だと思う。シャルルは自分の時計を差し出すだけで良いだろうけど、僕は姿を消すだろうね。二度と見つからないように」と批判的だった。
復帰戦を迎えるダニエル・リカルド(アルファタウリ)は「初めて聞いたよ。よく分からないし、怖い!」と語った。
ハミルトンも「初めて聞いた話だ」とした上で、「もし100万ユーロの罰金を科すつもりなら、その100%が大義のために使われるようにしようよ。この業界には多額の資金が飛び交っているけど、アクセシビリティや多様性、機会均等といった観点で僕らがやるべき事は多い。もし僕から100万ユーロを取るなら、そうするのが唯一の方法だ」と意見した。