F1ドライバーから挙がる”エイペックス規定”の修正要求、角田裕毅は「AIレース化」を危惧
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F1アメリカGPで、ランド・ノリスがマックス・フェルスタッペンをオーバーテイクした際に5秒ペナルティを受けたことで巻き起こった議論は、メキシコGPの開幕を翌日に控えたエルマノス・ロドリゲス・サーキットのパドックでも続いていた。
ノリスはターン12のランオフエリアからフェルスタッペンを抜いて3位でチェッカーを受けたが、コース外に出て「持続的なアドバンテージを得た」とされ、最終4位に降格した。マクラーレンはペナルティを覆すべく、再審請求権を行使しており、メキシコGPの初日に聴聞会が行われる。
表彰台を奪われたレースから3日を経てノリスは、ルールの明確化を求めて国際自動車連盟(FIA)に問い合わせを行っていることを認める一方、「公にする必要があるようなものじゃない」として、詳細を明かさなかった。
しかしながら同時に、あのペナルティに関する公での議論は必要との認識を示し、「将来に向けて何が許されて、何が許されないのかを明確にする必要があると思う」と語った。
「エイペックスで先行したという裁定上有利な事実を得るために、ブレーキングを遅らせてコーナーの出口でコースアウトしてもよいというのは間違っている。レースが、そういうものであっていいとも思わない」
「ただ、それが今のルールだから、それに従わなきゃならない。だから、少し修正が必要だと思う」
デレク・ワーウィックを含む4名の競技審判団がノリスにペナルティを科した要因として挙げたのは、エイペックスでノリスがフェルスタッペンと同一線上に到達していなかった点だった。
しかしながらマクラーレンは、フェルスタッペンがエイペックスでノリスに先行したのは、コース内に留まってコーナーを曲がる意思がなかったためだとして、エイペックスでの両車の位置関係を重要な証拠として裁定を下すべきではないと主張している。
一方のフェルスタッペンは、「ただルールに従っているだけだ」と反論した。
「結局のところ、白線の外での追い越しは許されていない。これは明確なルールであって、僕も過去にそれが原因でペナルティを受けた。だから、今になって突然、ルールの変更を声高に求めるのか理解できない」
「カートやF3だって、白線の外側からオーバーテイクしてはならないわけで、そういう環境で僕は育ってきた。それだけのことだよ」
一件の判断のベースには、一般公開されていない「FIAドライビング標準ガイドライン」があった。これは、ドライバーがどのようにレースに臨むべきかについて記した指針で、スチュワードが一貫した判定を下せるよう2022年に導入され、今季に向けてさらに多くの項目が追加された。
同じくアメリカGPのターン15でアレックス・アルボンをコース外から追い抜いたとして、5秒ペナルティを受けたピエール・ガスリー(アルピーヌ)は、エイペックスの位置関係を裁定の証拠とする現在のガイドラインを変更する必要があると訴えた。
「僕が思うには、ルールをひとつ、変更する必要がある。それは『エイペックスで前輪が最初に到達した方が優先権を持つ』というものだ」
「その時点でどれだけクルマをコントロールできていたかという視点が必要だと思う。そうでないと、最終的にはエイペックスで先行するためだけに、コーナーを曲がれなくとも突っ込むような状況が生まれてしまい、別の問題が生じてしまうからね」
「現状では、このルールを尊重する必要があるけど、改善点があるのは明らかで、今後はもっと公平なバトルができるように、この部分を変更する必要があると思う」
ターン12でアルボンをコース外に押し出し追い抜いたとして5秒ペナルティを受けた角田裕毅は、アルファタウリ時代の元チームメイトと同様の見解を示し、経験豊富な元F1ドライバーの意見をより尊重する必要性を指摘した。
伊FORMULA.UNOによると角田裕毅はエイペックス先行規定に触れて、状況如何によっては無理にエイペックスを取りに行き、コース外に出てでも優先権を得ようとする動きが発生する可能性があるとして、「僕らがコーナーでやろうとすることと、彼ら(FIA)が想定していることとの間に大きな違いがあると思います」と語った。
「最も重要なことは、(FIAが)経験豊富なドライバースチュワードの意見をもっと聞くことだと思います。元ドライバーは、もっと発言権を持つべきですし、より多くの決定権を持つべきだと思います」
角田裕毅はまた、過剰なガイドラインはF1を「人工知能レース」に変貌させる危険があると警告した。
「まるで機械のように、AIのようにドライブすることを期待されているような気がします。あらゆるルールに従うことを期待されているような、そんな感じです」
「結局のところ、レースをしているのはドライバーであって、ドライバー同士が情熱を持って争っているからこそ、みんな、レースを見ているのだと思います」
「もしそれが排除されてしまうと、それはAI同士の戦いになってしまうと思います。そうであれば、アブダビでのレース(完全自律走行のレースカーで競い合うアブダビ自律走行レーシングリーグ)を見たほうがマシです」
昨年のオーストリアGPではトラックリミットが多発し、最終的に計84件ものラップタイムが抹消されたが、グラベルが追加された2024年大会で再び同様の問題が発生することはなかった。
カルロス・サインツは、レイアウトの変更を含めたサーキット側の協力なくして問題の解決は「難しい」との見方を示した。
「もし、オースティンのターン12の出口にグラベルを設置すれば、ランドはアウト側から仕掛けようとも、あんなに遅いタイミングでブレーキをかけようともしなくなるだろう。だって、アウト側から回ると2秒を失った挙げ句、タイヤに汚れが付着するからね」
「それにマックスもまた、あれほど遅いタイミングでブレーキをかけたりはしないだろうね。自分自身がグラベルに飛び込むリスクを負うことになるわけだから」
GPDA(F1ドライバー組合)のディレクターを務めるジョージ・ラッセルは、バルテリ・ボッタスを追い抜く際にCOTAのターン12でコースアウトしたとしてペナルティを受けたことについて、「厳しすぎるが、おそらく正しい」とする一方、問題の根底にはサーキットのレイアウトがあると指摘した。
また、裁定に一貫性を持たせるために、常設のスチュワードを置くべきだとも提言した。
「本当に経験豊富な人たちがスチュワードを務めているけど、それはほとんどボランティアであって、プロとしてお金が支払われている仕事として存在しているわけじゃない」とラッセルは語る。
「サッカーを例にとると、議論の余地はあるとは言え、審判はプロとしてフルタイムで仕事をしていて、それで収入を得ている。F1もおそらく、それを目指すべきだと思う」