人権問題批判の声も、F1サウジアラビアGPの開催が正式決定…ジッタ市街地コースでナイトレースを開催
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人権問題で国際的な批判の声が上がる中、史上初となるF1サウジアラビアGPの開催が正式決定した。イベントは日没後のナイトレースとして、首都リヤドに次ぐ第二の都市、紅海に面するジッダの市街地コースで2021年11月に開催される。中東でのグランプリとしてはバーレーンとアブダビに次ぐ3番目の開催となる。
これは、F1とサウジアラビア自動車・オートバイ連盟(SAMF)の長期パートナーシップの一貫として行われるもので、11月5日(木)に正式発表が行われた。F1は今年3月に、世界最大手の石油会社「サウジ・アラムコ(Saudi Aramco)」との間で新たなグローバルスポンサーシップ契約を締結し、同国との関係を深めている。
サウジアラビア政府当局は、原油依存からの脱却を目指す経済政策の一環としてエンターテインメントに対する多額の投資を行っており、リヤド南西のキッディヤ(Qiddiya)に常設サーキットの建設を計画している。ジッダ市街地コースでのグランプリは、サーキット完成までの繋ぎとして行われる。
なお最終的なコースレイアウトはまだ確認されていないが、ジッダの市街地コースは沿岸リゾートエリアであるコーニッシュに仮設される予定となっている。
サウジアラビア第二の都市ジッダ / creativeCommonssören2013
F1のチェイス・ケアリー会長兼CEOは「サウジアラビアは近年、多くの大規模イベントが開催されるなど、スポーツとエンターテインメントのハブとなりつつある国であり、来シーズンよりF1グランプリを開催する運びとなり非常に喜ばしく思っている」との談話を発表した。
「この地域は我々にとって非常に重要だ。サウジアラビアの人口の70%は30歳以下である事から、我々は新たなファンの獲得を楽しみにしており、これと同時に、既存のファンに対して世界的に歴史ある場所でのエキサイティングなレースをお届けできる事に胸を高鳴らせている」
「今後数週間のうちに2021年の暫定F1カレンダーを発表し、世界モータースポーツ評議会に提出して承認を得る予定だ」
現時点では詳細なスケジュールは明らかにされていないものの、2021年シーズンのF1カレンダーでは史上最多となる23戦が計画されている。地理的観点から、サウジアラビアGPは最終戦を担うアブダビGPとのダブルヘッダーとしての開催が予想される。
Coming in 2021…#SaudiArabianGP @SaudiArabianGP pic.twitter.com/F787sAxn1z
— Formula 1 (@F1) November 5, 2020
サウジアラビアのスポーツ大臣を務めるアブドゥルアジーズ・ビン・ターキ・アルファイサル・アル・サウード皇太子殿下は「F1のスピードとエネルギーそして興奮は、前進を加速させているサウジアラビアの変革の歩みを完璧に反映している。サウジアラビアはスポーツ並びにエンターテインメントの世界最大の中心地を目指しているが、それらの中でF1以上に大きな存在はない」と述べ、グランプリ開催を歓迎した。
また、サウジアラビア自動車・オートバイ連盟の会長であるハリド・ビン・スルタン・アル・ファイサル皇太子は「私は、サウジアラビアGPがサウジアラビア史上最大のスポーツイベントになると確信している。スポーツのアイコンと歴史あるチームがサウジアラビアでレースを行うことは、まさに画期的なことだ」と語った。
サウジアラビアは既にダカールラリーやフォーミュラE選手権を開催しており、2021年3月には電動SUVシリーズ「エクストリームE」がアル・ウラで予定されるなど、モータースポーツの招致に積極的だが、国内では表現や集会の自由が厳しく制限されており、多くの人権活動家や反対派が拘束されて不公正な裁判のもとで重い刑罰や死刑に処されている等として、国際社会から批判を受けている。
長期に渡って同国の人権問題を監視し続けてきた国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、サウジアラビア政府はF1等のイベントを利用して国際社会にポジティブなイメージを植え付けようとしていると警告。イギリス代表のフェリックス・ジェイケンズは「我々はグランプリの開催に向けて、F1ドライバー、チーム、オーナー達に対して、この国の悲惨な人権状況についての予備知識を得た上で、この問題に対して発言するよう促している」と述べ、F1側に”スポーツウォッシュ”の片棒を担がないよう要請している。
こうした批判に対してアブドゥルアジーズ皇太子は、BBCスポーツに対して「世界に対して閉ざされているとしてサウジアラビアは批判されてきたが、開放したことで今度はスポーツウォッシュと批判されるようになった」と述べた上で、「我々は国際的な規制やルールを守らなければならない。そしてあらゆる物事に対し、(F1開催が決まったという事実を)前向きに反映させる必要がある」と語り、同国でのF1の開催はポジティブな変化に繋がると主張した。