
フェルスタッペン「あ、行けるかも」リスク上等な仕掛けの舞台裏─ピアストリを”勉強”させた勝負の一手
2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPの決勝で、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが見せた第1シケインでの果敢なオーバーテイクが、今季2勝目への決定打となった。スタートからわずか数秒の攻防が、レース全体の流れを大きく左右した。
ポールポジションからスタートしたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は好発進を決めたが、2番手のフェルスタッペンは外側からタンブレッロ・シケインに飛び込み、鋭いブレーキングでトップの座を奪取。3番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)が背後に迫る中、ピアストリはやや早めのブレーキを選択してしまい、その隙を突かれた。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
決勝スタート直後にイモラ・サーキットのターン3でオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を交わして首位に立つマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP
フェルスタッペンはこの一手について次のように振り返る。
「かなり後ろから入っていったんだ。ブレーキングの前段階では、ほぼ3番手だったんだけど、通常のブレーキングライン上にいたから、遅めにブレーキをかけて、その後、ブレーキを緩めた瞬間、『これは行けるかも』ってなってね」
「そのまま勢いを殺さずに突っ込んでみたら、うまく決まった。正直、簡単なオーバーテイクじゃなかったけど、運良く全てが噛み合ったんだ」
この動きには当然リスクもあった。例えば、今年のサウジアラビアGPでは、フェルスタッペンが同じくピアストリとのバトル中、ターン1からコース外に飛び出した。だが当時とは異なり、イモラのタンブレッロのアウト側には舗装ではなくグラベルが敷かれており、失敗すれば即、最後尾転落もあり得る場面だった。
今回、フェルスタッペンにとって有利だったのは、ラッセルの接近を警戒してディフェンシブなラインを取ったことで、ピアストリが低グリップのラインを走行していたのに対し、通常のレコードラインを走れたことにある。このグリップ差を活かし、フェルスタッペンは減速を最小限にとどめてコーナーを抜け、加速区間でも優位に立つことができた。
フェルスタッペンはターン1での感覚についてさらにこう語る。
「ターン3に入るまでに勢いに乗れていたし、前に出たのは分かってた。ただ、全てがあっという間に変化していく状況で、ラインを外さないよう、とにかく集中しなきゃならなかった。でも、グリップがあったおかげで何とかなったんだ」
この一手は、フェルスタッペンにクリーンエアーをもたらし、その後のレース運びにおいて大きなアドバンテージを与えた。バーチャル・セーフティーカー(VSC)やセーフティーカー(SC)の導入もあったが、都度、冷静にリスタートをこなし、安定したラップを刻み続けた。
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記者会見でインタビューを受ける優勝のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP決勝(イモラ・サーキット)
一方でピアストリは、早めのピットイン戦略と中盤のトラフィックの影響で劣勢に立たされ、最終的に3位でフィニッシュすることになった。オープニングラップでの判断について、ピアストリは次のように語った。
「単純にブレーキングが早すぎた。それに、マックスも上手かった。もちろん悔しい。ただ、その後も幾つかの判断ミスがあったと思う。正直、ベストじゃなかった。見直すべき点は多いね」
「僕としては、うまくコントロールできてたと思ってたから、マックスの動きにはちょっと驚かされた。いい動きだったと思う。おかげで、この先に向けて勉強になったよ」
「当時は、トップを奪われてもあまり気にしていなかったんだ。でも、レース後半のペースが思ったより良くなくて、あの時点でのポジションダウンが大きな意味を持ってしまった」
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イモラ・サーキットでセーフティーカー(SC)に先導されるマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシングRB21)とオリバー・ベアマン(ハースVF-25)、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP決勝
今回の優勝により、フェルスタッペンはランキング2位のランド・ノリスとの差を9点に、首位ピアストリとの差を22点に縮めた。
フェルスタッペンは、イモラでRB21に投入されたアップグレードが奏功したとの見方を示す一方で、依然として課題は残されており、今回はマシンとサーキットとの相性が結果を後押しした面が大きいとの認識を示した。
「こういう高速コーナーが多いサーキットでは、僕らのクルマは強みを発揮できる。今回はセットアップの改善も大きかった。でも、次のモナコはまったくの別物だ。去年も苦戦したし、楽になるとは思っていない。低速コーナーが中心だからね」
「ただ、それもカレンダーの一戦にすぎない。ベストを尽くすだけさ」
リスクを恐れずに勝機を掴んだフェルスタッペン。その冷静さと果敢な判断力が、今季のタイトル争いをさらに白熱させている。
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マックス・フェルスタッペンの勝利を祝うレッドブル・レーシングのチームメンバー、2025年5月18日(日) F1エミリア・ロマーニャGP決勝(イモラ・サーキット)
2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGPでは、2番グリッドからスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が逆転優勝を飾った。2位はランド・ノリス、3位はオスカー・ピアストリとマクラーレン勢がこれに続いた。
モンテカルロ市街地コースを舞台とする次戦モナコGPは5月23日のフリー走行1で幕を開ける。