ハミルトン、挽回どころか後退「どうする事もできない」今季王座を断念…またも”屈辱”のメルセデス
4月23日(土)のF1エミリア・ロマーニャGPスプリントに挑んだメルセデスのルイス・ハミルトンは、挽回するどころか逆にポジションを落とす結果に終わった。V6時代の絶対王者は光明を見出す事すら出来ておらず、暗いトンネルの出口は見えない。
予選が行われた金曜のイモラは雨が落ちる寒いコンディションに見舞われたものの、土曜は気温も路面温度も倍近くにまで上がった。ダブルQ2敗退を喫したメルセデス勢は、異なる気象条件を背景にFP2で1-4と上位につけたが、スプリントではジョージ・ラッセルを含めてポジションを上げる事はできなかった。
13番グリッドについたハミルトンは1周目にランス・ストロールと角田裕毅に追い抜きを許した。辛うじてストロールは交わしたものの角田裕毅を脅かす事は出来ず、ポジションを一つ落とす14位でフィニッシュした。
メルセデスのトト・ウォルフ代表は「またしても屈辱的な経験になった」と述べ、この日は今季4戦の中での「最低の1日」だと認めた。幾つものマイナーアップデートを持ち込みながらも、バーレーンテスト以来苦しみ続けているポーパシングを改善できていない事が拍車をかけているのだろう。
スプリントでは決勝以上にクルマの純粋なパフォーマンスが求められる。21周に短縮されているが故に、デグラデーションやピットストップによる戦略的チャンスは期待できない。
更にイモラは追い抜きが困難なコースであり、パフォーマンス的にかなりのアドバンテージがないとオーバーテイクは難しい。例えコンスタントなペースが刻めたとしても、トップスピードで劣るW13にライバルを交わすだけの力はなかった。
ただそうは言っても、ポジションキープならばまだしも更に順位を落としたのは衝撃だった。無力さを突き付けられるようなレースを終えたハミルトンは、これ以上自身にできる事は何もないと語った。
「まあポイントを逃したし…ポジションを失ったから挽回できたとは言えないね。残念だけど。シーズンを通してずっとの事だけど、クルマの感触は最高とは言えない(苦笑」
「僕らは問題に直面しているけど、僕にはどうする事もできない。これまでに僕がやってきた事と言えば、自分にできる最高の仕事をしようと努力する事だけだ」
「上手くいく週末もあれば上手くいかない週末もあるけど、僕らがチャンピオンシップを懸けて戦っていないのは明らかだ。今の戦いはトップ10を懸けたものだからね」
7度のF1ワールドチャンピオンは選手権リーダーのシャルル・ルクレールに50ポイント遅れで第4戦の決勝を迎える事になる。レッドブルやフェラーリとのパフォーマンス差は著しく、ハミルトンは事実上、今季のタイトル獲得を諦めたと認めた。
「獲得可能なポイントが大量に残っている事は分かっているし、理論的にはまだ可能性があるけど、現実的にならなきゃならない。僕らが抱えている問題は決して小さいものじゃない」
「連中は数秒、最悪の場合、1秒以上先にいるんだ。次のレースで問題を修正することはできないし、解決策もまだ見つかっていない」
「それに例え解決策が見つかったとしても、設計や製造に数ヶ月かかる可能性もあるんだ」
ハミルトンはまた「シーズンの序盤に、僕に向けられた質問の中に『もしも誤ったらどうなるのか』というのがあって、それに対して『僕らはそんなことはしない。間違うことはない』って言ったんだけど、事実はそうかもしれない」とも語った。
傲慢は失敗の元凶とはよく言ったものだが、先が全く読めなかったシーズン序盤のメルセデス陣営の発言で思い出されるのはジェームズ・アリソンだ。
年明け早々にメルセデスの最高技術責任者は、レギュレーションの解釈を誤り悲痛なシーズンを過ごすチームが出るのは避けられないとの見方を示していた。それに該当するのは今のところ、間違いなくメルセデスだ。
4月25日に行われるF1第4戦エミリア・ロマーニャGPの決勝では、スプリントの勝者であるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポールポジションにつき、最前列2番手にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が並ぶ。
イモラ・サーキットでの63周の本レースは現地15時、日本時間22時にブラックアウトの時を迎える。