インタビューに応じるメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年4月8日F1オーストラリアGP
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

1.2秒落ちのメルセデス「何をしても良くならない」為す術なき状況に苛立つハミルトン…選手権9連覇は絶望的か

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F1新時代に挑む今のメルセデスにかつての王者足る姿は見られない。英国ブラックリーのチームはこれまで、如何なる困難をも乗り越える問題解決能力を見せつけてきたが、W13に潜む問題は依然としてチームとドライバーを苦しめ続けている。

メルセデスは4月8日(金)に行われたF1第3戦オーストラリアGPの初日、ミッドフィールドに完全に埋没した。FP2でのチームベストはジョージ・ラッセルの11番手に留まり、最速シャルル・ルクレール(フェラーリ)とのギャップは1.2秒以上に達した。

アルバート・パーク・サーキットでメルセデスW13を駆るジョージ・ラッセル、2022年4月8日F1オーストラリアGPCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

アルバート・パーク・サーキットでメルセデスW13を駆るジョージ・ラッセル、2022年4月8日F1オーストラリアGP

FP1ではルイス・ハミルトンが7番手タイムを刻んでいるが、最速のライバルとの差は1.2秒と全く変わってはいない。つまり、他の中団チームがFP2に向けて、相対的にシルバーアロー及びトップチーム以上にパフォーマンスレベルを向上させたという事だろう。

もはやハミルトンが語る言葉を「三味線」だと思う者はいない。V6ハイブリッド時代に支配的な力を誇示してきたメルセデスが抱える今の問題は、ドライバー達の努力でどうにかなる範疇を超えている。

初日セッションを終えたハミルトンは「今はクルマに何か変更を加えても何も変わらないんだ。そこがキツイ」と述べ、フラストレーションを滲ませた。

「楽天的な気持ちになって変更を加えてみても、(クルマの方は)改善したくないみたいに見える。FP2で幾つか変更を加えてみたけど僕にとっては余計に悪化しただけで、FP1の方が良かった。訳が分からない。兎に角、このクルマはトリッキーなんだ」

「挽回方法を見つけるのが厄介だとは思ってないけど、できる事はあまりない。これが現実だ。兎に角、今あるものを使ってドライブするしかないんだ」

「イライラするよ。だってプッシュして、クルマを抑え込んで真っ当なラップを走ったと思っても1.2秒落ちなんだから。辛い」

ピットボックスに停車するメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年4月8日F1オーストラリアGPCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

ピットボックスに停車するメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年4月8日F1オーストラリアGP

両セッションをトップ10圏外で終えたラッセルは、自分達がトップはおろか、中団上位さえ争えない状況に置かれていると認めた。

「今のポジションは僕らは望んでいるものじゃない。僕らの前にはミッドフィールドのマシンが何台もいるし、トップからは遠く離れている」

「ポーパシングに関して言えば、特にターン9への進入がかなり酷い。これはこれまで経験した事がないレベルだけど、当面は対処していくしかない」

セットアップ変更が上手くいかない場合は一般的に、クルマに対する理解が適切でない事が多い。ラッセルは「このサーキットで最も速いと思う方法でクルマをセットアップしているけど、実際にはそうじゃないのかもしれない」と語った。

エンジニアリング・ディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンによるとW13のペースが上がらないのは、ドライバーが自信を持って高速コーナーを走れないために、タイヤに十分な熱が入らない事に起因しているようだ。

「ここはタイヤの温度を上げるのが難しい。我々が明日に向けて一晩で解決しなければならない問題は深刻だ」とショブリンは語る。

「涼しいコンディションになった2回目よりも最初のセッションの方が明らかに競争力があったし、クルマから得られたデータからも温度が十分でないことが裏付けられている」

「これを改善できればグリップを引き出せるものの、今のところドライバー達は高速コーナーでスピードを出し切るだけの自信が持てておらず、これが悪循環につながっている。タイヤに必要な熱を生み出すためにはそのスピードが必要だからね」

「全体的に楽な一日ではなかったが、今年はそういうことにも慣れてきた。セットアップの方向性については既に幾つかのアイディアがある。その案に対する理解を深めるために、今夜はブラックリーで一晩中作業を行う予定だ」

前人未到のコンストラクターズ選手権9連覇の野望は徐々に潰えようとしている。

メルセデスはポーパシングが全ての元凶だとしているが、同時にこの空力的なバウンシングを解決できても十分なペースが得られるかどうかは不透明だとも認めているが、その可能性は十二分にある。

実際、アルバート・パーク・サーキットでのフェラーリはメルセデスより酷いポーパシングに見舞われているように見えたが、それでもシャルル・ルクレールとカルロス・サインツは圧倒的に速かった。

元F1ドライバーでSky Sportsの解説者を務めるジョニー・ハーバートは「優秀な人材が揃っているため、必ず上位に食い込んでいけるはず」と述べ、メルセデスの巻き返しを確信する一方、問題は解決に要する時間であり、チャンピオンシップを争うには既に手遅れかもしれないと指摘している。

メルセデスは今週末のメルボルンにアップグレードを持ち込まなかった。それはポーパシングという基本的な問題に対する適切な理解と解決なくしてクルマを開発する意味がないためだ。その間にレッドブルとフェラーリは更に遠く離れていく事になる。

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