アストンマーチン初のSUV「DBX」

アストンマーチン、F1復帰に暗雲…億万長者の支援にも関わらず運転資金不足の見通し

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英国の高級自動車メーカー、アストンマーチン・ラゴンダは3月30日に総会を行い、カナダ人実業家のローレンス・ストロールが主導する5億ポンド規模(約670億円)の緊急支援策の受け入れを正式に承認し、2020年4月20日付で同氏がエグゼクティブ・チェアマンに就任する事を発表した。

だが、大規模な資本注入計画をフィックスさせたにもかかわらず、アストンマーチンは「今回調達した資本を考慮に入れてなお、当社グループには、当初の目論見書(2月27日発行)に記載された今後12ヶ月間で必要となる十分な運転資金がない」との見解を示し、その理由として新型コロナウイルスの影響を挙げた。

ウィリアムズのパディー・ロウと握手するローレンス・ストロール
© Steven Tee/Williams、ウィリアムズのパディー・ロウと握手するローレンス・ストロール

イギリス当局は4月1日午前9時現在の情報として、29,474人の確定症例を確認すると共に、31日午後5時の時点で2,352人の方が亡くなったと発表している。アストンマーチンのゲイドンとセントアサンの2つのファクトリーは3月25日から全ての生産を停止しており、コストカットのために従業員の解雇に踏み切っている。

アストンマーチンは2018年10月に上場して以来、売上の低迷と一貫した株価下落に見舞われてきた。当初19ポンドで取引されていた同社の株は僅か4ヶ月で半分の価値が失われ、初のSUV「DBX」の開発計画に大きな狂いが生じた。1億3,600万ポンドもの上場コストも経営を圧迫した。

そんな最中、アストンマーチンは今年1月に緊急の資金調達計画を発表。今季F1ドライバーのランス・ストロールの父であり、レーシング・ポイントF1チームのオーナーでもあるローレンス・ストロール率いる投資家グループ「Yew Tree」に全株式の16.7%を1億8,200万ポンドで売却し、これに加えてライツイシュー(新株予約権無償割当)によって3億1,800万ポンドを調達する事を明らかにした。

だがその後、世界各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るいビジネス環境が大きく変化したため、ストロールは1月の合意内容を見直し、当初は1株あたり4ポンドで16.7%を取得するとしていたところを、1株2.25ポンドで25%の株式を取得する事とし、当面の運転資金として短期の貸し出しを予定していた支援金額を2500万ポンド増額した。

最終的にアストンマーチンは30日の総会で、ストロール率いるコンソーシアムからの2億6,200万ポンド(非公募での1億7,100万ポンド含む)とライツイシューによる増資を合わせた総額5億3,600万ポンド(約713億円)の資本調達計画を承認したが、それでもなお取締役会は、このままではキャッシュが焦げ付くと考えている。

にもかかわらずレーシング・ポイントF1チームは4月1日(水)に声明を発表し、2021年シーズンより「アストンマーチン」へとチーム名を変更する事を改めて確認。ローレンス・ストロール自身もこれを確約した。自信の根拠は何処にあるのか?

取締役会はその理由として、総額約1.5億ポンド(約200億円)の追加資金調達枠と最大1億ドル(約107億円)の債権調達枠を挙げた。ただしこれらを活用してなおキャッシュが保つのは「今後12ヶ月間」だとしており、決して状況は明るくない。アストンマーチンは昨年既に、4月に1億9000万ドルの債券を、そして9月には1億5000万ドルの債券を発行している。