表彰台の上で3位トロフィーを手に持つフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2023年3月19日F1サウジアラビアGP
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アロンソ、F1サウジで3位奪還!アストン再審請求を経てペナ撤回…裁定の理由と遅延の謎

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アストンマーチンからの再審請求を受け、F1サウジアラビアGPのスチュワードは審理の上、10秒ペナルティを撤回した。結果、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)が3位表彰台に返り咲いた。

最前列2番グリッドからスタートしたアロンソは見事なレースを戦い、セレモニーで3位表彰台に上がった。キャリア通算100回目ポディウムとなるはずだった。

ところがピットストップの際、スタートポジション違反による5秒ペナルティを適切に消化しなかったとして10秒ペナルティが科された。5秒を経過する前にリアジャッキがAMR23に接触したと判断されたためだった。

結果、ジョージ・ラッセル(メルセデス)が繰り上がりの3位に昇格したが、アロンソは最終的にポディウムを取り戻した。

焦点は「FIAとチーム間の合意」

スチュワードはペナルティを科した理由として、”ジャッキ”がクルマに触れることは競技規則第54.4条(c)における「作業」に該当するとの「FIAとチーム間の合意」が存在しているためだと説明した。

同項は、ペナルティ消化時間が経過するまで「作業」をしてはならないとのみ定めており、ジャッキがクルマに触れる事が違反とは明記していない。

アストンマーチンはスチュワードが挙げた先の「理由」を突き、そのような合意はないとの新たな証拠を提出し、裁定の見直しを要求した。

国際競技規定は異議申立てや控訴の他に再審請求権を認めている。これは「競技中に利用できなかった重要かつ関連する新たな証拠」が事後に見つかった場合、スチュワードの決定に対して再審理を請求する事ができるというものだ。

スチュワードは予備審問を行い、アストンマーチンから提出された証拠を検証した結果、再審理を行う事を決定。「明確な合意」はなかったと判断し、当初のペナルティを覆した。

スチュワードは「映像証拠並びに、チームとFIAからの口頭による証拠」とのみ説明しており、決定を覆すに至ったその中身が具体的にどのようなものだったのかは明らかにしていない。

おそらくは、ジャッキがクルマに触れることが「作業」に該当するか否かについて、チーム側が否定的な見解を示したものが一部に含まれているものと考えられる。また、ジャッキがクルマに触れてもペナルティが科されなかった事例を証拠として提出した可能性も考えられる。

最終周に再調査の謎

ペナルティを受け降格した直後、アロンソは、レース後ではなくレース中にペナルティの知らせを受けていれば、ラッセルに対して3位を守り抜くだけの十分なギャップを築けただろうとの考えを示し、FIAの判断の遅さを批判した。

アロンソへのペナルティの決定が事由発生から大幅に遅れた理由は何だったのか? 実はこれ、ピットストップ直後は「適切に消化」したと判断されていた。

50周のレースの19周目に行われたピットストップについて、ペナルティがルール通りに消化されたかどうかについてレースコントロールは「慣例」に則り、スイス・ジュネーブのリモートオペレーション・センター(ROC)の協力を受け調査した。

この結果、レースコントロール、ROC双方は、ペナルティは適切に消化されたと判断した。そのためスチュワードは一件をこれ以上、調査しなかった。

事態が動いたのはファイナルラップだった。レースコントロールが、先程の判断は誤りであり、適切に消化されていなかった可能性があると報告をスチュワードに上げたのだ。

これによりスチュワードは、レースディレクターとスポーティングディレクターから提出された14号車アストンマーチンARM23のピットストップの際の映像を確認。5秒を消化する前にリアジャッキがクルマに「触れていた」事が確認されたため、F1競技規定第54.4条(c)違反に該当としてペナルティを科す事を決断した。

ルールはスチュワードに対して当該車両を失格にする裁量を与えているが、スチュワードは「クルマに触れている間に作業が行われなかったこと」を考慮して10秒を加算する決定を下した。

ここで注目すべきは、一度は「適切に消化」したと判断した主体であるレースコントロールが何故、ファイナルラップになって突然、追加報告を上げたかだ。ライバルチームを含む外部からの情報提供が疑われる。

レース中、メルセデスと4番手を走行していたジョージ・ラッセルとの間では、アロンソが追加のペナルティを受ける可能性があるとのやり取りがなされていた。

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