チーム解体前最後のレース…予選を終えてなお入賞の望み捨てないホンダF1、ファンの期待に応えられるか?
Published: Updated:
F1アブダビGP公式予選で2台がQ2ノックアウトを喫したものの、ホンダのF1プロジェクトを率いる長谷川祐介は、決勝でのポイント獲得の望みを捨ててはいない。FP3ではフェルナンド・アロンソが7位、ストフェル・バンドーンが8位と2台揃って10位圏内に食い込み、メルセデス、フェラーリ、レッドブルに次ぐ4番目のチームに名乗りを上げた。予選への期待は膨らんだが、蓋を開けてみればどちらのマシンもQ3進出叶わず、アロンソが11位、バンドーンが13位という結果に終わった。
エンジンモードの性能差で後塵拝した予選
長谷川は、予選は期待通りとはいかなかったと肩を落とす。
「直近の数レース以降続いていた良い流れがあったにも関わらず、今日の結果はチームにとって厳しいものとなりました。FP3で昨日のセットアップに手を加え、ドライバー達はパッケージに良い感触を持って予選に挑みました。それだけに、2台ともがQ2で敗退した予選結果は理想的とは言えないものでした」
© HONDA / 陣頭指揮をとる長谷川総責任者
好調に終えたFP3の勢いそのままに、バンドーンは一回の走行でQ2進出を決めてみせた。最初のアタックで充分なタイムが出せなかったアロンソはセカンドランを行った。バンドーンはQ1で9番手タイムを記録、アロンソは12番手タイムだった。刻々と下がる路面温度に対処するため、Q2ではマシンのセットアップに微調整を加えた。だが、フォース・インディアやルノー、そしてウィリアムズがこれを上回った。
3回の練習走行の結果から中段勢の争いが熾烈であることは明白だった。コンマ3秒の中に7台がひしめき合うような大接戦。このような状況では、エンジン予選モードで劣るホンダが劣勢となる。各エンジンサプライヤーは、予選などの重要な局面で一時的に使用可能なハイパワーモードを備えているが、ルノーとホンダはこのエキストラ分の出力が不足しており、フェラーリPUやメルセデスPUに先行されてしまう。
チーム代表を務めるエリック・ブーリエは「予選ではもう少しパッケージの力を引き出せると考えていたが、恐れていたようにライバルがエンジン出力を上げてきた」とFP3と予選での逆転現象を説明する。アロンソとバンドーンは「魔法のボタン」という言葉で、他社のエンジンモードを羨ましがった。
アドバンテージはタイヤ選択とロングランペース
予選結果こそ失望的だが、長谷川を含めた関係者は皆一様に「ポイント獲得のチャンスはある」と口を揃える。アロンソは決勝での入賞の可能性について以下のようにコメントした。
「今朝のFP3では7番手と8番手だったし、ロングランペースではかなり競争力があるんじゃないかって思ってる。レースでも同じような速さが発揮できると思うし、ポイント獲得のチャンスは充分あるよ」
© Mclaren
ほんの僅かのラップタイム差でQ3に進出したフォース・インディアの二人やニコ・ヒュルケンベルグ、フェリペ・マッサは、周回をこなした中古タイヤでスタートする。一方のアロンソとバンドーンにはタイヤ選択の自由があり、新品タイヤでグリッドインできる。戦略の自由度はマクラーレン・ホンダにアドバンテージがある。長谷川は決勝に向けて次のように抱負を語った。
「明日はマクラーレン・ホンダにとって最後のレースとなります。今日の結果は残念でしたが、我々はタイヤを自由に選択した上でポイント獲得のチャンスがあるポジションからスタートできます、ホンダのパワーユニットの性能は、ここ数レースで安定しています。良いフィナーレを迎えるために、マシンから全てのポテンシャルを引き出せるよう取り組んでいきます」
失速した最高速、コース上でのオーバーテイクは…
ポジティブな点がある傍らネガティブな懸念材料もある。ヤス・マリーナ・サーキットは1kmほどの2本のロングストレートを持ちながらも、レイアウト的にオーバーテイクが難しい事で知られる。コーナーが立て続けに連なるセクター3での追い抜きは不可能であり、ポジションを上げる最大のチャンスはストレート区間のセクター2となる。
金曜初日のFP2で時速325kmと、上から9番目と10番手の最高速を記録していたマクラーレン・ホンダの2台であったが、同時刻に行われた予選では時速315km程しか出ておらず、18・19番手に沈んでいる。状況から考えれば、マクラーレン側がダウンフォース量を追加したのではないかと疑われる。二人より遅いのはトロ・ロッソのブレンドン・ハートレーのみ。直近のライバルであるセルジオ・ペレスは最も速い331km/h、これに329.4km/hでマッサが続いている。この状況ではコース上でのオーバーテイクはほぼ不可能だ。
抜くとすればピットストップ戦略が唯一の望み。とは言え、これまでのところタイヤのデグラデーション(走行に伴う性能劣化)は極めて小さく、決勝ではウルトラソフトとスーパーソフトの1ストップ戦略が主流となる見込まれる。戦略の幅は限定されてしまい攻めの選択肢は多くない。また、前戦ブラジルGPが象徴的であるように、マクラーレンは保守的すぎるが故に、度々アンダーカットのチャンスを逃している。
世界中の期待を背負いながらも、マクラーレン・ホンダは一度も表彰台に上ることなく3年で消滅してしまうのだろうか?チーム最後のレースは節目の60戦目、果たして有終の美を飾ることができるだろうか?奇跡は起こるのだろうか?注目したい。
2017年シーズン最終戦F1アブダビGP決勝レースは、1周5.554kmのヤス・マリーナ・サーキットを55周する事で勝敗を競う。スタート時刻は日本時間11月26日(日)22時、現地アブダビ17時。夕暮れから始まるトワイライトレースとなる。