“無冠”返上なるかヒュルケンベルグ、3番手に満面の笑みも「前戦での未出走が痛手」F1-70周年記念GP《予選》2020
ニコ・ヒュルケンベルグは、レーシングポイントでの復帰2戦目にして早くも同じマシンを駆るランス・ストロールを下しただけでなく、レッドブル・ホンダをも打ち破って、最強メルセデスの2台に続く予選3番手を獲得してみせた。
順当にQ2に駒を進めたヒュルケンベルグは、1セット目のアタックの際にチャペル脇の芝生に車輪を落とす痛恨のミスを喫し、ミディアムを2セット使う事を余儀なくされたが、2度目のアタックでメルセデスに割って入る2番手タイムを記録。予選最後のプッシュラップではフェルスタッペンを抑えて3番手グリッドを獲得した。
© Racing Point、ヒュルケンベルグを称えるレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとルノーのダニエル・リカルド
同じRP20をドライブした6番手の僚友ランス・ストロールとのタイム差は0.346秒に達した。これについてはストロール本人も「僕にとってはベストなラップじゃなかったけど、チームにとっては最高の結果だ。ニコの仕事は堂々たる途方も無いものだった」と称賛した。
なんと驚異的な適応力だろうか。オトマー・サフナウアー代表が「先週末まで8ヶ月以上もF1から離れていたことを考えると、ニコのパフォーマンスは印象的であり、Q3の走りはスペシャルだった」と語るように、ヒュルケンベルグは、ほんの10日前までレースの世界から離れて浪人生活を送っていた一介のドイツ人に過ぎなかった。ヒュルケンベルグ本人もまさか3番グリッドにつくとは思ってもみなかったようで驚きを隠さない。
「クルマ、タイヤ、そして自分自身から全てを絞り出そうとトライしたよ!この位置に来れて本当に嬉しい」とヒュルケンベルグ。
「依然として予選も楽じゃなかった。Q2では自分の人生を危ういものにしてしまったしね。クルマを傷つけてしまったんじゃないかと怖くなった。でもQ3では目の前の事に集中して、テンションが上ってしまった。正直、ここに立っていることに少し驚いているけど、ご覧の通り満面の笑みさ」
「今週末は常に1ラップのペースが良かったから、10番手以内には行けるだろうと確信していたんだ。でも3位になったのは正直予想外だったよ。そんな事、全く考えていなかったからね」
表彰台未登壇ドライバーの歴代最多出走記録を持つ”無冠”のヒュルケンベルグ。先週末のイギリスGPでは1本のボルトがヒュルケンベルグの決勝スタートを奪い去り、その皮肉めいた称号を晴らすチャンスが潰えてしまった。今度こそは…と期待が寄せられるところだが、ヒュルケンベルグは好位置からのスタートにも関わらず、前戦でレースを戦えなかった事が足かせになると考えている。
「先週末のレースが経験できなかった事は、間違いなく明日のレースを傷付けるだろう。このクルマにはまだ慣れていないからね。できる限りのことをして、早く学び、マシンをあるべき位置に留めておけるよう頑張るつもりだ」とヒュルケンベルグは語る。
「(初の表彰台については)正直なところ、非常に難しくチャレンジングな状況だ。後続に速いマシン(レッドブル・ホンダ)がいる事は分かっているからね。(RP20での)スタートとオープニングラップは僕にとって未知の領域だ。でも、今までの経験を活かして、上手くやれるように頑張りたいと思っている」
「他の連中よりも2、3レース分遅れを取っている事は明らかだけど、レースをしていた時の感覚は今もまだ覚えている。あまり考えすぎないように集中して、明日は良いレースをしたい」
2021年のF1復帰に向けて複数チームとの交渉や話し合いをしていると公言するヒュルケンベルグだが、今日の成績が交渉材料として価値があるかどうかといった事よりも、今は決勝で結果を残す事しか考えていないという。
「まだ土曜日だよ。重要なのは常に日曜日だ。もちろん今日の出来事はちょっとしたハイライトの一つではあるけど、まだ囃し立てる時じゃない事は知ってるでしょ?大事なのは明日なんだから」
ポールポジションはバルテリ・ボッタス。2番手にルイス・ハミルトンが続き、メルセデスがフロントローを独占した。3番手はニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)という結果となった。
2020年 F1-70周年記念グランプリ決勝レースは、日本時間8月9日(日)22時10分にスタート。1周5,891mのシルバーストン・サーキットを52周する事でチャンピオンシップを争う。