
2026年インディ500:佐藤琢磨、3度目ならず…ローゼンクヴィストが史上最接近0.0233秒差で初制覇の劇的展開
2026年5月24日、インディアナポリス・モーター・スピードウェイで第110回インディアナポリス500マイルレースの決勝が行われた。相次ぐクラッシュや降雨による赤旗で荒れた展開となったレースを、フェリックス・ローゼンクヴィスト(メイヤー・シャンク)が最終ラップの大逆転で初制覇した。
2位フィニッシュしたデイビッド・マルーカス(ペンスキー)との差は、わずか0.0233秒。110回を数えるインディ500の歴史で、最も小さなギャップとなった。これは、1992年にアル・アンサーJr.がスコット・グッドイヤーを0.043秒差で抑えた記録を上回る。
Courtesy Of Penske Entertainment
伝統のミルクを飲み干す優勝者フェリックス・ローゼンクヴィスト(メイヤー・シャンク・レーシング)、2026年5月24日(日) 第110回インディアナポリス500マイルレース決勝(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)
ホンダエンジンにとっては、インディ500での17勝目となった。レース中の首位交代は70回を数え、2013年の68回を上回る大会記録となった。
一方、3度目の制覇を狙った佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)は、12番グリッドからスタートしたものの、トラフィックの中でペースが上がらず、10位フィニッシュに終わった。
苦難を耐え抜いた琢磨のレース
佐藤の序盤は、慎重な立ち上がりとなった。開始直後に16番手までポジションを落とし、中盤にかけても中団から抜け出せない苦しい展開が続いた。一時は20番手まで後退する場面も見られた。
だが、レース終盤のピットストップのサイクルを背景に、ポジションを回復していく。残り33周に2番手まで浮上すると、その翌周に最後のピット作業を行い、18番手でコースへ復帰した。
そこから最終盤に向けて、6番手まで順位を上げる粘りを見せた。だが、その後にマルーカスとアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)らに相次いでオーバーテイクを許す展開となった。
前年大会で最多リードラップを記録した姿とは対照的に、本来の力を発揮しきれないまま、レースを終えることになった。
クラッシュと雨が連続する波乱
レースは序盤からアクシデントが相次ぐサバイバル戦となった。18周目にはライアン・ハンター=レイ(マクラーレン)がコントロールを失い、回避しようとしたキャサリン・レッグ(A.J.フォイト)がスピンして、早くも2名がリタイアとなった。
26周目のリスタート直後にも、エド・カーペンター(エド・カーペンター)がターン1でクラッシュし、翌周に再びコーションが出された。92周目にはウィル・パワー(アンドレッティ)がピットレーン進入時にスピンを喫した。さらにその直前には、ピット作業中だったアレキサンダー・ロッシ(エド・カーペンター)のマシンから出火し、ロッシはクルマを降りた。
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クラッシュにより損傷したマシンの傍らに立つエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)、2026年5月24日(日) 第110回インディアナポリス500マイルレース決勝(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)
その後は、天候にも翻弄された。106周目には小雨により約13分間の赤旗中断となり、再開後の116周目を終えた時点でも、再び降雨によるコーションが出された。
残り75周で再開された直後には、ジョセフ・ニューガーデン(ペンスキー)がターン4でバリアに激突し、またしてもコーションとなった。
二分した燃料戦略、赤旗が覆した「盤石」
レース終盤は、燃料戦略をめぐるドラマが展開した。オワード、アームストロング、そしてローゼンクヴィストは、164周から166周にかけて最後のピットストップを終えた。給油可能な範囲のぎりぎりで、以降は追加のピットなしでフィニッシュを目指す作戦だった。
一方、マルーカス、スコット・マクラフリン(ペンスキー)、そしてポールシッターのパロウらは異なるサイクルにあり、175周から176周に最後の給油を行った。マルーカスがこの追走集団を率いたが、残り25周を切った時点で、先行する3台に20秒以上の差をつけられていた。
ローゼンクヴィストは、オワードより2周分多く燃料を残していた。彼はオワードのスリップストリームにつけてさらに燃料を節約し、185周目に首位を奪うと、勝利へ向けて盤石の態勢を築いたかに見えた。
だが、192周目に状況が一変する。一時はリードを奪う健闘を見せていたルーキーのカイオ・コレット(A.J.フォイト)がターン2でバリアに激突し、この日6度目のコーションを誘発した。レースは事故処理のため2度目の赤旗中断となり、追走集団との差は帳消しとなった。
「あの前までは、僕らにとって完璧な状況だった」とローゼンクヴィストは振り返る。「全てが整っていた。だが最後に、何もかもがひっくり返ったんだ。最初は少し落ち込んだよ。でも、前を向くしかなかった。3番手に戻れたのは、むしろ良かった。追われるのではなく、追う側になれた気がしたからね」
残り1周の死闘、娘の誕生に沸く5月の頂点
196周目に再開されると、アームストロングがターン1でトップに立った。だが197周目、ルーキーのミック・シューマッハ(レイホール・レターマン・ラニガン)がターン2でバリアに接触し、最後のコーションが出された。
勝負は、残り1周のスプリント勝負へともつれ込んだ。なお、8番手からリスタートを切っていた佐藤は、この混戦の中で12番手まで後退した。
199周目の終わりのリスタートで、ホワイトフラッグを受けて先頭に立ったのはアームストロング。マルーカスが2番手、ローゼンクヴィストが3番手で続いた。ターン1でマルーカスが首位に立ち、バックストレートで抜け出しにかかる。その後方では、アームストロングとローゼンクヴィストが2番手を懸けて並走した。
ローゼンクヴィストは、オーバルの外側、ハイラインを駆使してアームストロングをかわすと、前方のマルーカスに照準を定めた。チェッカーが目前に迫る中、マルーカスはローゼンクヴィストのスリップストリームを切ろうと、マシンをピットウォール側へ寄せた。続いてコース中央へ動いた瞬間、ローゼンクヴィストはすかさずマシンを外側へ振り、接触を間一髪で回避した。
2台はフィニッシュライン手前で完全に並んだ。そして、ローゼンクヴィストがわずかに前へ出て、約半車身の差でヤード・オブ・ブリックスを先に駆け抜けた。35万人の観衆が沸き立った。
「現実とは思えない。まだ信じられないよ」とローゼンクヴィストは語る。「3番手に戻れたのが、うまく転んだ。あとはハイラインで全開のラップを刻むだけだった。それが決まったんだ。インディ500を勝つのに、これ以上ない最高の形だったよ」
この勝利は、ローゼンクヴィストにとって特別な意味を持っていた。5月4日、彼は妻エミールとの間に、第一子となる娘ステラを迎えたばかりだった。
「妻と、生まれたばかりの娘ステラが本当に恋しい。ここに一緒にいてほしかった」とローゼンクヴィストは語る。「父になって、そして500を勝つ。最初に冗談で言っていたんだ。『500を勝って、子どもも生まれるかもな』って。本当に、現実とは思えないよ」
準優勝に泣いたマルーカスは、ピットボックスで涙をこらえた。「他に何ができたのか分からない。レースを通して、僕らが一番速かった。150パーセントを出し切った。毎周クラッシュしかけながら、それでもP2だ。こんなに近くて、信じられない」
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肩を落とし涙を浮かべるデイビッド・マルーカス(ペンスキー)、2026年5月24日(日) 第110回インディアナポリス500マイルレース決勝(インディアナポリス・モーター・スピードウェイ)
スウェーデン出身のウィナーとしては、ローゼンクヴィストはケニー・ブラック(1999年)、マーカス・エリクソン(2022年)に続く史上3人目。メイヤー・シャンクにとっては、2021年のエリオ・カストロネベス以来、2度目のインディ500制覇となった。
3位にはマクラフリンが入り、ペンスキーは上位3台に2台を送り込みながらも、記録更新となる21勝目には一歩届かなかった。トップ5は、わずか0.4360秒の中にひしめいた。
ポールシッターのパロウは最多59周をリードしたものの、7位に終わった。自身26度目の500出走を果たしたカストロネベスは、194周目にメカニカルトラブルでリタイアした。
ルーキー最上位を記録したのはシューマッハで、18位だった。ロマン・グロージャン(デイル・コイン)は24番手スタートから9位でフィニッシュし、全車の中で最も多く順位を上げた。
第110回インディ500決勝レース結果
| Pos | Start | Driver | Gap | PTS |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 4 | フェリックス・ローゼンクヴィスト Meyer Shank Racing w/ Curb-Agajanian #60 |
–.—- | 60 |
| 2 | 3 | デイビッド・マルーカス Team Penske #12 |
0.0233 | 51 |
| 3 | 9 | スコット・マクラフリン Team Penske #3 |
0.4205 | 40 |
| 4 | 6 | パトリシオ・オワード Arrow McLaren #5 |
0.4271 | 40 |
| 5 | 16 | マーカス・アームストロング Meyer Shank Racing w/ Curb-Agajanian #66 |
0.4360 | 31 |
| 6 | 11 | リーナス・ヴィーケイ Juncos Hollinger Racing #76 |
1.0760 | 31 |
| 7 | 1 | アレックス・パロウ Chip Ganassi #10 |
1.0946 | 41 |
| 8 | 5 | サンティノ・フェルッチ A.J. Foyt Enterprises #14 |
1.5751 | 32 |
| 9 | 24 | ロマン・グロージャン Dale Coyne Racing #18 |
2.0730 | 23 |
| 10 | 12 | 佐藤琢磨 Rahal Letterman Lanigan Racing #75 |
2.4507 | 20 |
| 11 | 20 | ノーラン・シーゲル Arrow McLaren #6 |
2.6776 | 19 |
| 12 | 8 | コナー・デイリー Dreyer & Reinbold Racing #23 |
2.7237 | 24 |
| 13 | 17 | マーカス・エリクソン Andretti Global #28 |
3.3215 | 17 |
| 14 | 7 | キフィン・シンプソン Chip Ganassi #8 |
3.8061 | 23 |
| 15 | 10 | スコット・ディクソン Chip Ganassi #9 |
3.8431 | 19 |
| 16 | 25 | カイル・カークウッド Andretti Global #27 |
5.2271 | 14 |
| 17 | 18 | クリスチャン・ルンガー Arrow McLaren #7 |
6.3017 | 13 |
| 18 | 27 | ミック・シューマッハ Rahal Letterman Lanigan Racing #47 |
14.9305 | 12 |
| 19 | 29 | デニス・ハウガー Dale Coyne Racing #19 |
1 lap | 11 |
| 20 | 28 | グレアム・レイホール Rahal Letterman Lanigan Racing #15 |
1 lap | 10 |
| 21 | 21 | ルイス・フォスター Rahal Letterman Lanigan Racing #45 |
1 lap | 9 |
| 22 | 33 | ジャック・ハーヴィー Dreyer & Reinbold Racing #24 |
1 lap | 8 |
| 23 | 31 | スティング・レイ・ロブ Juncos Hollinger Racing #77 |
1 lap | 7 |
| 24 | 30 | ジェイコブ・エイベル Abel Motorsports #51 |
2 lap | 6 |
| 25 | 14 | エリオ・カストロネベス Meyer Shank Racing w/ Curb-Agajanian #6 |
6 lap | 5 |
| 26 | 32 | カイオ・コレット A.J. Foyt Enterprises #4 |
9 lap | 6 |
| 27 | 15 | クリスチャン・ラスムッセン Ed Carpenter Racing #21 |
56 lap | 6 |
| 28 | 23 | ジョセフ・ニューガーデン Team Penske #2 |
76 lap | 5 |
| 29 | 19 | ウィル・パワー Andretti Global #26 |
109 lap | 5 |
| 30 | 2 | アレキサンダー・ロッシ Ed Carpenter Racing #20 |
109 lap | 17 |
| 31 | 13 | エド・カーペンター Ed Carpenter Racing #33 |
174 lap | 5 |
| 32 | 22 | ライアン・ハンター=レイ Arrow McLaren #31 |
183 lap | 5 |
| 33 | 26 | キャサリン・レッグ HMD Motorsports w/ A. J. Foyt Racing #11 |
183 lap | 5 |