
鈴鹿での「謎の失速」はPUトリックか、メルセデスとレッドブルが突いた”F1規則の死角”とフェラーリの怒り
2026年F1第3戦日本GPのフリー走行中に、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)やアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が、鈴鹿の高速セクションで力なく這うように失速する場面があった。
信頼性のトラブルのように映ったこの状況だが、実際には両チームが予選に向けて、2026年の複雑なエネルギーマネジメント規定を逆手に取ったトリックを試みた結果だったと、イギリスの専門メディア『The Race』が報じている。
保護機能の死角を突くその仕組みとは
2026年のF1では、1周を通して使い続けられるだけのバッテリー残量がないため、ドライバーがアクセルをべた踏みしていても、システム側で自動的にMGU-Kの電力展開が段階的に低減される。
この値はサーキットごとに異なり、1秒間に「最大50kWまで」あるいは「最大100kWまで」と規則で制限されている。段階的な低減が義務付けられているのは、急激な出力低下が周囲との危険な速度差を生む可能性があるためだ。
ところがメルセデスとレッドブルはラップの終盤に、段階的にではなく一気にゼロまで落とす方法を試みていたとされる。1周で使用するエネルギー総量そのものは変わらないが、MGU-Kを「細く長く」稼働させるより、「太く短く」することで、わずかながらもラップ全体でタイムアドバンテージが得られると考えたようだ。
この手法の鍵となるのは、FIAの標準ECUに備わる「パワーユニット保護機能」だ。本来はトラブル発生時にシステムを緊急停止させるための例外規定だが、これを使うとMGU-Kの出力を段階的にではなく急停止させることができるとされる。
ただし悪用防止のため、使用後60秒間はMGU-Kが使えなくなる制限が課されるという。通常のレース中であれば1分間の電動パワー喪失は致命的だが、予選アタックが終わった直後のインラップ中であれば許容可能な代償となる。
両チームはこの点に目をつけ、アタックラップの最終シケインからフィニッシュラインまでの間で、このトリックの活用を試みていたようだ。
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鈴鹿サーキット(F1日本GP)の国際レーシングコースのレイアウト図、2026年
なお、パワーユニット保護機能の詳細や、ロックダウン制限の「60秒間」という値についてはレギュレーション上で規定されておらず、当編集部では確認できていない。FIAの非公開書類に記載があるものと思われる。
フェラーリの怒りとFIAの動向
この手法の副作用が鈴鹿では分かりやすい形で表面化した。アレックス・アルボン(ウィリアムズ)はFP2セッション中にターン1で停止し、フェルスタッペンとアントネッリもセクター1の高速区間で極端に失速した。3者に共通していたのは、アタックラップ直後に後続車を先に行かせるため大幅に減速したことだった。
エンジン回転数と過給圧が落ちた状況においては、本来ならMGU-Kがターボラグを補う。だが60秒間の使用制限が課されていたため、ドライバーはアクセルを踏んでもブーストが立ち上がるまでに長い時間を要し、その間マシンは高速区間で危険なほど低速の状態を維持し続けることとなった。これが、多くの観衆が目撃した不可解なスローダウンの正体だった。
この件で最も不快感を示しているのはフェラーリだとされる。
彼らの目には、スタート手順の変更問題や圧縮比の解釈を巡る摩擦に続き、今回のトリックもルールの意図を外れた活用例として映っている。合法性は認めつつも、なぜ許されるのか、今後も認められるのかを明確にしたい考えのようだ。
鈴鹿で複数台に同じ症状が出たことで、FIAは少なくともメルセデスと何らかのやり取りを行ったとされるが、現時点ではルール上許容されるとの見解を示していると報じられている。
ただし安全上の懸念が強まれば、介入に傾く可能性もある。メルセデスは日本GPの残りの週末でこの運用を続けなかったとされるが、FIAとの協議が影響したかどうかは定かではない。
わずかなラップタイムの上積みと引き換えに、エンジンが制御不能に近い失速を起こし安全上の問題まで生むのであれば割に合わない、との見方も当然出てくる。それでも各陣営が、アドバンテージが見込まれる別のサーキットで再び試みる可能性は残っている。