マクラーレンW失格、真因はまさかの「安全策」ラスベガスで露呈したF1セットアップの残酷な逆説

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2025年F1ラスベガスGPでマクラーレンを襲った悪夢のようなダブル失格。ランド・ノリスが2位、オスカー・ピアストリが4位という好結果を剥奪される原因となった「プランクの過度な摩耗」は、チームが攻撃的に攻めた結果ではなく、むしろ慎重すぎたがゆえに引き起こされたものだった。

通常、プランクの摩耗を防ぐには車高を上げることが定石だ。だが今回は、その安全策が意図せずして「想定外の深刻なポーパシング(空力的な縦揺れ)」を誘発してしまったのだ。

「守り」が招いたポーパシングの再来

フリー走行でのドライ走行が限られていたため、マクラーレンはパルクフェルメが適用される予選に向けて安全マージンを取り、通常より高めの車高を選択した。だが、これが裏目に出た。

イギリスの衛生放送局『Sky Sports』によると、ノリスはカタールで次のように語った。

「問題はポーパシングだった。車高を低くし過ぎたからじゃない。時にはその逆が起こり得るんだ」

一方で、「レース中の自分の状況から、そうなる可能性は予想していた。だからショックでも驚きでもなかった」とも付け加えた。

インタビューに応じるランド・ノリス(マクラーレン)、2025年11月27日(木) F1カタールGPメディアデー(ロサイル・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of McLaren

インタビューに応じるランド・ノリス(マクラーレン)、2025年11月27日(木) F1カタールGPメディアデー(ロサイル・インターナショナル・サーキット)

2022年のグランドエフェクトカー導入当初こそ、猛威を振るったポーパシングだが、近年は幾らか鳴りを潜めていた。だが、ラスベガスの高速かつバンピーな路面に対し、マクラーレンが選択した「高めの車高」は、アンダーフロアの気流が剥離と再付着を繰り返す“不安定領域”へとマシンを送り込んでしまった。

ノリスが言うように「ある意味、もっとリスクを取っていれば」、強力なダウンフォースによって車体は地面近くに安定して押し付けられ、気流が乱れずに済んでいた可能性が高い。皮肉にも、安全策を取ったことで車体が安定せず、1秒間に数回という激しい衝撃で路面に打ち付けられる羽目になった。

ピアストリも、金曜フリー走行が赤旗続きでデータ不足だったことを挙げ、「過剰なリスクを取ったわけじゃなく、むしろ安全策を取ったのに、予期せぬ自体に見舞われてしまった」と説明した。

低ドラッグ仕様とリフトの罠

この現象を悪化させたもう一つの要因は、ラスベガスでマクラーレンが採用した低ダウンフォース仕様のリアウイングと考えられる。

空気抵抗(ドラッグ)を減らすための薄いウイングは、当然ながらダウンフォース発生量も少ない。そのため、速度上昇に伴って車体を地面に押し付ける力が不足し、フロア下で発生する気流の乱れ(剥離)を抑え込むことができず、結果としてポーパシングを制御できなかった可能性がある。

さらに、チーム代表のアンドレア・ステラによれば、ドライバーによる対処療法も逆効果となった。

ポーパシングとプランクの摩耗を抑えるために、ストレートでアクセルを緩める「リフト&コースト」を行ったが、アクセルを抜くとマシンのリアは浮き上がる。これが、すでに高すぎた車高をさらに押し上げ、場所によってはポーパシングが発生する領域へと入り込んでしまったのだ。

インタビューに応じるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年11月27日(木) F1カタールGPメディアデー(ロサイル・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of McLaren

インタビューに応じるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年11月27日(木) F1カタールGPメディアデー(ロサイル・インターナショナル・サーキット)

ノリスは、現行F1マシンの複雑さをこう表現する。

「これをやれば速くなる、という単純な話じゃない。F1で勝利を争うには、常に限界までプッシュしなきゃならない。だからといって、ラスベガスで僕らがそうしたという意味じゃない。遥かに複雑な問題なんだよ」

安全を求めたセットアップが、物理学の悪戯によって致命的なダメージを招く。現代F1マシンの挙動がいかに繊細で、セットアップのウィンドウがいかに狭いかを示す象徴的な事例となった。

もっともマクラーレンは、今回の問題は「ラスベガス特有のマシン作動領域とサーキット特性に起因する固有のもの」だとしており、今週末のカタールGPで再発することはないと自信を示している。