
フェルスタッペン、雨なき逆襲の裏側と「タイトルを失った」理由―ピットから3位へ。”半端ないストレス”を与えた猛追撃
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が、2025年F1第21戦サンパウロGP決勝でピットレーンスタートから3位表彰台という離れ業をやってのけた。しかも、17番手からの大逆転優勝を飾った昨年とは異なり”恵みの雨”はなく、ドライコンディションという”静かなレース”での快挙だった。
しかも、序盤の6周目にデブリによるパンクに見舞われ、予定外のピットインを強いられる後手の展開――その時までに挽回していた13番手を失った。それでも、最終的には2位のアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)にわずか0.362秒差の3位。
ピットレーンから表彰台に上がった例は、F1の歴史上、今回を含めて8回しか存在せず、2014年のハンガリーGPでのルイス・ハミルトン以来の快挙となった。
フェルスタッペン本人は「信じられない」と語り、アントネッリも「驚異的な仕事だった」と称賛。優勝したランド・ノリス(マクラーレン)ですら「今日はマックスが最速だった」と述べた。レッドブル代表ローラン・メキーズも「センセーショナル」と賛辞を惜しまなかった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レース後のガレージ前で、3位表彰台をチームメンバーと喜び合うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP決勝(インテルラゴス・サーキット)
予選Q1敗退の屈辱、そして“3度目の賭け”
フェルスタッペンの週末は苦難の連続だった。スプリントは4位。それも、グリップ不足を訴え続けており、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)のクラッシュがなければペース的には5位だった。さらに予選では、F1キャリアで初となる「純粋なペース不足によるQ1敗退」を喫し、16番手に沈んだ。
レッドブルは、予選前に行った「大胆なセットアップ変更」が失敗だったと認め、決勝では再びセットアップを大幅に見直す“3度目の賭け”に出た。メキシコGPで導入した新型フロアの使用を見送りつつ、パワーユニットを新品に交換。追加の出力と安定したグリップを狙った。
その結果、フェルスタッペンはピットレーンからスタートするも、序盤6周目には早くも13番手まで浮上。だが、デブリによるパンクで再び最後尾に転落する。それでもハードからミディアムに履き替えると、怒涛の追い上げを開始した。
「できるだけ早く抜こうと頑張った。あまりタイムを失いたくなかったんだ」と、フェルスタッペンは接触リスクを承知の上で、敢えて狙ったアグレッシブな走りをこう振り返る。
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インテルラゴス・サーキットのターン1でピエール・ガスリー(アルピーヌ)をオーバーテイクするマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP決勝
首位浮上、疑問視された3度目のストップ
そして迎えた54周目。ラップリーダーのノリスが最終ピットストップに入ると、代わって首位に立ったのは、まさかのフェルスタッペンだった。残り17周の出来事だった。
「悪くないね」
レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼがこの事実を伝えると、フェルスタッペンはこう無線で応じた。
一部には、フェルスタッペンはタイヤ交換をせず、そのままステイアウトすべきだったとの意見もある。トップに立った段階でタイヤをマネジメントをしていれば、優勝もあり得たという見方だ。だが、メキーズは否定的だ。
「優勝を狙えた可能性があったとは思わない」
マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラも同意する。
「当時のデグラデーションレベルを考えると、ステイアウトはギャンブルすぎる。新品ソフトが残っていた以上、ピットインは正しい判断だったと思う」
トラックポジションを捨て、54周目に最後のピットストップを終えたフェルスタッペンは、ジョージ・ラッセル(メルセデス)を軽々と抜き去ると、残り9周でアントネッリを猛追。そして残り5周でDRS圏内に足を踏み入れた。
当時の状況をアントネッリはこう振り返る。
「ストレスが半端じゃなかったよ。マックスが最後のピットストップをした時、ボノ(レースエンジニア)がギャップを伝えてきてさ、思わず…あ、ここで(Fワードを)言うと罰金になりそうだけど、『これはやばい』って思ったよ。だって、9秒差しかなかったんだ。それに彼は新品のソフトだったし、レースペースはすごかったからね」
とはいえ、フェルスタッペンはアントネッリを交わせるとは思っていなかった。
「ジョージを抜いたあたりでタイヤをすでに使ってしまい、キミに接近したときは、オーバーヒートしてグリップを失い始めていたんだ。ソフトはその点、ミディアムより扱いが難しいね」と振り返る。
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表彰台でシャンパンシャワーを楽しむ2位アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)と3位マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP決勝(インテルラゴス・サーキット)
勝因、そして「タイトルを失った」理由
最終的にフェルスタッペンは0.362秒差の3位でフィニッシュ。昨年の“雨の奇跡”ほどではないにせよ、キャリア屈指の走りとして称賛を集めた。
その勝因についてフェルスタッペンは、新品エンジンとセットアップ変更を含めた「あらゆる要素の組み合わせ」としつつ、「涼しいコンディション」が追い風になったと説明した。
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ドライバーズ会見でマイクを握る3位マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP決勝(インテルラゴス・サーキット)
ただ、この素晴らしい走りを以てしても、チャンピオンシップ争いの流れを変えるには至らなかった。選手権首位のノリスが優勝したことで、ポイント差は49点、優勝約2回分にまで拡大した。タイトル防衛の可能性は事実上、潰えた。
とはいえフェルスタッペンは、今回のサンパウロGPでタイトル争いの権利を失ったわけではないと強調する。
「ここ数戦じゃなく、開幕からザントフォールトまでの間に失ったんだ。単純に速さが足りない週末が多すぎた。そうなると当然、大差がつく。その後、ポイントを取り戻す週末もあったけど、十分じゃなかった。シーズンってやつは、そういうものだよ」
それでも、残り3戦と1スプリントを前に、戦う意志は失っていない。
「シーズン終了まで、できる限りのことを試して、いくつかのハイライトを作り、レースで勝つことを目指す――それこそが、僕らが今日ここにいる理由なんだ」
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決勝前、フォレストF1ガレージで談笑するセバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP(インテルラゴス・サーキット)
2025年F1第21戦サンパウロGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを達成。2位にアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、3位にピットレーンスタートのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が食い込む結果となった。
ラスベガス市街地コースを舞台とする次戦ラスベガスGPは、11月21日(金)のフリー走行1で幕を開ける。