
FIA会長選が法廷闘争へ、異例の選挙停止請求 ― 対抗馬が事実上立候補できない「茶番」に
F1を含む数々の世界選手権レースを統括する組織の最高権力者を決める国際自動車連盟(FIA)会長選挙が、異例の法廷闘争に発展しつつある。ローラ・ヴィラースが、12月12日に予定される会長選挙の中止を求め、FIAの本部が位置するフランス・パリの裁判所に法的措置を講じたのだ。
問題の核心は、現行の選挙規則と諸状況が事実上、現職のモハメド・ベン・スライエム会長以外の立候補を不可能にしているという点にある。11月10日には法廷審問が予定されており、FIAの”民主主義性”が司法の場で問われることになる。
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女性初の国際自動車連盟(FIA)会長に向けて立候補を表明したローラ・ヴィラース
立候補を阻む「規則の壁」
問題の発端は、FIA会長選の特殊な立候補要件にある。候補者は、世界6地域(アフリカ・アジア・ヨーロッパ・中東・北米・南米)それぞれから「スポーツ担当副会長」候補を指名しなければならず、その候補者は世界モータースポーツ評議会(WMSC)の適格者リストから選ぶ必要がある。
ところが南米地域のリストには、F1のかつての最高責任者バーニー・エクレストンの妻、ファビアナ・エクレストンただ一人しか掲載されていない。しかも彼女はベン・スライエム陣営に所属している。
つまり、他の候補者は南米代表の副会長候補を立てられず、事実上、誰も出馬できない状況で、現職のモハメド・ベン・スレイエムが無投票で2期目に突入する見通しとなっていた。
なお、2021年の前回選挙では40人だった適格者メンバーが今年は29人に減少しており、アフリカ地域の適格者も2名しかいない。
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バーニー・エクレストンとファビアナ・フロシ、2014年F1オーストリアGPにて
ヴィラールは10月27日付の声明で、「この法的措置は、FIAが自らの規約と民主主義の基本原則を遵守することを確実にするためのもの」と説明。「これは敵対的でも政治的でもありません。世界のモータースポーツ統括における透明性、倫理感、多様性を守るための、責任ある建設的な取り組みです」と強調した。
こうした状況を背景に、同様に立候補を目指していたティム・メイヤーも先日、FIAの現行制度は「透明性が欠如」しており、「民主主義ではなく“茶番”」であると厳しく批判。撤退を表明している。
裁判所が認めた「緊急性」
ヴィラールの弁護士ロバン・ビンサールは、「我々は一刻を争う緊急性が高い召喚とのお墨付きを得た。これは、裁判所がFIA内部の深刻な民主的欠陥、そして我々が告発している複数の定款および規則違反を重大に受け止めていることを示している」と説明する。
裁判所は審理に先立ち、両者に調停への出席を要請しており、ヴィラールはこれに応じる意向を示している。
ヴィラールは、判決が出るまで選挙を延期するよう裁判所に要請している。判決が12月12日の選挙日を越えて長引く場合、ベン・スライエムは暫定的な権限のみで会長職にとどまることになり、重要な決定や変更を行うことはできなくなるものと見られる。
Courtesy Of McLaren
ランド・ノリスに優勝トロフィーを手渡すモハメド・ベン・スレイエムFIA会長と、その様子を見つめるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年7月6日(日) F1イギリスGP決勝(シルバーストン・サーキット)
FIA会長選挙が法的に争われるのは今回が初めてではない。2013年にはデビッド・ウォードがジャン・トッドに対抗して差し止め命令を獲得し、2009年にはアリ・バタネンがマックス・モズレーの不出馬後、トッドに挑戦して調停手続きに入った。ただし、両者とも最終的には選挙で敗北している。