呼称変更は”布石”か ― アストンマーチンF1、初の「サードドライバー」としてジャック・クロフォードを抜擢

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アストンマーチンF1チームは10月28日、育成ドライバーのジャック・クロフォードを2026年シーズンの「サードドライバー」に起用すると発表した。興味深いのは、チームが「サードドライバー」という肩書きを初めて使用した点だ。

「サードドライバー」呼称変更の意味

現在、同チームで同様の役割を担うフェリペ・ドルゴヴィッチとストフェル・バンドーンについて、アストンは一貫して「テスト兼リザーブドライバー」と表記してきた。実際、同チームがこれまで「サードドライバー」という呼称を公式に使用した例はない(レーシングポイント以前は未調査)。

ハンガロリンクのパドックを歩くフェリペ・ドルゴヴィッチ(アストンマーチン)、2025年8月1日F1ハンガリーGP FP1Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ハンガロリンクのパドックを歩くフェリペ・ドルゴヴィッチ(アストンマーチン)、2025年8月1日F1ハンガリーGP FP1

それにもかかわらず、今回クロフォードには「サードドライバー」の肩書きが与えられた。一方で、チームの発表によれば、彼は「来シーズン全戦に帯同するリザーブドライバー」として活動するという。

この呼称の変更が何を意味するのかは不明瞭だ。単なる呼称変更に過ぎない可能性もある。だが、一般的な観点から言えば、「サードドライバー」は「テストドライバー」とほぼ同義として扱われることが多い。

つまり、クロフォードをあえてチームが「サードドライバー」と呼ぶのは、今後アストンとして「リザーブドライバー=サードドライバー」と再定義する方針を採ったか、あるいは別途リザーブドライバーを用意する意図があると推測される。

2026年からアストンへのパワーユニット供給を開始するホンダとの関係から、角田裕毅がレッドブルのレースシートやレーシング・ブルズへの降格を逃した場合、同チームのリザーブドライバーとして加わるのではないかとの憶測も根強い。

なお、ドルゴヴィッチは過去3シーズンにわたりアストンのリザーブドライバーとして待機してきたが、一度もグリッドに呼ばれる機会はなかった。来季に向けては本格的なレース活動を再開する予定で、すでにフォーミュラEへの参戦が決定している。これにより、今季限りでアストンを離れる見通しと見られている。

急成長を遂げるアメリカ人ドライバー

エルマノス・ロドリゲス・サーキットでアストンマーチンAMR25をドライブするジャック・クロフォード、2025年F1メキシコGP FP1Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

エルマノス・ロドリゲス・サーキットでアストンマーチンAMR25をドライブするジャック・クロフォード、2025年F1メキシコGP FP1

テキサス州出身のクロフォードは、2024年にアストンの若手ドライバー育成プログラムに加入。これまでにF1マシンで2,000km以上を走行し、直近ではメキシコシティGPのフリー走行1回目でランス・ストロールのマシンをドライブ。グランプリ週末でのデビューを果たすなど、この2年間で着実にステップアップしてきた。

今季は3シーズン目となるFIA-F2選手権でタイトル争いを展開。これと並行し、シルバーストンのAMRテクノロジー・キャンパスにあるシミュレーターで継続的に作業に取り組み、現行マシン「AMR25」のセットアップ支援、そして来季型「AMR26」の開発において技術的なフィードバックを提供してきた。

チーム代表のアンディ・カウエルは、クロフォードの貢献を高く評価する。「この2年間で彼は、ドライバー陣の重要な一員としての価値を発揮してきた。テスト走行で貴重な経験を積んだだけでなく、シミュレーター作業においても非常に印象的な働きを見せ、レース運営とマシン開発を支援してくれた」

クロフォード本人は発表の中で、「サードドライバーに任命されたことを誇りに思う。これまでに学んできたことを生かし、引き続きチームに貢献していきたい」と喜びを語った。

拡大する北米市場への戦略的一手

アメリカ人ドライバーの起用は、アストンにとって北米市場でのブランド強化にもつながる。F1はラスベガスGP、マイアミGP、オースティンでのアメリカGPと、米国で3戦を開催しており、同国での人気は急拡大中だ。今シーズン限りでF2への参戦を終了する見込みであるクロフォードに何らかの役割を与え、チーム内に留めることは、商業面でも大きな利点となる。

2026年に向けてフェルナンド・アロンソとランス・ストロールが引き続きレースシートを占める中、クロフォードが将来的にレギュラー昇格を目指す展開があるかどうかは、次世代技術規則のもとで初めて設計されるマシン「AMR26」の競争力にも大きく左右されるだろう。